58-3 ゴーレムの個性
彼らゴーレムは、ある意味でファルスと同じくらい不思議な存在だ。
自分が彼らを生み出した時、特にイメージを持って各個体を生み出しているわけではないのにも関わらず、様々な個性を持って生まれてくる。
特にどうするとか定めてはいなかったのだが、人間に近い格好をした奴が必要だったので、改良を施してそのようにしてみた。
最新版では、服を剥かれて調べられてもゴーレムとわからないようにするため、細部まで人間と同じにしてある。
日頃は好きなボディを使えばいいのだが、男か女かすら、固有のキャラを自分達で決めて固定で使っているようだ。
男か女かの選択肢が本人にある。
人間と違って、魂がそのどちらかに強制される必要はない。
体の外観などは後で変更可、あるいは都度変更可なのであるが、基本的にそのままだ。
そういう部分は無精な俺からの影響なのだろう。
そもそも人ではないゴーレムにとって、自分達の外観、男女の違いとは格好だけを変えれば済むようなものなのだ。
服を着替えるのと、そう変わらない。
可愛い女の子だったり、生真面目な副隊長だったり、厳つい局長だったり。
特に新撰組から名前を取ったゴーレムなどは、気に入ったのか勝手に新撰組を名乗っている。
本来は、そんな組を作った覚えは無かったのだが。
そのあたりの傾向は、完全に岩くれなどから作ったような古参のゴーレムの中で顕著に見られる。
俺の魂の影響を強く受けているのだろうか。
その割に新撰組は女の子が多いのだが。
それは昨今のアニメとかの影響かもしれない。
彼らもよくアニメや電子書籍を見ている。
ミリオン単位の多勢に無勢では堪らんので現金決済は許可していないので、今までダウンロードした奴とか無料放送分とかだ。
彼らは日本のテレビを見られないのを非常に残念がっている。
かなりオタクになっている奴らもいるようだ。
「御館様、異世界……じゃなかった、地球へはまだ行けませぬか?」
などと聞いてくる馬鹿者もいる。
それはなんと近藤局長だったわ。
秋葉原とかへも行きたいらしい。
もうあそこは、かつてのようなオタクの街ではなくなっていたはずなのだが。
只のミーハーなんだろうか。
よく葵ちゃんに話を聞いているようだ。
連中から見れば、故郷は彼らが生まれたこの異世界なのであり、地球の方が異世界のはずなのだ。
彼らはロールプレーを楽しんでいるような気がする。
飽きたら、また違う「ごっこ遊び」を始めるのではないだろうか。
まあ働いてくれる分には、非番の時は遊んでいてもいいんだけれど。
たとえば浪人姿をして王宮の池で釣りをしている奴がいる。
麦わら帽子とメリヤスのシャツ姿でボート屋の親父を始めた奴もいる。
彼から頼まれたので白鳥の足漕ぎボートを作ってやった。
そういえばこの間、それに乗った王太子夫妻がボートの上でラブラブしているのを見たなあ。
元々、あの池は武が仕事をサボって息抜きをするために作ったらしい。
食料確保のための養殖池と消防水利を兼ねていたようだ。
ごつい鷹の形をした複雑な形をした池で魚が隠れる場所も多そうだから、バスフィッシングには向いているかもな。
たまにあそこで水遁の術の練習をしているゴーレムを見かけるが、呼吸しなくていいくせに、それになんか意味があるのか?
