2章 首無し騎士と悪魔の子1
愛原優真
高校2年生 年齢:17 男 一般人
筋力:10 体力:11 速力:13 知性:13 精神:17
心:85 回避:26 ダメージボーナス:0 幸 運:85
HP:11 MP:31 非現実:24 Lv:2
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[技能]
武道[空手]79 蹴り88 回避69(56+3+10)
視覚95 感覚55 捜査75
跳躍65 応急手当60 コンピューター51
成長:回避
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俺は、何かファンタジーなことが起これば良いと思っている、平凡な人間だった。
そしてそのような人間の多くが、実際に体験して理解する。
何故あのようなことを考えていたのだと後悔する。
だと言うのに、それに出会った俺は、苦難を実感しなかった。
これは、それ故の報いだというのだろうか?
否。
危機感が無かったわけじゃない。
避けえぬのなら、絶望するより楽しんだ方が良い。
ただ、足りなかった。
それだけの話だ。
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ある日のこと
生徒会室の隣
「何か人少なくない?」
そう言葉を発したのは、男にしては前髪の長い高校二年生、愛原優真。
その細めの体の割に、空手部所属で、学校内でも有数の戦闘力を持つ。
高い道徳観を持ち理性的であるが、それらを持ち合わせた上で自分の好きなように生きる人間である。
以前非日常的で非現実的な事態に遭遇したのだが、柔軟なメンタル故か平然と日常生活に回帰していた。
愛原が疑問に思った通り、いつもならもっと人が沢山いるのだが、今日は四人しかいない。
「ああ、今日は…というかしばらくの間は皆示し合わせたように休みでな」
愛原の疑問に、生徒会長、三年の東陽楓が答えた。
アホ毛が目立つ黒髪ロングで、少々強引で男勝り、あるいは古風と言うべき話方をする。
成績優秀で行動力があり、学校内ではその存在が知れ渡っている。
ちなみに体つきも割とグラマーで魅力的だ。
「え…ここにいないの全員?」
「ああ。お嬢と巫女はインフルだし王子は仕事だし、他もそれぞれな」
「マジか……ここまで人少ないのも珍しいな」
普段は十人とか集まる部屋に、四人だけだと広く感じるものだ。
「お嬢がインフルだなんて、筋肉さんはずいぶんとり乱したんじゃない?」
そう言ったのは、愛原のクラスメイトである柊瑠樹奈だ。
背が低めで小柄であり、同じ黒髪ロングでも東陽と比べると、一つしか年が違うとは思えない。
ただ女性陣からは身長の割に育ってると言われ、本人及び男性陣共通の疑問だ。
小柄な体躯には似合わず空手家で、その機敏な動きを武器にしている。
愛原とは空手部二枚看板で、同じくこの学校でもトップクラスの戦闘力を持つ者の一人だ。
「それはもう面白いくらいに慌ててな、お前達にも見せてやりたかったぞ」
東陽が愉快そうに言う。
東陽という女は"愉快"を体現したような人間だ。
「まーなんてったって"お嬢"だしな」
「"お嬢"だしね」
「"お嬢"だからな」
笑みを浮かべる愛原に、笑う柊としたり顔の東陽が続く。
「お前達、もう許してやれよ」
そう突っ込んだのは、この集まりの一見常識人枠、新堀紀秋。
柊と同じく愛原のクラスメイトである彼は、背が高く短髪で、東陽と同じく生徒会所属だ。
学校の勉強は苦手だが頭は悪くなく、むしろ賢いのだが、ギャグキャラ扱いされることの方が多い。
と言っても仲の良さの証明の様なもので、それは濃いホモネタとミリオタっぷりから由来している。
この何かと緩い青年は、いつも通りの苦笑を浮かべている。
「ほう、後輩のくせにお嬢様に憧れているのか?」
「いやいやいや、相手が違うでしょう」
突っこみを入れた新堀を会長がからかう、いつもの光景である。
「何!まさか、筋肉の方が好み…!?」
「ウホッ……って違うわ!!」
「私との関係は遊びだったのね!?」
「いつ遊んだ!?」
この二人、非常に仲が良い。
具体的には、周りが周知した上で暖かく見守るくらい。
「二人だけの空間を作るのに、部屋の人数は関係無いと言うことか」
半笑いで言う愛原だったが、直後に笑みをひくつかせることになる。
「四人から二人だけが切り離され、うら若い男女だけが取り残される訳ですねぇ」
柊が唇に手を当て、蠱惑的な表情で愛原を見つめる。
