第五章 2話 父、天新への思い
エリカは、珍しく病室から外へ出ていた。
車椅子の車輪を懸命に回していると……色々な人から声をかけられる
「あれっ!エリカちゃん……珍しいね、病室から出て来るなんて♪」
「あっ、こんにちは!……ちょっと、用事があって」
「あらっ!エリカちゃん……今日は、顔色良さそうね♪」
「あっ……ハイっ、おかげさまで……」
結構、疲れる……エレベーターまでが……まだ遠い。
(どこにいくんだ?)
セレグが気になって、話しかけてきた
(あっ、セレグ!……バルサの野郎に、ちょっと確認したい事があるの……)
(……天新さんの事か?……)
(ええっ……セレグ、お父さんを知ってるの?)
(……実は……エリカの事は、天新さんから頼まれた)
(ええっ!!お父さんから!!)
エリカは、自販機スペースで車椅子を止めて、ジュースを飲みながら、セレグの話を聞いた……
(そうだったの……お父さんが……)
(お母さんは……異世界へ飛ばされたんだ……)
エリカのうつむいた膝上に、涙が滴り落ちた……
(だから……残念だが、エリカのご両親の精神体は……もう、こちら側には……)
その時、若い男の声がした……
「おっ!エリカじゃん……なんか、お前が外に出てるのは珍しいな!」
近くの病室の隆之だった……エリカより年下のくせに、生意気なヤツだ……
「引きこもりのくせに……頑張ってるジャン!」
「うるさい!シッシッ!」
エリカはあっちいけ!……と、手を振った
「どこいくんだ?俺が、車椅子を押してやるよ!」
おっ……意外にいいヤツじゃん♪
「えっ……いいの♪」
エリカは精一杯の、愛想笑いをした
「しっ、しゃ〜ねぇ、からさ……」
タカユキは、少し顔を赤らめて……目をそらした
それから、エリカは〝しもべ〝を手に入れて……目的地を目指すことにした……
「どこまで行くんだ?」
「うんっ?外科病棟……」
「………………」
外科病棟は、遠いのだった。
タカユキは、ジュースを報酬として請求した……
――そして、外科病棟……ここまでくれば、あまり顔見知りもいない……
歩いてきた女性・看護師に、声をかけた
「あのっ、すいません……山地先生の研究室へ行きたいんですけど……」
振り向いた看護師は、〝山地先生〝に反応した
「えっ!山地先生の研究室ですか♪」
満面の笑み!!
「じゃあ、わたしが案内します♪」
なんか……鼻歌が出ている……
バルサって……結構、モテてる?
(まあ……いっか……)
エリカとタカユキは、看護師の後に続いた。
そして、バルサの研究室……女性看護師は、まだそこにいた……
おそらく、ひと目バルサが見たいのだろう……
エリカはドアを、ノックした
「はい!」と、言ってドアが開いた
中からは、バルサの助手のような、女性の研究員が出てきた……どうやら、バルサは留守のようだった
「では……わたしは、これで……」
なんか……いかにも、ガッカリという顔で、案内の女性看護師は去っていった。
「じゃあ……またな!」
とタカユキも姿を消した
エリカはポツリと、バルサの研究室に残ることになった……
――窓から外を見ると、今日も快晴だった……