結構忍者になっている連中もいる。
『水蜘蛛』を履いて、アメンボのようにスイスイと水上スケートを楽しんでいた。
忍者には各流派が存在するようなのだが、その実態は俺にもよくわからない。
あまり仕事の役には立ちそうにないからどうでもいいし。
俺的には隠密系の魔法使いの方がいい。
テイマーを目指している奴もいるようだ。
よくダンジョンに出かけてトライしては玉砕している。
ダンジョン魔物は通常なら調教不可のはずなのだが。
それを知っているのか知らないのかよくわからないが、本人が満足ならいいのだろうか。
あと、何故か「風来坊」をやっている奴がいる。
旅の浪人というか、なんというか。
単に旅好きなんだろうか。
異世界旅ブログも始めたようで日本でも人気のブロガーなのだ。
あれこれとSNSにもマメに投稿している。
「冒険の旅」に出かけなかった俺の代わりに旅をしてくれている奴がいるようだ。
いいけど転移魔法は標準装備されているのだから、仕事の時間には戻ってこいよ~。
演歌歌手を目指している奴とかもいる。
そうなるとマネージャーをやりたがる奴とか、芸能プロの怪しげな社長さんの役とかも現れる。
結構、探偵物のロールプレーなんかも流行っている。
昔の日本で放送した番組で、有名だった作品をバイブルとしている奴とか。
古くは巨匠アーサー・コナン・ドイルの書いた探偵物なんかもあって、あれは今でもゴーレム達から愛されている。
俺も大好きで子供の頃よく読んだが、どっちかというと同じ作者の恐竜の出てくる世界の方が好きだった。
これらのジャンルは今でも絶大な人気があるのだから、まったく違うジャンルの小説で、共にその始祖として大成功を収めたドイルは、きっと天才の中の天才だったのに違いない。
彼が本当に書きたかった分野では成功出来ずに「探偵物がヒットしたのは意外だった」などと言っていたのは御愛嬌という奴だろう。
世の中は、そういうもんだ。
あとはアニメになったような有名探偵物の真似とか。
この辺はコスプレ遊びに近いのだろう。
ただ、依頼者は全くいない。
何故か知らないのだが、依頼者の役をやろうという奴は一人もいないので。
そして、やっぱりターザンだろう。
身体能力が人間と比べ物にならないくらい高くて頑丈なので、そういう少々危険な遊びをしたがる。
わざわざサイラスのジャングルまで行って、ターザンごっこをしているようだ。
ただ女の子キャラが多いので、ターザンなんだかジェーンなんだかよくわからないような奴がいっぱいいる。
斉藤ちゃん、女の子が腰蓑一丁でターザンごっこをするのは、はしたないから止めなさい。
片パイポロリのジェーンも禁止だ。
その他、プロ野球チームとかサッカーリーグとかを作っている奴等がいる。
携帯空間を使ってスタジアムを用意し(俺に御強請りして)、一般の御客さんも入れて本格的にやっていた。
ゴーレムは大勢いるのだから、どうせならアメフトとかテニスみたいな大会もやってほしいもんだ。
学校の部活か?
クリケットをやっている連中なんかもいる。
さすがにこちらは、あまり盛り上がっていない。
街の運動不足な御年寄りのために、ゴーレムがボランティアで始めたゲートボール大会の方が盛り上がっている。
地球では世界的に野球よりも、その元になったクリケットの方が流行っているはずなのだが。
駅伝を都市間レースとして開催していたり、その観衆役をやっていたり。
車やバイクでレースを開催している事もある。
サーキットはスポーツスタジアム同様に俺が作成した。
たまに暇潰しで観戦に行くのだが、果たしてやっているものかどうか。
連中は気まぐれなので、予定なんていう物はあってないようなものだ。
そんなゴーレム達は王妃様のお気に入りだ。
一応奴らのイベントカレンダーは随時ネットに公表されているため、王妃様にレジャーガイドとして提供されたタブレットにも表示される。
それでいつも観察しているようだ。
ちゃんとビデオ放送とかもされているから安心だ。
王妃様が暇な時に開催されていると、シルやハミル王女などと一緒に直接観戦しに行っているようだ。
王様と王妃様はラブラブ・タブレットタイムだ。
地球のネットにも、それらは「ゴーレムチャンネル」として放映されている。
意外と、その広告収入が馬鹿にならない。
もちろん、日本での税金は俺が払わないといけないのだが。
ポロリ水泳大会とかは人気が高いようだ。
斉藤ちゃんがポロリをやりたがって困る。
とにもかくも、ゴーレムどもは俺が考えている以上に「人生(ゴーレム生?)」を楽しんでいるようだ。
まあ楽しくやってくれているんなら、それでいいわ。




