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第二章 9話 最悪の増援


地下――第二霊安室の工事区画。


粉塵が舞う空間の中で、戦いは続いていた。


「はっ!」


アユミの一撃で、最後の黒服が崩れ落ちる。


「はぁ……はぁ……」


肩で息をする。


だが――


「まだよ」


エリカが短く言う。


その視線は、奥を見ていた。


『……来る』


セレグの声が低く響く。


次の瞬間。


足音が、ゆっくりと近づいてきた。


コツ……コツ……と、規則的な音。


やがて――


その姿が、闇の奥から現れる。


「……やれやれ」


軽く肩をすくめる男。


御堂だった。


「少し手間取っているようだね」


その後ろに、二つの影。


人の形。


だが――明らかに“人ではない”。


「……あれ、なに?」


アユミが小さく呟く。


エリカの表情が、わずかに変わる。


「……魔族」


短い言葉。


だが、その重みは大きかった。


「しかも、装備付きね……最悪」


二人の魔族は、無言のまま前に出る。


その身体を覆う装備が、わずかに光を反射した。


『……結界が効いてない』


セレグが、わずかに声を低くする。


『外部干渉を遮断する装備だ』


『この空間の制御が乱されている』


「つまり?」


「こっちだけ不利ってことよ」


エリカが吐き捨てる。


「上等じゃない」


その言葉とは裏腹に――


状況は明らかに悪かった。


魔族が、動く。


速い。


「っ!」


アユミが弾かれる。


「ぐっ……!」


衝撃が走る。


さっきまでとは、まるで違う。


「くそっ……!」


エリカが反撃する。


だが――


『遅い』


魔族の一人が、淡々と告げる。


そのまま、攻撃をいなす。


「なっ……!」


もう一人が、横から入る。


連携。


防ぎきれない。


「……ちっ」


エリカが距離を取る。


呼吸が荒い。


「やばいわね……」


「……うん……」


アユミも、ようやく立ち上がる。


身体が、重い。


『数だけじゃない……質が違う……』


その時――


御堂が、静かに口を開いた。


「さて……そろそろ終わりにしようか」


その言葉と同時に――


空気が、わずかに変わる。


さらに――


別の気配。


ゆっくりと。


まるで、散歩でもしているかのような足取りで。


「……あら?」


軽い声。


聞き覚えのある声だった。


その瞬間。


エリカの動きが止まる。


「……嘘でしょ」


小さく呟く。


そして――


その姿が、視界に入る。


バルサだった。


いつもと変わらない様子。


余裕のある表情。


まるで、この状況すら楽しんでいるかのように。


「……来たわね」


エリカが、低く言う。


その声には、明確な“諦め”が混じっていた。


「最悪のタイミングで」


アユミが、息を飲む。


「……あの人……」


「敵よ」


即答だった。


「しかも、ここにいる誰よりも厄介なやつ」


セレグも、静かに告げる。


『……状況が悪化した』


魔族たちが、わずかに距離を取る。


御堂は、満足そうに笑った。


「来てくれたか……バルサさん」


その言葉に――


バルサは、軽く首を傾げる。


「さて……これは、どういう状況ですか?」


その声音は、どこまでも軽い。


だが――


それが、逆に不気味だった。


「まあいい」


御堂が、ゆっくりと手を上げる。


「どうせ――」


その視線が、アユミとエリカを捉える。


「ここで終わりだ」


その瞬間。


エリカは、小さく息を吐いた。


「……終わったわね」


完全に、詰んだ。


そう、理解していた。


アユミも、言葉を失う。


逃げ場はない。


勝ち目もない。


そして――


最悪の存在が、そこにいる。


バルサは、何も言わない。


ただ、静かに立っているだけだった。


その沈黙が――


より一層、絶望を深めていた。





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