その熱っぽい視線は、柊本人の小柄さや、それ故の幼い雰囲気など忘れさせる程だ。
「ちょっと何言ってるのか分からない」
それを
実はこの空手コンビも、結構仲が良いのであった。
部活変わりの愉快な談笑を終えた後の帰り道。
愛原が享受していた日常は、そのとき終わりの兆しを見せ始めた。
ふと路地裏を見たら、死体が転がっていたのだ。
肩口からばっさりと切り捨てられた死体。
周りにはおびただしい量の血が流れており、血の池を形成している。
愛原優真 心 0/1D4 86⇒63 成功
俺は驚愕しつつもすぐに警察を呼ぶ。
死体がある旨を伝えて電話を切り、大きく深呼吸。
非常に気分が悪くなり、さっさと死体から離れようとする。
愛原優真 視覚 95⇒87 成功
そこで、立ち止まり、俺は数ヶ月前のことを思い出した。
記念館での非現実との邂逅だ。
あの時を振り返り、俺は死体を凝視する。
触ったりはしないが、目で見て分かる情報くらいは集めておこうと思ったのだ。
それが後の役に立つはずもないが、やらなくて後悔するよりはマシだろう。
結果として分かったのは、人間がやったとしたらそれは相当な相手だろう、ということだけだ。
どうやったら人にこれだけの傷を付けられるのだろう、という位には大怪我だったのだ。
非常に力持ちか、あるいは達人か、もしくは何らかの道具を使ったのか。
結局その日はやってきた警察から事情聴取を受けて終わった。
ちなみに幸いにも学校から寄り道もしていなかったので、俺のアリバイが保証され、それ以降は特に何も無さそうだった。
「……死んだ?」
あれから数日。
何事も無かった日常に、訃報が飛び込んだ。
死んだのは別のクラスの男で、死ぬ数日前から悪夢を見るとか言っていたらしい。
他殺だそうで、ホームルームで暗い顔をした先生から注意喚起される。
特別親しいわけでもないので、それ自体は別に驚かなかったのだが、問題は数日後に起きた。
「会長がさ、悪夢を見るとかでさ」
そう言ってきたのは我が友、新堀紀秋。
何でも生徒会長が、先日殺された同級生と同じ夢を見ているらしい。
首の無い騎士に追い立てられる夢。
確かに新堀としては、会長を放っておく訳にもいくまい。
「うーん、確かに珍しい夢だけど…」
そう言ったのは柊瑠樹奈。
クラスメイト故、一緒にいる時間は多い。
「まあ確かに、偶然にしてはちょっとな」
記念館での記憶が、若干俺を心配性にしている。
この心配もほとんどが杞憂に終わるのだが。
「それで、ちょっと調べて見ようと思うんだが、二人とも手伝ってくれないか?」
「おk」
「右に同じ」
俺達は快諾し、放課後三人で空手部の部室に集まって調べる。
会長は生徒会の仕事の為来ていない。
すでに新堀は先生から話しを聞いてきたらしい。
新堀紀秋 信用 70⇒93 失敗
新堀紀秋 信用 70⇒82 失敗
新堀紀秋 信用 70⇒57 成功
何でもかなりガチで頼み込んだらしい。
新堀、ガッツあるなぁ。
まあ確かに死んだ生徒の話なんて、そう簡単にはしてくれないだろう。
で、分かっているのは、以下の通り。
・被害者は自宅で首をはねられて死亡していた。
・その一週間ほど前から悪夢を見るという話をしていた。
・悪夢の内容は首無し騎士に追われるというもの。
・死亡する前日は気分が悪いと言うことで休んでいた。
結構分かってるな。
そして俺の中の心配性な部分が言っている。
これは非日常的な事象が関わっているのかも知れない、と。
そうして俺達はノートパソコンを用いて事情を調べてみる。
愛原優真 捜査 75⇒37 成功
愛原優真 オカルト 5⇒90 失敗
柊瑠樹奈 捜査 25⇒28 失敗
柊瑠樹奈 オカルト 55⇒64 失敗
新堀紀秋 捜査 45⇒92 失敗
新堀紀秋 オカルト 5⇒23 失敗
「うーん、めぼしい情報無し!」
「こっちもだ。愛原の方は?」
「何かスレ立ってる……今信憑性ありそうなのまとめてるとこ」
分かったことは、以下の通り。
・付近の市では変死事件が起こっている。
・犠牲者は現状4人。
・内一人は俺が第1発見者で、もう一人は同級生。
・全員が全員切られて死亡していおり、その怪我から並の人間ではできない殺し方である。
・TVでも大々的に報道されている。
・悪夢の話はTVでは報道されていない。
とのこと。
「あれ、悪夢の話はないの?」
「いくら共通で見ていると言っても、夢の話だからな。警察は重要視していないんだろう」
「その一方、世間話では花が咲いてるわけか」
分かりやすいなぁ。
