82-11 また変な壁
俺達は派手に疾走して、十六時には首都の前に到着した。
だが、そこは異様な雰囲気だった。
半径二十キロメートルものサイズを誇る巨大な首都の周囲をグルリと半球状の壁が囲っていた。
壁というか、これはもう完全にドームだな。
「なんだ、これは」
解析してみたが、なんと「アンノウン」と出た。
見た目は織原のアレを思い出す。
色や雰囲気も似ているのだが、特に稀人のスキルを再現したわけではあるまい。
それに稀人のユニークスキルなんて、通常は再現なんて出来ないはずだ。
また面倒な物を出してきたもんだ。
魔法効果を無効化するような物かもしれないな。
こいつは触ったらヤバいかな。
トラップが仕込んである可能性はある。
解析無効化は、それのカムフラージュというパターンはあるかもしれない。
俺はちょっと魔法を使ってみた。
軽いファイアボールを作り、ポンっと壁に投げつけた。
ここで魔法を作る事は出来るな。
そして魔法は壁に吸収された。
あらまあ。
「なあ、もしかしてあいつら、ここに引き篭もっているの?」
「さあ、どうだろうなあ」
と言っている矢先に、さっきのファイアボールがいきなり飛んできた。
時間差で跳ね返ってきたらしい。
妙な部分に凝っているな。
「うわ、危ねえなあ」
「まあ、こんなものだろう」
ファイアボールは、グスタフがあっさりと魔法剣で中和した。
俺は地元民のベンソンに聞いてみた。
「やたらと強力な魔法で攻撃しなくてよかったな。
でもあいつら、これからどうするつもりだ?」
「こっちが諦めるまで篭城するのかもしれませんね。
それなりに備えは出来ているのでしょうから」
「諦めない他国の軍勢に国を占領されてしまったら?」
「どうなんでしょう」
「あいつらって領土を増やしたかったんだよな。
減らしてどうするんだ」
「何か我々には想像もつかないような考えがあるのかもしれませんね」
「中枢の連中は馬鹿に出来ないぞ。
昔ながらのアル・グランド系の魔法に加えて、オリジナルの魔道具などもかなり開発しておるようだし。
儂も中央を離れて久しいので、その辺りの事情は噂でしか知らぬが」
アルケートスもそう答えてきた。
元王国騎士団長がそう思うのか。
どうするかな。
おっと、そういや織原で試してみるか。
すっかり忘れていたな。
あいつは戦争向きじゃない性格なんで、脳内で完璧に排除していた。
元々そういう事も勘定にも入れていたから鍛えておいたというのに。
それに野郎はダンジョン要員だしな。
あと預かり物の未成年という事もある。
「アルス、ちょっと織原の野郎を呼んでくるから待っていてくれ。
すぐ戻る」
俺は魔道鎧と重ね掛けファストを掛け合わせて一気に駆けた。
最初は様子がわからないのもあって、この手は使わなかったのだ。
一応、街道筋の各所はゴーレム達が押さえてある。
ほんの十分ほどで国境まで舞い戻り、そこから転移魔法でケモミミ園へ戻った。
「真理、織原は?」
「あら、お帰りなさい。
もう終わったの?」
「いや、全然。
移動と通信を制限されているし、相手が厄介な障壁の中に閉じこもっているんだ」
子供を愛しながら真理が教えてくれる。
「織原君なら、騎士団の訓練に連れていかれたわよ。
ベル君も一緒みたいねー」
そうだったか。
まだ続いていたのか、アレ。
奥さんとおチビの顔が見たかったが、さすがにそんな事をしている暇は無かった。
さっそく王宮裏にある騎士団の訓練場へ跳んだ。
「うおおー、もう駄目だー。
殺してくれー」
「情けないぞ、オリハラ。
それが、かつては世界を滅ぼそうとした男の根性か!」
「知りませんよ、そんな事は。
俺は『中』で寝ていましたから!」
あー、しっかり扱かれているな。
「よお、ケインズ。
やってるな!」
「おや公爵、ゲルスへ行かれたのではなかったのですか」
「いやあ、ちょっと手こずっちゃってねー。
盛り上がっているところで悪いんだが、ちょっと織原を貸してくれ」
「応援に行きましょうか?」
少し目を輝かせながら、好戦的な事を申し入れてくる鬼の王国騎士団長。
「いや残念だけど、まだそこまで行ってないんだよねー。
