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ニゲラレナイ

電車に乗って2駅。そこからダラダラと歩いて高校につく。

2駅くらい歩いたらと思うかもしれないが、都会の2駅と田舎の2駅は倍ぐらい距離が違う。


昇降口では色んな生徒が思い思いの話をしている。

履きなれたやっすいティ○バーランドを脱ぎ、下駄箱に入れ…突っかかってカカトだけ出てしまう。まぁ、落ちはしないだろ。

初日に交流の間がなかったせいで声をかけてくる子はいな…


「篠原ー!!おはよー!!」


声がデカイんじゃ。


「おう。」


昨日付かず離れずを決意したからちょっと素っ気なく。あ、いや、素っ気なさすぎか?


「お・は・よ・う!」


プンスカという擬音が似合う様子で舞は覗き込んでくる。


「オハヨウゴザイマス…」


「声が小さい!けど今日は許してやろう! 」


フフンとふんぞり返る舞。金城先生かお前は。

いや、意外と言わなそうだなあの人。


「何で来てるの? 」


「電車からの歩きだなー」


「へぇ〜都会っ子じゃん!」


「この辺の駅全部ド田舎じゃねぇか…え、歩きなの?」


「そうだよ?」


ん…?

俺は前いた家に越してきたわけではない。近辺なので最寄り駅は変わらないが。

記憶が正しければ、舞も同じあたりだったはずだ。


「中学校の時にね、近くだけど引越ししたんだー。

引越しってアルバムとか出てきて進まなくてね! 」


思い出して笑いながら舞は語る。特に聞いてはいないのだが…

本当によく喋る。


「今はこの学校の近くに住んでるの!

近いと逆に気が緩んで遅刻しそうになったりするんだよ?知ってる? 」


「あぁ、あるらしいなぁ」


教室に着く。


「皆おはよー!」


小心者そうな数名が舞とともに現れた俺にギョッとする。

各々に適当に話をしながら席に着く舞。

片や俺は全く声をかけられなかった。


「友達いないの?」


「昨日アレで作る暇があったか?」


「あー…」


早々に職員室に向かってしまったのは良くなかったが、かと言って遅くなって怒らせる方が面倒だと思ったのだ。


ちなみにピアスはファーストピアスくらいのサイズのものを両耳1つに変えてきた。

髪は光に当たると赤っぽいがまだ茶色くは無いだろうとの判断だ。


「篠原、ピアス痛くなかったの?」


「ピアッサーだったから痛くないぞ。衝撃はあるし後でジンジンしたりはするけど。」


「えぇーこわー…

憧れはあるんだけど、体に一生の傷をつけるわけでしょー?」


一生の傷て。それはそうなんだけども。


「私は病院で開けようかなぁ」


「怖いなら開けなくてもいいんじゃないか」


「それもそっかぁ」


他愛のない話である。

そうこうしていると昨日の激おこプンプン鬼…ではなく金城先生が連絡事項を伝えに来る。


待てよ、付かず離れずと言いながら普通にガンガン喋ってなかったか? あれ?

違うな…向こうから鬼のように話しかけてくるのだ。

これは困ったぞ…


考えていると金城先生は去り、一限の現代文まで10分ほど時間が空く。

教科書、ノート、筆箱を出して待機する。


「篠原くんは優等生ですねぇ?」


ニヤニヤしながら舞が茶化してくる。


「普通じゃないか?」


「いやほら、ヤンキーってペラペラのカバンに鉄板仕込んで教材なんか持ってこないみたいなさ…」


いつの時代の話やねん。

ビー○ップハイ○クールか。


「今の時代にそんなのはいないし、俺はヤンキーじゃないの。」


「えー、有望だと思ったのになー」


口を尖らせる舞。


「お前は何を求めてるんだよ…」


「バイオレンス?」


こわ。えぇ…

現代文の先生がやって来る。

昨日職員室入口でコーヒーを入れていた先生だ。

おどおどした様子で授業を始める。


なんと退屈な授業なんだろうか.....

