11.
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新宿に行く時間が迫っていたので、粉々になったそれは、二人に箒で集めてもらうことになった。僕たちは白衣の洗濯も任せ、警察に状況を説明するために部屋の写真を撮り、必要なものを持ってJR八王子駅に向かった。京王線に乗った方が安くつくが、時間がなかったので、十分でも早く新宿に着く中央線に乗った。駅に着く頃には、降っていた雨も収まってきた。
しかし昼食は、京王線の新宿駅にある立ち食いカレー店で済ませた。偶然にも、僕も瀬戸田もそこのカレーのファンだったからである。
それから、指定された警察署に行き、専門の捜査チームに用があると言うと、すぐに担当者が出てきた。若い女性だったが、頭が切れそうな印象を持った。
「川島社会科学研究所の方ですか」
「はい。研究所の野島です」
「瀬戸田です。よろしくお願いします」
「こちらこそ。こちら、高田馬場ビル爆発事故の専門捜査チームの町田です。では、雨も止みましたし、早速現場へとご案内したいのですが、よろしいでしょうか」
「お願いします」
車に乗せてもらい、そこから数分の現場に向かった。一つ前の仕事でも、警察にはよくお世話になったが、よく考えると警察車両に乗るのは初めてである。
現場は高田馬場駅から、歩いて十五分ほどのところのようだった。建ち並ぶビルの中、一つだけ灰色の工事現場用のシートで覆われているそこは、若者で賑わう街の雰囲気の中で、どこか浮いているような感じがした。その周辺には、事が事だからか、大きなカメラを構える報道陣が多くいる。実況をしているアナウンサーもいた。
「報道関係者が集まっていますが、話しかけられても何も答えないでください。まだ不明なことが多い案件です、不用意に推定されることを話して、後で揉めてもいけませんので」
町田さんが電話を掛けると、シートの向こうから、ヘルメットを被り、工業用の特殊らしいマスクをした中年男性が出てきた。カメラが集まってきたが、警備をしていた警察官らが制止し、町田さんの指示通り、彼らが「どういうことなんだ」「一体何があったんですか」と訊いてくるのには一切答えなかった。
中年男性は田上と名乗った。このビルの所有者で、ビルが老朽化したので解体を依頼した人物だという。僕たちは仮設事務所に通された。
解体の現場責任者はいないのか、と瀬戸田が尋ねたが、爆発によってケガをして入院中だと言われた。田上さんは時折解体現場を見ていたが、爆発が起こったときは、たまたま現場にはいなかった、と説明を受けた。町田さん曰く、自宅近くの理容室にいたというアリバイがあるという。
「上から落下物がある危険がありますので、ヘルメットの着用をお願いします。粉っぽいのでマスクもしてください」
白いヘルメットを被り、あごひもの長さを調節して外れないように。マスクは八王子の事務所でしていたものをポケットに入れていたので、それも装着してシートの向こう側へ。
「うわ、これは酷い」
そこには、真っ白な、あのブロックと同じ色の、様々な形の破片が山積みになっていた。地面には細かいそれが一面に敷き詰められたようになっている。他に目立ったものは何もない。
瀬戸田はその様子を一目見て、顔をあからさまに歪めた。だが、僕は建物の解体現場が、本来どうあるべきなのかをよく知らない。
「えと、無知ですまないのですが、通常はこんな壊れ方をしないですよね」
「普通ではありえない。ていうか、建物の解体現場として不自然すぎる。鉄骨が見当たらないし、コンクリート片はこんな色をしていないし」
「よくご存じですね」
田上さんが瀬戸田に感心したが、彼はさぞ「当たり前だ」という感じで返した。
「叔父が解体の仕事をしていたんです。現場にこそ入ったことはありませんが、写真は何枚も、映像でもいくつも見ていますので……えーと、外壁は茶色だったとお伺いしていますが」
「ええ、そうなんですが……」
ここはある程度、その方面の知識があるらしい瀬戸田に進行を任せることにした。門外漢が下手に口を挟まない方がいい場面があることも、僕は人生経験上知っている。




