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専業主夫の探偵推理  作者: 如月いさみ


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15/16

試験と事件の夢と

 共通テストが終わると直ぐに私立公立などの二次試験が開始される。

 東都大学は二次試験が比較的遅く2月下旬の25日と26日にあり、発表が3月10日であった。

 

 真理は一本なのでそれまで二次試験の勉強に集中すると言い、正義は他に受ける東都教育大学と横浜大学の前期試験へと挑んだ。

 

 東都教育大学は比較的早く1月24日と25日にあり結果も2月の中旬には分かる。

 封書で送られてくるのだ。

 横浜大学は2月23日と24日で東都大学と連続であった。

 発表も同じ3月10日であった。

 

 正義は横浜大学の方は封書で連絡をもらうように指定し、東都大学は見に行くことにしていた。

 

 正に1月下旬から3月までは大きな峠越えの時期だったのである。

 

 専業主婦の探偵推理

 

 東都教育大学の前期試験の朝に真理からLINEが送られてきた。

『今日は二次試験の練習な!』

 

 正義はそれを見ると小さく笑って

「真理らしいな」

 と呟き、戸を開けると休みを取っていた一途と心に手を振った。

「じゃあ、行ってきます」

 

 一途は心を抱きながら笑顔で

「いってらっしゃい」

 と送り出し、心も

「いっちゃらっしゃ」

 と手を振った。

 

 正義は強く一歩を踏み出し

「全力を出し切るのみ」

 と東都教育大学の会場へと向かった。

 

 空は冬の晴間。

 青が一面頭上で広がっていた。

 

 その結果は他の横浜大学と東都大学の試験前に分かるので前哨戦と言えどショックを受けて臨むのか落ち着いて望めるのかの分かれ道であった。

 

 正義は午前中と午後の試験に集中し17時に全ての試験を終えるとぐったりとして東都教育大学の門を出た。

 そこに真理が待っており

「やっほやほー」

 と手を振って

「その顔だとちゃんと落ち着いて受けられたみたいだな」

 とにっこり笑った。

 

 正義は笑みを浮かべると

「ん、LINEありがとうな」

 前みたいに緊張して頭が真っ白ってことにはならなかった

 と答えた。

「自分的には出来たと思う」

 

 真理は肩を叩くと

「じゃ、家まで送る」

 と待っている車に正義を誘った。

 

 正義は車に乗り込みながら

「勉強していたんじゃないのか?」

 いいの?

 と聞いた。

 

 真理は背凭れに身体を預けながら

「息抜き」

 と笑い

「なんかさぁ、勉強してても焦るだけになる時もあるからな」

 と答えた。

 

 正義は「分かる」と答え

「俺も2年前はそうだったな」

 と言い

「もう絶対に受からないと! って鉛筆も落としたくらいだから」

 それで試験用紙見た瞬間に頭真っ白になって

「文字が読めないくらい緊張してた」

 と笑った。

 

 真理はちらりと正義を見ると

「だろうなぁ」

 正義がどうして落ちたんだろうって実は思ってた

「知識深いし物知りだし」

 けど本番に弱いタイプだったんだな

 と告げた。

 

 正義はう~んと声を零しながら

「それもあったし多分両親の期待を自分の中で増幅させ過ぎていたのかも」

 もう試験受ける時には発表後のことなんか想像できないくらいにとにかく合格しないとって思ってたから

 と言い

「でも今は大学で法律の勉強をして探偵になって困っている人の役に立ちたいって気持ちが強いから全力を出し切ろうと思えた」

 と告げた。

「それに一途さんと心ちゃんが今日休みを取って見送ってくれて」

 凄く嬉しかった

 

 真理は惚気た表情に

「……いや、独り者には辛いからやめれ」

 と業とペシペシと叩く振りをした。

 

 だが、真理にも大切な人はいるのだ。

 親類だがそれでも愛する人だ。

 

 正義は静かに微笑む真理を横目に

「きっと真理も好きな人のことをかんがえているんだよね」

 と心で呟いて笑みを浮かべた。

 

 そして2月中旬に合格の連絡が届いた。

 正義は安堵の息を吐き出しながら少し肩の荷が下りた気持ちで23日と24日に横浜大学の試験を受け、気持ちの高ぶったまま2月25日を迎えた。

 

 大本命の東都大学の二次試験の日であった。

 

 一途は弟の各務に

「お姉さんは大学の試験は何んとな~くで乗り切ったけど、正義さんは違うからな」

 明日は大本命の東都大学の二次試験の初日だろ?