で、こうなってくると悪夢の話は事件と関わりがありそうだ。
「信用できるソースはないけど、事件は起こってるので四件。火のないところに煙は立たない」
悪夢の噂が出回っている以上、複数人が悪夢を見ていたのだろう。
「そう、だよな」
新堀が顔をしかめる。
つまり、生徒会長も標的である可能性が否定できないのだ。
「どうする?」
聞いてみる。
これ以上何かやろうにも、正直思いつかない。
さすがに警察に直接話を聞きに行くほどの気力は無いし、行っても果たして教えてくれるかどうか。
「まあ、夜とかに出歩かないのは当然として……会長、一人暮らしだっけ?」
「ああ」
瑠樹奈の問いに、新堀が答える。
どうして知っているんですかねぇ?(ゲス顔)
「とりあえず、私たち誰かの家に泊まるとか」
「それは良いが……俺の家は泊まれないぞ?」
新堀が否定する。
「え、どうして?」
瑠樹奈は本気で分からないと言った様子だ。
いや、多分女子高校生が男の家に泊まるってどうよ?って話だと思うぞ。
「どうしてって…そりゃ、ダメだろ。俺だって男だぞ?」
ですよねー。
「あれ?まだ泊まったことなかったの?」
瑠樹奈がニヤリと笑って聞く。
「ねえよ!?むしろ何で泊まったことあると思ったんだよ!」
「あれだけ夫婦漫才しておいて、まだ寝てない…!?」
「まて瑠樹奈。別に家でしか寝ちゃいけないなんてルールは無い。つまり…」
「つまりじゃねぇえええええええええええええ!?」
新堀と会長は周りからすれば公認の仲なんだが。
本人達は否定するんだよなぁ。
もちろん純然たるお付き合いであり、不純な関係など無いことは知っている。
ギャルゲーの主人公かな?
「はぁ、はぁ。そういうお前らはどうなんだ、進展したのか」
「俺ら?」
瑠樹奈の方を向くと、あちらもこちらに目を向けていた。
目と目が合う~。
などと思っていると、瑠樹奈がクスッと艶やかに笑う。
ちょっと恥ずかしくなり、目を細めて睨み付ける。
どのくらいの時間が経ったか、現実的には短い時間だったと思うが、頬がヒクヒクするのを我慢していると時間が長く感じられる。
瑠樹奈がこらえきれずに笑い出し、この妙な空間は無くなった。
勝った!
と、アホなことを思った。
真顔にらめっこって、結構難易度高いんだよね。
「お前らも大概だからな…」
新堀に本気で呆れられた。
「まあとりあえず新堀ん家に外泊でおk?」
「オッケー」
瑠樹奈が笑いながら同意する。
「おい」
「まあ……それで無事で済む保証も、襲われる保証も無いけど。やるだけやった方が良いと思う」
俺は笑顔を引っ込め、新堀をまっすぐ見つめて言う。
新堀は渋い顔をしていたが、やがてため息をついて言った。
「分かった。とりあえず連絡してみよう」
「ん、その前に。俺んちはいつでもこれるからな、一応」
「私の方も、一日二日なら大丈夫ですよ」
そんなこんなで新堀が電話し、とりあえず新堀の家に泊まることになった。
「大人の階段昇る」
「うっせ」
次の日会長が休んだりしたら、生徒会連中に全力で拡散する心の準備はできた。
その日の夜
俺は自分の部屋を注意深く見渡し、ベットの横が陽炎のように揺らめいているのを見た。
「アケヤ、そこにいる?」
「ええ。すっかり私の場所が見えるようになったわね」
答えたのは、自称幽霊の女性、アケヤ。
記念館以来俺の家を拠点代わりにしており、夜になると帰ってくる。
昼の内は俺につきまとっていることもあれば、どこをか散歩に出かけていることもある様だ。
最初の内は全く見えなかったのだが、最近は部屋の中なら揺らめく陽炎が見えるようになった。
この陽炎もどうやら見える人にしか見えないらしく、俺も狭い家の中ならともかく、外では視界に入っていてもなかなか気づけない。
「最近の変死事件のことは知ってる?」
「ええ、テレビで分かる程度のことはね」
見えない相手と話すのも慣れたものだ。
「じゃあ、これがあの時みたいな、魔法的な物が関わっているかは分からない?」
「私も実際に見たわけではないのだし……どうかしら、ね?」
むう……分からないとは言っていない。
「友達が巻き込まれてるかも知れなくてさ…調べてみてもらえないだろうか」
「それはダメね。でも、しばらくはあなたの近くにいるわ。いつでも話せるわよ」
やはり無理か。
そもそも手助けしないって最初に言ってたしなぁ。
ただ頼んでも手伝ってはくれないけれど、自主的に助言をくれることはあるし。
そう思って俺は寝ることにした。
次の日。
朝一で新堀が会長と共にやってきた。