現代文は前の学校でも退屈だった。

読む文が馴染み深すぎる故にマンネリしがちで、感情や受け取り方のような抽象的な回答が多くて先生からの指名→回答みたいな流れがあまりない。

故に、暇に耐えられぬ男子高校生は思考が宇宙の彼方へ飛んでいってしまう。


さて。

退屈だと思春期の男子高校生は何が起きるであろうか。

そう、男子は生理現象で色々あって立てばへっぴり腰、座れば前かがみになるのである。

これはとても危険が危ない。

近くの席の女子がその現象を知っていて、デリカシーが無いなんて事になれば冷やかされること間違いなしである。

俺の席で言うなら舞は懸念材料だ。

俺は机に突っ伏して寝たフリを選んだ。

何とかバレずに授業を終えて、名指しされてしまったので号令をする。


「起立!気をつけ、礼!」


なんか舞の肩が震え.....あ。

バレてないと思っていた俺の体に起きた生理現象がひけらかされている。

なんということでしょうか。

触れてこないことを祈る。というか他の奴気付いてないだろうな。


束の間の休み時間である。


「篠原」


前の男子に話しかけられる。


「なんだ?」


「あ、俺宮崎ね。よろしく。

さっき号令した時にさ…あの…アレだった?」


バァンと隣で音がした。

肩を震わした舞が机で突っ伏している。


「なぜ気付いた…俺は後ろなのに…」


「いや、立ったときに後ろから机が振動してるような音?がしてモロに振り向くのも悪いなと思ってバレないように振り向いたんだよ。そしたら丁度…」


「分かった。それ以上はやめよう。ジュース奢ってやるから。昼休みでいいか?」


「あ、そう?悪いね〜 」


舞は耐えきれず足をバタバタしている。なんならちょっとクーッ! みたいな声がちょいちょい漏れている。

半分お前のせいだからな!!!

ともあれ痛い出費だ。来る時にお昼用のパンを買ったお釣りしか持っていない。まぁ足りるだろう。


次は数学。

これは意外と教え上手でシゴデキな感じの女性の教師がやっていて、なかなか分かりやすくてのめり込んでしまった。

数学って面白いんだなぁ。


次の授業は2限連続の体育。

バレーボールなんだそうだ。

嫌だな…腕痛いんだよな…

女子は女子更衣室へ。男子は教室で着替える。


「なぁ篠原。」


宮崎が話しかけてくる。


「なんだ?」


「神崎と仲良いのか?」


「いや、初日に話しかけられてそこからグイグイ来られるというか…なんだろうな」


「なんじゃそりゃ」


宮崎が軽く笑う。

いや俺はね? 付かず離れずにしたいのよ?

でも話しかけられちゃったら…ねぇ?


「まぁ、初日から話してくれたしな。それなりには。」


「そっか、俺とも仲良くしてくれな? 」


それを地で言えるのは凄いなと思う。


体育はやはりというか激おこプンプン鬼…ではなく金城先生だった。

男子は半々の9人でローテーションでコートに入る。

女子は7人ずつの3チームで分かれるそうだ。


その前にまずは基礎。

サーブを打ってみろとの事である。


カリキュラムがどうなっていたのかは分からないが、実は前の学校でバレーボールは経験がある。

他の練習は全くしなかったが、1個だけ厨ニ心をくすぐってどうしても覚えたかったのだ。

それが…


「スパイクサーブか、やるなぁ」


そう、スパイクサーブである。

バレー部にどうしてもと頼み込んで、バレーボールをやっている期間中に覚えた。


「篠原すげぇな!上手いんだな!」


宮崎が目をキラキラさせている。ドヤァ。

そりゃ連続7日分くらい体育でバレーボールやったのを全てサーブに費やせば打てるのである。

身長も少し関係ありそうだが、俺は言うても172cm。実際のバレー部ほど大きくはない。

また、ジャンプ力もそこまでじゃないので角度をつけて落ちるというよりは、鋭めの弧を描いて落ちる感じである。


だが、【全てを】 スパイクサーブに費やしたのだ。


「篠原ァ! ちゃんとボールの下に行かんかァ!! 」


レシーブはできない。

宮崎が心無しか悲しい目をしている気がした。

あと舞がネットの向こうでコケた動作をしていた気がする。見なかったことにしよう。

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