「休んで見送ること!」

 と言われたらしく、最初の東都教育大学の時と同じように見送りに玄関に姿を見せた。

 

 一途は少し心配そうにしながらも笑顔で

「いってらっしゃい」

 と手を振った。

 

 一途自身は試験に対してそれほど緊張も何もしないで挑んだので自分が正義に対してどうしていいのか分からなかったのだ。

 

 心は手をあげて

「はーい」

 と答えた。

 

 正義は目を見開いて笑うと

「行くのは俺だからね」

 と心に言って

「行ってきます」

 と二人に笑顔を向けて家を出た。

 

「とにかく東都教育大は受かってるんだ」

 平常心平常心

「それに心ちゃんのはーいで気持ち落ち着いたから大丈夫」

 

 正義はそう独り言を呟き東都大学へと向かったのである。

 

 その校門で真理が待っており

「じゃ、行こうぜ」

 と校舎に向かって足を進めた。

 

 1日目は問題なく終わり、試験の2日目に異変があった。

 昼休みに食事を終えて講義室に入ろうとしたとき二人の刑事が姿を見せた。

 

 渡井武と末枯野梓であった。

 

 キャンパスで真理が用意したお弁当を食べながら正義が本棟に入って行こうとする彼らを目に

「あ、渡井さんに末枯野さんだ」

 と指をさした。

 

 真理は目を向けると

「何かあったのか?」

 とお弁当をベンチに置くと

「ちょっと聞いてくるな」

 と駆け出した。

 正義は弁当を膝に乗せて

「いってら」

 と見送った。

 

 武と梓は真理と出会うと厳しい表情を明るくして唇を開いた。

 

 正義はそれを見ながら

「何かあったんだ」

 と呟いた。

 

 そう、二人が受けているこの東都大学で事件が起きようとしていたのである。

 それを真理の思い人である津村向日葵が夢で見たのである。

 

 真理は走って戻ってくると

「正義、試験が終わったら合流して欲しいって」

 と告げた。

 正義は頷いて

「わかった……で?」

 それでいいの?

 と聞いた。

 

 真理は頷いて

「まだ、事件は起きていないから」

 夕方までは大丈夫

 と答えた。

 

 正義は首を傾げると

「夕方まで?」

 何それ?

 と聞いた。

 

 真理は試験会場の講義室へ向かいながら

「詳しくは試験が終わってからな」

 取り敢えず今言えることは

「向日葵さんの夢でこの東都大学で事件が起きるってことなんだ」

 と告げた。

 

 正義は驚いて

「そうなんだ」

 と言い

「わかった」

 と答えた。

 

 未来を夢見るという女性。

 彼女がこの大学で事件が起きるという夢を見たという。

 

 正義は受験番号の張られた席に座り息を吸い込んだ。

「今は……試験に集中だ」

 そう呟いて脳裏に一途と心の顔を思い描いた。

 

 開始の声をと共に鉛筆を手に公民の試験問題を開いた。

 試験が終わると正義は真理と合流した。

 

 パラパラと試験を終えた受験生たちが校門に向かって歩いていく。

 2人はその中を縫うように進み本当の応接室へと入った。

 

 そこに武と梓が待っていた。

 真理は中に入り

「向日葵さんの絵を詳しく見せてくれるか?」

 と聞いた。

 

 武はちらりと梓を見た。

 梓は二人が椅子に座ると一枚の紙を出した。

「ああ、わかった」

 

 紙には男性が胸から血を流して倒れている様子が描かれていた。

 

 正義はそれを見ると

「見たことのない人だよね」

 と言い、散らばっている本を見て

「でも……本と指示棒が落ちてるってことは講師じゃないかな?」

 と告げた。

 

 真理は机の影から覗くそれに

「確かにそうだな」

 と言い

「本は……プログラム言語ってことは」

 と正義を見た。

 

 正義は頷いて

「多分、情報処理だよね」

 と言い、武と梓を見ると

「この大学の情報処理の教授の情報をお願いできますか?」

 と聞いた。

 