「同じ夢を見た」
どうやら新堀は会長が追われる夢を見たらしい。
しかし、どうやってもその夢の中に介入することができなかった、と。
会長も新堀がいるのは気付いたが、どうしてもそっちには近づけなかったとか。
こうなってくるといよいよ非日常だ。
「優真君、確かこの前」
瑠樹奈が真面目な顔で俺に聞いてくる。
「ああ、記念館で非日常には会ったけど。だからそういうことがある、とは言えるけど、それ以上はなんとも」
記念館でのことは、軽くだが概要を話してある。
とはいえアケヤを紹介したり、リストバンドを貸したりはしていないので、信じてはいない…と思う、多分。
俺らはそれなりの付き合いなので、普通に受け入れられている可能性もあった。
「それに聞いてみたら、一年に悪夢を見た後欠席している生徒がいるらしい」
「それは…」
ダメそうな雰囲気ですね…。
「となると打てる手としては、一、警察に行く。二、噂や資料をあさる。三、欠席中の生徒について調べる。ってとこ?」
瑠樹奈がまとめてくれる。
資料あさりでは図書館を利用することになるだろう、定番……とまでは言わないが。
大体そんなところだろう。
「警察は……おそらく行っても相手にされないだろうな。理由が同じ夢を見るから、だけじゃな」
落ち着いた様子で新堀が補完する。
「二手に分かれるか?メンバー的に俺が図書館、新堀が生徒は確定だけど」
新堀は少し考えて、会長の方へ向き直る。
「会長、頼めますか?」
「ああ、任せろ。というか、私は頼む立場なんだが」
「頼まれなくても手伝いますよ、会長!」
瑠樹奈がニヤニヤしながら言う。
俺も笑って頷いておく。
気心の知れた友人の助けになれるのなら、そりゃあ手伝いもする。
「じゃあ、愛原と会長が図書館。俺と柊が聞き込みだな」
「ヤー!」
俺は了解し、会長と共に図書館に向かった。
「ちなみに会長、どう思ってるんです?」
図書館に向かう道中。
ふと気になった俺は、会長に聞いてみることにした。
「どう、とは?」
「悪夢についてですよ。自分の命の危険…どの程度感じてますか」
「ふむ、そうだな」
会長は顎に手を当てて考える仕草をする。
「私としては……そうだな、最初の内は、それこそ冗談ぐらいのつもりだった」
そこで会長は言葉を句切る。
「今は?」
「本当に死にかねない…と、思うようにはなったよ。主に君と紀秋のおかげさ」
「新堀はともかく、俺?」
「ああ、気付いていないかな?優真君。君がそんなに本気の目をしている所、私は見たことがないよ」
気付いてなかった。
いや、こちらも大分危機感を抱いてはいるが、外からはそういう風に見えていたのか。
そんなこんなで図書館に到着し、現在の事件について、そして過去に類似の事件が無いか調べてみる。
授業終わって速図書館とか、信じられん行動だな。
愛原優真 捜査 75⇒28 成功
東陽楓 捜査 65⇒73 失敗
新聞などをあさり、分かったことは、この市では数年前から似たような事件が起こっているようだ。
犯人の分からない死体が、いくつか。
行方不明者は、他の市より多少多いくらいか。
神隠しだなんだと言われているらしい。
ん、指定暴力団「城柳組」が関わっているという噂もある、と。
うーむ。
うすうすそうじゃ無いかとは思っていたけれど……どれが正しい情報なのか分からん。
「出てきたキーワードは、城柳組くらいか」
「城柳組か…確か私たちが子どもの頃に急成長した暴力団だったか」
「そうなんですか?」
「うろ覚えだが、確かな」
愛原優真 捜査 75⇒93 失敗
東陽楓 捜査 65⇒17 成功
「ほら、この記事見てみろ」
会長に渡されて見てみると、確かに謎の急成長とか言われている。
「うーん、確かに。ちなみに事件が増えだした時期と重なってたりは」
「その時期から増えてはいるようだが…以前から事件自体はあったらしい」
ふーむ。
城柳組が急成長したのが約十年前。
事件自体が起こり始めたのは……それより更に数年前か?
「果たして関係あるのか」
「さて。ただ、十分に可能性はあるな」
俺達はそのまま資料あさりを続けたが、それ以上の情報は得られなかった。
作者は相変わらず忙しいですが、しばらくはそれが続きます。
しかし後の話を書いていると、毎回少しずつシステムが変わって行っていて、何とも場当たり的です。キャラ作成方法すら変わったせいで、他の人と比べて愛原君の技能が強すぎて笑える。まぁこの作品自体がテストの意味合いを持っているので、後になってからのシステム変更もあります。ご注意を。