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転生鍛冶師の武器無双~自作の武器でSランクの魔物を相手に試し斬りしていたら、何故か最前線で送られることになったんだが~  作者: WING
第1章

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プロローグ

 ――俺の人生は、だいたい最適解でできている。


 少なくとも、そう思っていた。

 会社でも効率優先で動いているし、同僚から「効率厨め」と言われるくらいには。


「はい、ドロップ確認。……うん、今日は機嫌いいな、このゲーム」


 軽く肩を回しながら、モニターに視線を固定する。


 今プレイしているのは、某ゲーム会社が世に出した狩猟を極めるアクションゲーム。

 モンスターを狩り、その素材で武具を鍛え、さらに強敵へ挑む。

 生態系すら感じさせる世界で、『狩る・創る・また狩る』を繰り返す、それがすべてだ。

 ゲームである以上、そこには素晴らしいストーリーも存在するが、俺が惹かれたのはこのループ構造だ。


 視界の端にカップ麺が映る。

 数分前にはできていたが、もう冷め始めている。

 だが、完全に冷めたら、それはそれで新しい食感として評価すればいい。

 まさに、合理的だろう?


「おっ、レア素材三つ。連続の上振れ。……運営、急にどうした? ついに心でも入れ替えたか?」


 誰もいない部屋で、誰にも届かない軽口を叩くも、指先は止まらない。

 ログ確認、インベントリ展開、素材整理。

 すべてが流れるように進む。


「さて、と。じゃあ仕事に戻るか」


 仕事と呼んでいるが、もちろん会社から給料は出ない。

 いや、実際には給料は出ている。

 俺は働き過ぎで、これを機に「溜まっている有休を消化しろ」と怒られてしまい、仕方なく休んでいる。


「戦闘は結果、鍛冶が本番。これ、テストに出るぞ」


 自分で言って、自分で小さく頷く。

 画面に並ぶ素材を眺めながら、思考を組み立てる。

 どの素材を使うか。

 どう組み合わせるか。

 何を切り捨て、何を伸ばすか。


「万能は無能、特化は正義。……まあ、例外はあるが、例外はだいたい例外だ」


 つまり今回は、特化でいい。

 カーソルを滑らせ、素材を選択。

 鍛冶ウィンドウが開く。

 火花のエフェクトと鉄を打つ音。


 この演出が、やたらと好きだった。


「頼むぞ。変なところで丸くなるなよ」


 武器に向かって祈るように話しかける。

 客観的に見れば危ないが、主観的には問題ない。結果が出れば、過程はすべて正当化される。


 数秒後。

 画面には完成の表示。

 

「……ほう」


 ステータスを開いた瞬間、口元がわずかに緩む。


「いいね。尖ってる。こういうのでいいんだよ、こういうので」


 重量特化で攻撃速度は低下。

 だが、その分の破壊力は暴力的。


 俗にいう、使い手を選ぶ武器。

 結構。

 選ばれる側に回るつもりはない。


「じゃあまあ、現場検証といこうか」


 椅子に深く座り直し、軽く指を鳴らす。

 フィールドに移動。

 高難易度のエリア。

 巨大な影が、画面の奥で蠢いている。


「こんにちは。今日はちょっと、斬られてもらえると助かる」


 礼儀正しく挨拶するが、相手は俺を見つけるなり咆哮で返してきた。


「元気がいいな。……嫌いじゃない」


 キーを叩く。

 キャラクターが踏み込み、武器を振り下ろす。

 次の瞬間、画面を埋め尽くすダメージ数値。


「……ああ、うん。知ってた」


 想定通り。

 むしろ少しだけ上。


 つまり――成功だ。


「いいね。設計、完璧」


 敵の挙動を観察する。

 耐久、反応速度、攻撃パターン。

 すべてを情報として処理する。


「ほら、ちゃんと暴れてくれないと、データが偏る」


 軽口を叩きながら、次の一撃。

 無駄はない。

 ただ最短距離で、最適な手順を踏むだけだ。


 数分後。

 モンスターが崩れ落ちたことで戦闘が終了した。


「お疲れさま。いい素材、期待してるよ」


 ドロップ欄を開く。


「……お、いいじゃないか。仕事ができるタイプだな」


 満足な結果に何度も頷く。


 素材回収。次の設計。次の検証。

 ループは続く。

 終わる必要も、終わる理由もない。


「いやあ、ほんと――飽きないな、これ」


 心からそう思う。

 まさに至福の時間。

 だからか、このときはまったく想定していなかった。


「……ん?」


 ほんのわずか、視界が揺れた。

 しかし、確実に違和感として認識できる程度にはっきりと。

 視界の端が水面のようにゆらりと揺れたのを感じて、俺は反射的に眉を顰めながらモニターを凝視したまま思考を巡らせる。


 ラグ――にしては挙動が不自然。


「いや、このタイミングで処理落ちはないだろ……回線は安定しているし」


 自分でも半ば無意識に、いつものように原因の切り分けを始めているあたり、完全に職業病だと思うが、それでもこの手順を省く気はないし、省いたところでいいことなど何一つないと知っている。

 ネットワーク状況は良好、フレームレートも安定、CPUもGPUもまだ余力を残している。

 ならば残る選択肢は自ずとわかる。


「……俺自身、か?」


 ぽつりと呟いた声は、思っていたよりも乾いていて、自分で自分に苦笑するしかなかった。

 ほんの一瞬だけ視線をモニターから外し、ゆっくりと部屋の中を見渡す。


 カーテンは閉め切ったままで、外が昼なのか夜なのかすらわからないし、照明もつけていないから、光源はこのモニターだけという実に健康的とは言い難い環境が出来上がっている。