 武は頷くと

「ああ、分った」

 と立ち上がり部屋を出た。

 

 正義は不意に

「そうか」

 と呟いた。

 

 真理は首を傾げると

「ん?」

 と聞いた。

 

 正義は絵を指して

「西日が入ってるから……時間は夕方か」

 と告げた。

「何時の夕方かは分からないけど」

 そういうことだったんだね

 

 真理は「ああ、そういうこと」と頷いた。

「少し見せてもらっただけだからそれくらいしか判断できなかった」

 

 正義は笑み

「瞬時にそれを判断できるんだ」

 やっぱり真理も探偵気質だよね

 と告げた。

 

 真理は絵を見ながら

「俺は並だからその程度な」

 と言い

「正義は他の情報も素早く正確に拾ってくるから名探偵なんだよ」

 と心で突っ込んだ。

 

 反対に正義は

「真理は判断も正確だし早いし……探偵の素養ありありだと思うんだけど」

 と心で突っ込んでいた。

 

 少しして武が戻ると工学部の情報処理工学科の教授助教授の一覧を正義と真理に差し出した。

「これだ」

 東都大学は工学部がハードとソフトを一括しているらしい

「その中で情報処理工学科がプログラム専攻だということだ」

 

 顔写真と経歴が書かれている。

 殆どが東都大学の工学部の大学院から教授や助教授となっている。

 

 正義はその一枚で手を止めて

「この人だ」

 と告げた。

 

 真理も頷いて

「ああ、そうだな」

 と答えた。

「後は場所だな」

 

 正義は立ち上がると

「あの……この万田栄さんは今日は来られているんですか?」

 と聞いた。

 

 武が「あ、おお」と慌てて踵を返すと

「聞いてくる」

 と言い駆け出した。

 

 そして、直ぐに戻り

「今日は休みだったらしいが出勤に切り替わっているらしい」

 多分来ている

 と告げた。

 

 正義は窓を見ると

「もうすぐ日が赤くなる」

 と言い、立ち上がると

「場所を探そう」

 と告げた。

 

 真理も頷いて

「そうだな」

 と答えて、足を踏み出しかけた。

 

 それに梓が

「俺も一緒に行こう」

 と言い、薄い冊子を手にすると

「闇雲に動いても分からなくなるだけだ」

 この学内地図の載っているオープンキャンパスの地図に添っていく方が良い

 と彼らの水先案内を買って出た。

 

 真理は「サンキュ、梓」と言い

「取り敢えず工学部の棟からな」

 と告げた。

 

 梓は頷いた。

 そして、武を見た。

 

 武は頷いて

「じゃあ、頼んだ」

 末枯野

 と言い、彼らを見送ると立ち上がって校門の方へと足を進めた。

 

 空はゆっくりと茜色に変わり始め太陽も西へと傾き始めていた。

 

 正義と真理は梓に案内されながら工学部の棟へと向かった。

 手前は工学部の電子工学科や電気工学などが入っている棟であった。

 

 講義室もあるが工作室などもいくつかあった。

 実験室もある。

 

 三人は順に見て回りかけて、不意に正義は講義室で足を止めると

「あのさ、工学部の講義室の形って全部こんな感じなのかな?」

 と聞いた。

 

 それに真理と梓は足を止めた。

 正義は梓に

「その夢の紙を見せて欲しんだけど」

 教室の形が気になって

 と指をさした。

 

「今見てきた講義室って全部平面の教室だったけど」

 この人が倒れているの楕円のアリーナ形式だよ

「それこそ俺達が先まで試験を受けていた講堂の形に似てる」

 しかも大きいし

 

 真理は驚いて

「あ、ああ」

 確かに

 と告げた。

「そうか、だったらそのアリーナ形式の講義室をピックアップした方が早いか」

 今日じゃなかったら工学部の何処かだろうけど

 

 梓はパラパラと見て

「なるほど」

 と言い

「確かに段数が多いな」

 ここまで大きいのは確かに真理くんたちが受けていた大講堂だけだ

 と言い

「とにかく工学部の中をチェックしたら大講堂に向かおう」

 と告げた。

 それに三人は頷いた。

 

 正義は工学部の中を走って確認しながら

「背景は後で調べるとしても……この殺人を止めないとね」

 今日だったら調べている間に起きてしまう

 と呟いた。

 

