表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃色リフレイン  作者: 本宮愁
another: side BLACK -1-
24/24

another: B.1-1

 このままじゃいられないことは、わかっていた。


 灰季がほしい。冬也がほしい。私の心は欲張りだ。


 ふたりが思うほど子供じゃない。

 すなおに諦められるほど大人じゃない。


 私の心は、欲張りだ。




  *  *  *




 私の敵はいつだって女の子。


 いわれのない言いがかりをつけられて、気づいたら的にされている。ちょっと彼女もちの子と話しただけで、次の日には泥棒猫あつかいだもん、やってられない。


 灰季や冬也は、ゲームセンターの治安を気にするけど、私にとってあそこは味方。


 私の存在を歓迎してくれる。受け入れてくれる。もしも私を否定する人があらわれれば、きっと私の剣となり盾となる。


 あそこにいるのは、そういう人たちだ。

 そういう人たちに、した。


 こんなこと考えてるなんて知られたら、灰季に嫌われるかな。冬也は賢いから、気づいてそうな気がする。


 それでも冬也は私を愛してくれる。私を裏切らない。私のことだけを考えて、私のためだけに生きてくれる。兄をゆがめてしまったのは、……私だ。


 九条夏生の罪は重い。


 それを自覚しながら、灰季の手を離せない私は、とてもズルい。



「夏生ちゃん?」



 ズルい。

 目の前にいる、このひとと、おなじように。



「――ううん、聞いてるよ。ママ」



 水滴の浮いたグラスを見つめて、カラリ、とストローを回す。冷房の効きすぎた店内は寒いくらいで、アイスティーを頼んだことを後悔した。



「ねぇ、夏生ちゃん。どうかしら?」



 さらり、と艶やかな黒髪が流れる。グラスに映り込んだ、漆のような瞳がゆがむ。私と彼女は、よく似ている。


 妙齢の女性、と呼ばれる歳を越えてさえも、彼女は女を捨てていない。艶っぽい仕草は様になるし、黒珠の瞳には情欲の熱がくすぶっている。隠しきれない魔性の影が、その瞳に映りこむ。


 あと何年かしたら、私は彼女そっくりの現し身になるだろうか。なりたいのかどうかはわからない。憧れはしないけど、でも、すこしずつ魔性に近づいていく感覚は、どうしようもなくあった。


 考えれば考えるほどに、心は闇にとらわれて、純粋なフリをつづけながら、頭のなかは淀んでいく。


 九条夏生は、とてもズルい。


 話なんて聞いてなかったけど、聞くまでもなくわかってた。このひとが私に話す用事なんて、ひとつしかない。



「……ママ。聞いてもいい?」



 どうせ、わかってた。

 いつか、こういう日がくることも。



「どうして、冬也が嫌いなの?」



 ――こういう日が、私にしかこないことも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