 足元には食べ終わったカップ麺の容器が二つ、いや三つ転がっていて、机の上にはまだ湯気の気配だけが名残のように残る別のカップ麺が放置されている。


「……うん、なかなかに終わってる光景だな、これ」


 客観的な評価を口にしつつも、不思議と嫌悪感はない。

 むしろ——


「まあ、今日までの生活を考えれば、悪くない環境ではあるか」


 そう結論づけてしまうあたり、我ながらどうかしているとは思うが、今さら矯正するつもりもない。

 なにせ、後悔していないからだ。

 少なくとも、今この瞬間に関して言えば。


「……今、めちゃくちゃ楽しいしな」


 自然と漏れたその言葉には、嘘も誇張も一切含まれていなかった。

 社会人としての俺は、それなりに真面目にやっているつもりだし、効率重視で仕事を回している自覚もあるからこそ、同僚から『効率厨』なんて言われるわけだが。


「仕事片付けすぎて余ってる有休を消化しろって怒られるの、普通に理不尽じゃないか?」


 苦笑混じりに呟く。

 本来なら評価されるべき部分で怒られるというのは、どうにも納得しがたいものがあるが、会社という組織がそういうものだと理解している以上、無駄に抗う気もない。

 だからこそ、こうして言われた通りに休んでいるわけで。


「その結果が、徹夜でゲーム三昧。……うん、使い方としては満点だな」


 誰に評価されるでもない採点を自分で下し、軽く肩を回す。

 睡眠は削っているが、今のところ思考は回っているし、判断力も鈍っていない。

 むしろ、極限まで無駄を削ぎ落とした状態で、集中だけが研ぎ澄まされているような感覚すらある。


「よし。もう一周、いけるな」


 迷いなくそう判断し、再び画面へと意識を戻す。

 まだ詰めきれていない構成がある。

 さっきの武器も、ほんの少しパラメータを調整すれば、さらに効率が上がる余地が見えている。

 ここでやめるのは、あまりにも非合理的だ。

 だが。


「……あれ?」


 キーを叩いた瞬間、指先に伝わるはずの確かな感触が、どこか一拍遅れてやってくるような違和感に、思わず眉を顰める。

 入力と反応が、微妙に噛み合っていない。


「いやいや、そんなわけあるか……」


 軽く笑い飛ばそうとするが、視界の歪みは先ほどよりも明らかに強くなっているし、画面の文字がわずかに二重に見えていることにも気づいてしまう。

 これはさすがに、無視できるレベルじゃない。


「……これは、さすがにまずいか?」


 ようやく現実的な判断を下し始める自分に、どこか遅すぎるという冷静なツッコミを入れつつも、それでも思考は止まらない。

 ここで中断した場合、今までの成果がパァになる。

 しかし、身体も限界を迎えているにも事実。


「……短時間で終わらせれば、問題ない、か」


 結論を出すも、無茶だという自覚はある。

 だが、ここまで積み上げた流れを手放すのは、それ以上に非効率だ。

 だから、続けるべく、俺はキーを叩く。

 キャラクターが動く。


「……っ」


 ほんのわずか、操作がズレた。

 普段ならあり得ないミス。

 今まで一度もやったことがないレベルの入力ミスに、自分でも驚きを隠せない。


「……はは、これはさすがに笑えないな」


 乾いた笑いが漏れる。

 それでも、戦闘は続いている。

 敵の動きは見えているし、パターンも理解している。

 ならば、理論上は問題ない。


「……まだ、いける」


 そう呟いた声は、自分でも驚くほどかすれていた。

 喉が渇いていることに気づく。

 水分補給――本来なら最優先事項だ。


「……後回しでいい」


 切り捨てる。

 今は、この検証の方が優先度が高い。

 ここで得られるデータは、後からでは再現できない可能性がある。


「ちゃんと動けよ、俺……」


 自分自身に言い聞かせるように呟きながら、さらに操作を続ける。

 だが、限界は確実に近づいていた。

 視界が暗くなり、音が遠のき、身体の感覚が徐々に希薄になっていく。


「……これは、完全にアウトだな」


 ようやく、諦めの判断を下す。

 椅子から立ち上がろうとした、その瞬間。

 ぐらり、と世界が大きく傾いた。


「……あー、なるほど、こういう感じか」


 妙に納得してしまう自分がいる。

 足に力が入らず、上手くバランスが取れない。

 身体が、自分のものじゃないみたいに言うことを聞かない。

 原因は明白だ。

 過労、睡眠不足、栄養不足。

 全部心当たりがあるし、全部自業自得だ。


「……まあ、そりゃそうなるよな」


 苦笑する。

 だが、それでも――視線だけは、モニターから外れない。

 まだ、キャラクターがそこにいる。

 戦闘が続いている。


「……悪いな、ちょっと席外す」


 誰にともなく、そう呟く。

 こんなところで離脱するのは、本意じゃない。

 効率が悪い。

 非合理的だ。

 だが、さすがにこの状態では……


「……すぐ戻る」


 そう言った瞬間、自分でもそれが叶わない約束だと、どこか頭の片隅で理解していた。

 視界が、一気に暗転していく。

 音が消え、感触が消え、思考すらもすべてが深海に落ちるように沈んでいく。


「……く、そ……」


 最後に浮かんだのは、後悔でも恐怖でもない。

 ただ一つの、どうしようもなく些細で、それでいて自分にとっては致命的な未練。


「……まだ、試してない武器……あったんだけどな……」


 未検証のまま終わることへの不満。

 それだけだった。


「……まあいいか……」


 意識が落ちる。

 深く、暗く、どこまでも沈んでいく。

 それでも、最後に思う。


「……続きは……また、やればいい……」


 素材を集めて、作って、試す。

 それだけだ。


 ――そうして俺の意識は途切れるのだった。



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