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The CUBE -千春と千秋 そのⅡ-  作者: 関戸守
第一章

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2.

「あ、千春お兄ちゃん」

「なあに?」

「明日はハンバーグが食べたい!」

「りょーかい」

 彼女のリクエストには極力応えるようにしている。帰りに挽肉を買うことを頭の中にメモしておく。父親の方を見ると、家ではなかなか手作りはできなくて、と頭を掻く。いいんですよ、と返してから、自分の机に向かい、業務に関するメールをチェックしていると、突然、鈍い、しかし地響きのような強烈な音が聞こえてきた。

『ゴゴゴゴゴゴ……』

 座っていた全員が、パソコンや書類から顔を上げる。足元にまとわりついていた「みい」が、急ブレーキを掛けたように停止し、その長い毛を逆立てる。

「……ちょっと見てきます」

「よろしく」

 この中では、僕が一番最近入った社員である。何かあった時の「偵察」は、自然と僕の役回りとなっていた。川島さんに一声掛け、オフィスを出る。

 エレベーターが来ないので、階段を駆け下りる。眩しい夏の太陽の下、目を細めながら日向に出て、何か変わった様子はないかと辺りを見回していると、突如、空から何か降ってくるのに気付いた。

 それは、雨ではなかった。僕の方に向けて、ピンポイントで一つの物体が落ちてくる。周りの人は気付いていない。加速するその物体の直撃を受けないよう、僕はオフィスビルの玄関に避難した直後、その物体は着地した。

――立方体?

 再び日差しの下へ出て行き、その物体をまずは触らずに観察する。五センチぐらい四方の、白い、角が丸い立方体。周りの人は、しゃがみ込んだ僕を訝しげに見ながら通り過ぎていく。これは罠かもしれない、何かの毒が付着している可能性もある。そう考えて、歩道の真ん中に落ちていたそれを、いきなり素手で触るのではなく、とりあえず足で蹴って、日陰になっている石張りの玄関まで転がすと、その物体に、黒色で、面いっぱいに、一つの平仮名が書かれているのに気付いた。

『ご』

 「ご」? しかも、他の見えている四面には、何も書かれておらず、白いままで。他に何か書かれていないかと、もう一度蹴って、下になっていた面を表に起こすと、今度は数字が現れた。

『6』

 ご、なのに、その反対側は、ろく。実に不可解な物体である。だが、それと同時に、その不可思議な物体の出現は、僕のいる仕事場に、新たな仕事をもたらす予感がするもので。

 僕は上司から支給された、ウェアラブル端末を付けた左手首を口元まで持ち上げ、音声でそれを操作した。

「瀬戸田に電話して」

 発信中の画面も一瞬、彼はすぐに応答した。全く、電話に出るのは早い男である。

『もしもし? 何か分かった?』

「不審な物体が落ちている。爆発するような感じはしないんだが、回収して調べる価値はあると思う」

『あいあいさー。どこに行けばいい?』

「ビルの真下にいる」

 僕はまたしゃがみ込んで、その物体をまじまじと観察する。しかし、それ以上の情報は、目視では確認できず。

「千春ー」

「こっちだ」

 エレベーターで降りてきた彼を呼び寄せ、その物体を指さす。彼の手には、青い蓋付きのバケツと、ひばさみがあった。もちろん、手袋も嵌めてある。

「何これ」

「空から降ってきた」

「……これが?」

 こんな事案ばかり見てきているであろう彼でさえ、その顔を微妙なものに変える。

「そう、これが」

「えー……まあ、うちの守備範囲かもしれないけどさあ」

 ひばさみでその物体を掴み、床に置いたバケツの蓋を開けて、その中に放り込むと、ころころと音がする。固いものには違いないようだ。

「所長に見てもらおうか」

「まあ、そうだな」

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