奴らが何か変な壁の中に引き篭もっちゃっていてさ。
手が出せなくて困っているんだ。
とりあえず織原のスキルを試す」
「そうでしたか。
よかったなあ、オリハラ。
初陣だぞ」
ちょっと羨ましそうな感じでケインズが言った。
「うわあ、全然嬉しくないな~」
「つべこべ言わずにとっとと来い。
あれが片付かないと、ダンジョン攻略の続きができないぞ」
帰還のためのダンジョン攻略の続きが出来ないというのと、この前のフラッシュバックの後遺症も相まって、ダブルで来たダメージに顔が歪む織原にケインズが更に追い討ちをかけた。
「オリハラ、帰ったら訓練の続きをやるぞ」
横目で、既に俯せの態勢でダウンしていて刑事ドラマの死体役のようになっているベル君が頭からバケツの水をかけられているのを見ながら、俺は織原を連れてゲルス国境まで転移した。
ここからは車だ。
俺は高機動車を引っ張り出してゴーレムに運転させた。
道は綺麗なアスファルトではなく荒れた石畳なので、一般車よりも軍用車の方がマシだ。
こんな道を飛ばしに飛ばすからなあ。
他に碌な車を持っていないし。
まだ俺の乗っていたクロカン車が最新みたいなもんだ。
あれも、もうすぐ正式にカタログから消えるようだが。
長い間、この世界では唯一あれが本物の自動車だったし、この異世界に相応しい性能の車だった。
もう街道は確保したから、装甲車のライトアーマーである必要はない。
どうもあれは窓が小さくて圧迫感がある。
装甲車なのだから、窓があるだけマシというものなのだが、それは即ち装甲車としての性能の低さを意味する。
それ以外はそう困らないのだが。
あれはライトというだけあって本式の超ごつい装甲車ではないからな。
僅か九ミリの厚さしかない柔な装甲版など、重機関銃であっという間に穴だらけにされる。
小銃弾を跳ね返すための最低限の装甲でしかないからな。
それでも三十口径ライフルなんかで普通の徹甲弾あたりでも使われると結構ヤバイかもしれない。
特別なアーマーピアシング弾なんぞ使われたら、遠方からでも当たり所によっては一発K・Oかな。
生憎と、うちの車は特製なので、乗っているのが俺だけなら大型ミサイルの直撃にも平然と耐える。
爆風で亀みたいに引っくり返ったら、外に出て表返すか、アイテムボックスに収容して姿勢を直すかしないといけないが。
どっちみち車外に出にゃあならんので生身の人間だと狙撃されちまうから御陀仏だろう。
「おーい織原。
よく寝ておけよー。
朝方には着くからな」
「こんなに揺れてちゃ寝れませんよ!
もう少しスピード落としてくださいよ~」
「落とせるか!
転移魔法が使えないんだからな」
念のため、フライは使わない。
航空関係の安全は未知数だ。
特に織原を連れているしな。
地上の街道は安全が確保出来ているのだ。
織原がぶつぶつ文句を言っていたが、忘れているんじゃないか?
帰ったら、また王国騎士団で訓練の続きがあるのだからな?
寝ておかないと後が大変だぞ。
アントニオ 「やあ、久々に出番だなあ」
アルフォンス「おお、今回は半分主役みたいなもんだな」
アントニオ 「いや、そっちじゃなくて、アイフォンで見られるチャット小説のバルーン」
アルフォンス「そういや、そうだった」
真理 「あれ、私の話じゃなかったの」
アルフォンス「2本書いたから、真理はまた今度なんじゃないのかな?」
アントニオ 「俺の時代がやってきたな」
アルフォンス「あとは領地に隠居だけどな」
アントニオ 「ええっ!」
真理 「まあまあ。
お家を再興できたんだからいいんじゃないの」
アルフォンス「そうそう」
アントニオ 「ま、まあいいか」
そんな感じでおっさんリメイク2、好評発売中です。
おかげ様で、書泉タワーさんの先週の売り上げベストに1巻同様にランクインできました。
今回はランクを一つ上げて8位でした。
いつも応援ありがとうございます。
https://twitter.com/shosen_bt
http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html




