第三章 9話 厄災の増大
整列する、大量の兵士達。
異様な静寂が、異様な巨大空間を包み込んでいた。
「さぁ……裁きの時間だ……」ザリエルは、残忍そうな微笑みを浮かべた
「裁きの時間だ……は、いいんですけど……」
「あなたが並べてるお友達は、神代機兵ですよね?」
「天界の非常時の為に、宝物区画に保管されている……」
「個人が扱っていい存在では、ないはずですけど?」
サマエルは、少しムッとした顔をしている
「倉庫の中で退屈そうにしていたから、俺が外に連れ出してやった」
ザリエルは、悪びれもせず微笑んでいる
「もう……何を言ってるんだか?」
「パルミア……なんか怖そうな展開になってる」
「どうしょう?」と、安祐美は暗い顔をしていた
『アユミ、慌てないで……こんな時のために、色々作戦会議をしてたでしょ?』
『まずは、準備が必要ね』
パルミアが、光り輝き出した……そして、光の球体に変化すると、勢いよく安祐美の体の中へ入り込んだ
(まずは、防御と武器錬成!)
「えっ……またこんな展開なんだ?!」
と、ため息をついた
(文句、言わない!来るものは拒まずよ!)
安祐美の体が、淡い緑色の光に包まれてゆく。
光は花弁のように舞いながら、彼女の全身へ装甲を形成していった。
肩部には花を思わせる白銀装甲。
腕には蔦状の紋様。
背中からは、淡く発光する粒子が広がってゆく。
「なっ……何これぇぇぇっ!?」
《ガーディアン・ブルーム――起動》
パルミアの声と同時に。
安祐美の全身装甲が、一気に輝きを放った。
(準備、完了!)
「そろそろ、初めてもいいか?」
ザリエルは、少し退屈気味だった
「本当、滅茶苦茶な人……」
サマエルは、呆れたようにため息をついた。
その瞬間――
ギギギギ……
整列していた神代機兵達が、一斉に動き出す。
鈍く重たい駆動音が、巨大空間へ響き渡った。
「うわっ……動いた!?」
安祐美が思わず後退する。
神代機兵達は、人形のように無機質だった。
顔には表情が無い。
目の奥だけが、淡く赤く発光している。
そして――
ズン……
ズン……
無言のまま、一歩ずつ距離を詰めてきた。
その異様な威圧感に、空気が重くなる。
(アユミ、右から来る!)
「えっ!?」
瞬間――
一体の神代機兵が、凄まじい速度で踏み込んだ。
「速っ!?」
巨大な腕が、安祐美へ振り下ろされる。
だが――
ガギィィンッ!!
緑色の光盾が展開。
《ガーディアン・ブルーム》の花弁型シールドが、攻撃を受け止めた。
「うわわわわっ!? 重っ!!」
安祐美の足元が、大きく地面を削る。
(防御成功! 次は反撃!)
「簡単に言うけどぉっ!!」
安祐美の右腕へ、蔦状の光が集束してゆく。
すると――
一本の巨大な樹木槍が形成された。
「ええぇぇいっ!!」
ドゴォォンッ!!
槍が神代機兵へ直撃。
巨大な機体が吹き飛び、地面へ激突した。
「やっ……やった!?」
しかし――
ギギギ……
倒れた神代機兵が、ゆっくりと再起動する。
「えぇぇぇっ!?アンデットなの!?」
「機兵です」
サマエルが冷静にツッコむ。
「いや、今そこ重要!?」
その時だった。
ザリエルが、面白そうに目を細める。
「ほぅ……」
「その精霊装甲……思ったより完成度が高いな」
そして――
パチン。
ザリエルが、軽く指を鳴らした。
直後。
後方に並んでいた神代機兵達が、一斉に武器を展開する。
巨大な槍。
光刃。
砲撃口。
空間の圧力が、一気に変わった。
「ちょっ……待って……」
「なんか数が増えてない!?」
安祐美の顔が引きつる。
その時――
空間の奥で。
微かに、“黒い粒子”が舞った。




