6.
この辺りでは一番大きい警察署にそれらを持っていき、僕らは事情を説明した。爆発自体の調査部門は、既に新宿で立ち上がっていたので、そこと連携することになった。あの所長に「立方体を拾った」と一報を入れた彼の友人は、警察にそれを届けており、それは署内の調査部門に届けられたという。現場では、形や色は同じだが、文字も数字も何もない立方体が複数見つかっており、それらが文字の入っているものと同じなのか違うのかを調べる必要が出てきた。
それと同時に、似たようなものが散らばっている可能性があることから、一個あたり懸賞金一万円を掛けて、見つけてくれた一般市民に警察に持ってくるよう、キャンペーンを行うことになった。
昼食を署内で食べた僕らが、警察での用を終え、事務所に戻って来れたのは午後四時前だった。持っていった立方体のうち、一つは警察に預け、一つは分析のために持ち帰った。
「わんわん!」
「にゃおー」
三匹のペットたちが、僕たちを出迎えてくれる。他の所員四人のうち、二人は出払っていて、行き先や予定を書いているホワイトボードによると、うち一人は現場から直帰となっていた。恵里菜はちょうどお手洗いで席を外していた。
「どうも。どうだった?」
かくかくしかじかと、僕は事情を説明した。その間に、ペットフードの入った袋を持っていたのがバレたのか、可愛らしい三匹に囲まれてしまった瀬戸田は、彼らにおやつを与え始めた。これも業務の一環だ。
「なるほどね。警察も素早く動いてくれて助かるよ。それで、今後俺たちとしては、どんなことをするべきかな」
所長は自主性を重んじる人だった。曰く、僕にも一人前の所員になってほしいから、と。最初は指示を待つのではなく、自ら考えて動くよう求めるその言い方を怖いとも思ったが、返した返事が間違っていても怒ったりはせず、ヒントを出して最善の答えを僕自身が出せるよう導いてくれる。そのような大人には、今まであまり会ったことがなかったので、僕は川島所長を信用していた。それと同時に、そのような教育方針の下で育てられている恵里菜を、少し羨ましいとも思っていた。
「分析用に一つ持ち帰っていますので、それを私たちの視点で解析する必要があると思います。文字が入っていない分も届けてくれるとのことですので、そちらも」
「そう、そうだね。まずはこの物体が、何からできているかを明らかにしなければいけないね。現場の建築物に使われているものと同様の物質なのか、それとも別の物質なのか。その結果によって、これからの進め方も変わってくるからね……その辺は瀬戸田くんが得意だから、彼に任せるといいよ」
「分かりました。えっと、今日のうちにやりましょうか……」
そう言いながら振り返る、と。
「わん! わんわん!」
「にゃー! にゃーっ!!」
「かいとお兄ちゃん、えりなにもおーやーつー!」
彼はまだ、彼らに食べ物をせがまれていた。しかもそこに、いつの間にか戻ってきた恵里菜も加わり、彼女も人間用のおやつをねだっている。
「こらこら、くすぐったいって! 恵里菜、一緒になるんじゃないの!」
僕と所長は顔を見合わせる。もう一人の所員の方も見たが、腕で×印を作った。容易には通常業務には戻れないでしょう、という合図だ。
「……今日はいっか。また明日、仕切り直せばいいよ」
「分かりました」
僕は自分の席に戻り、長時間スリープモードにしていたパソコンの画面を付け、メールを適当に処理するのであった。