 それに真理も梓も頷いた。

 その様子を一人の男性が見つめスッと踵を返した。

 

 武は校門で怪しい人間が出入りしないかを張っていた。

「……しかし、何時起きるかが分からないっていうのも骨が折れるな」

 

 そこへ男性が姿を見せた。

 

 武はその人物を見ると

「あ、貴方は」

 と声をかけた。

 

 男性は笑むと

「君は渡井武刑事」

 と言い

「事件かな?」

 と聞いた。

 

 武は敬礼すると

「はい」

 と答え

「立花前刑事局長はお元気ですか?」

 神在月さん

 と聞いた。

 

 神在月直は頷くと

「今は菜の花を育てているよ」

 収穫したらお浸しとかを作ってくれるらしい

「俺は料理が出来なくて調理機械を壊すという前科持ちだからな」

 と笑った。

「今日は文学部の特別講義の打ち合わせで体力仕事から逃げてきた」

 色々大変だと思うが頑張ってくれ

 

 そう言って通り過ぎた。

 

 そして、暫く歩いて一人の青年を見つけると

「久しぶりだな」

 と声をかけて

「取材か?」

 と聞いた。

 

 それに青年は笑顔で

「情報提供の方かな」

 皐月綺羅ちゃんのね

「直兄は?」

 と聞いた。

 

 直は肩越しに振り向いて今出てきた東都大学の門の方を見ると

「向日葵の夢の確認だ」

 と答え

「……真理くんと神楽正義」

 今度は彼らが導夢に立ち向かってくれる

「向日葵の見る時代を動かす夢にな」

 と告げた。

 

 青年は笑みを深めると

「向日葵ちゃんのか」

 綺羅ちゃんも何れ加わることになるかもね

 と告げて、肩を並べると直と共に立ち去った。

 

 正義たちは工学部の棟を見て回り、大講堂へと向かった。

 そこに万田栄が立っていた。

 

 入試が終わった静寂の広がる講堂の中で現れた人物を見た。

「……論文の件だろ?」

 

 言われ、その人物はナイフを出すと

「話はついていたんだ……なのに……」

 と顔をしかめた。

 

 栄はそれに

「だが、それは貴方の為にもならない」

 何れ分かる

「何故、論文にネットのチャットのコピーなんかを」

 と告げた。

 

 その人物は足を進めながら

「お前には分からない」

 教授に目をかけてもらってトントン拍子に教授になったお前には

「俺は年齢的にも最後だ」

 折角、いい方法を教えてもらったのに

 と呟いた。

 

 栄は息を吐き出し

「それで、休みだった俺を態々呼び出して……」

 と呟いた。

 

 その人物はナイフを前に足を踏み出しかけた。

 そこに影が飛び出し手を掴んだ。

「そこまでだ」

 

 梓が手を掴んで地に押し付けた。

 

 正義と真理は息を吐き出し

「「間に合った」な」

 と同時に呟き足を進めた。

 

 栄は驚きながら

「君たちは」

 と呟いた。

 

 真理が笑みを浮かべ

「探偵事務所の人間です」

 と告げた。

「しかし、この講堂だと気づかなかったら間に合わなかったな」

 

 梓もその人物を逮捕しながら

「神楽君の機転のお陰だな」

 と心で呟いた。

 

 万田栄を襲おうとした人物は同じ工学部の情報処理工学科の助教授で論文に今ネットで質問に答えるチャットを利用して論文を書いて提出し、それが彼にばれて注意を受け口封じしようとしたのである。

 

 正義と真理は事件を解決し、末枯野梓の車で送ってもらいながらぐったりとしていた。

 真理はふぅと息を吐き出し

「試験の疲れを忘れてたけど今どっと来た」

 と呟いた。

 

 正義も笑って

「俺も」

 と言い

「けど、不思議だよね」

 本当に起きるんだね

 と呟いた。

 

 真理は頷いた。

「けど、止められるんだ」

 

 正義は頷いた。

「止めないとね」

 

 梓は二人がそう言ってクーと寝るのに小さく笑みを浮かべた。

 

 正義が帰ると一途と心が出迎え彼を優しく包み込んだ。

 戦い済んで……後は合否の発表待ちであった。

 

 この時、穏やかな夜が彼らを包み込んでいた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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