第一の山場 共通テスト
共通テストは1月14日と15日の土日に全国で行われた。
一日目の一時限目は地理・歴史・公民の選択制になっており、二限目以降は国語、外国語と続いた。
二日目は理科と数学がそれぞれ必要なモノを選択して受ける形であった。
正義は真理と待ち合わせをして東都大学のキャンパスで共通テストを受験した。
これによってある程度受ける大学を再検討する必要が出てくる。
一途は心を国立図書館へと連れて行き、仕事をしながら時折窓の向こうの景色を見つめた。
「頑張って、正義君」
心は一途の隣で幼児用の椅子に座り一生懸命紙に絵を描いていた。
専業主夫の探偵推理
一日目の地理・歴史・公民と語学の試験は正義にとってはある意味得意分野であった。
歴史は元来から小説や本などで読んでいたし、地理と公民もそれほど不得意ではなかった。
一日目は正義的には及第点と言う出来栄えであった。
問題は……数学であった。
軒並み試験を落ちた原因は数学が壊滅的に足を引っ張ったのだろうということを正義は自分なりに理解していた。
真理にその話をすると
「そりゃ、正義は最初の分数の割り算で『何で割り算なのにひっくり返して掛けるんだ? 』で引っ掛かったタイプだな」
と指摘された。
「深く考えすぎて時間を費やし過ぎて試験を落とすタイプだ」
とにかく深く考えるのは試験じゃなくても出来るから
「試験では教えられた通りに書け」
思考するのはその後だ!
正義は答案用紙に向かって
「……何故何故は後で……今は教えられた通りに解く」
と自分に言い聞かせると、懸命に鉛筆を走らせた。
暗記と応用は得意なのだ。
ただ引っ掛かりがあるとそれを思考する癖があってその後が時間足らずで総崩れしてしまうというテストでは不利に働く性格があった。
点数を稼がないと試験は受からない。
それが現実なのだ。
正義は引っ掛かった問題は飛ばして先に解けるものを全て解いて、その後に飛ばした問題に立ち戻った。
それも真理からのアドバイスであった。
二日間の試験が終わり正義と真理は大きく息を吐き出しながら大学の大講堂から出ると同時に
「「第一の山突破」」
とぼやいた。
東都大学の二次試験は前期試験と後期試験があり、二人とも2月にある前期試験を受けてその結果でどうするかを考えることにしていた。
正義の場合は特に東京教育大と横浜大もあるので全て前期を受けて受かったところに行こうと決めていたのである。
第一希望は東都大学ではあるが……何よりも大学に受かって司法試験に臨むことが一番だからであった。
2人が文京の駅に着いたとき、真理の携帯が震えた。
相手は末枯野梓であった。
真理は文京駅の改札の横手に移動すると
「梓? どうかしたのか?」
と聞いた。
「ん? 共通テスト??」
今終わって文京駅に着いたところ
正義はそれを聞きながら
「仲いいな」
試験の心配かな?
と心で呟いた。
真理は「なるほど、うんうんわかった」と切ると
「正義、依頼だけど……行けるか?」
と聞いた。
正義は頷くと
「うん、今日は一途さんが特別料理を買ってきてくれるって言ってたから」
と告げた。
真理はニヤニヤ笑うと
「いいねぇ~」
と言い
「俺んちは受かってからだって言われてる」
けど向日葵さんが頑張れデザートを持ってきてくれるって言ってたから
と笑みを見せた。
「ま、梓にも何か奢らせよ」
時刻は午後3時。
2人は文京駅に迎えに来た車に乗り込み、事件が発生していた江戸川西塔会病院へと向かったのである。
それは病院に送られてきた一枚の奇怪な脅迫状であった。
病院は地域では緊急患者も受け入れる有名な巨大病院であった。
ただ、院長と副院長は兄弟でしているという家族経営主体のワンマン病院でもあった。
正義は真理と共に梓に連れられて病院の裏手の職員通用口から入ると待っていたらしい事務方の女性に連れられて院長室へと案内された。
最上階の一角にある広々とした豪華な部屋であった。
その院長室で院長である西塔雅夫と夫人と副院長である西塔忠夫と夫人の4人が待っており、三人が入ると夫人たちは心配そうにしつつも院長に視線で急かされ一礼して
「夫をお願いします」
「どうか、お守りください」
と口々に告げて立ち去った。
梓も真理も正義も頷いて答え、院長の雅夫に勧められるままに二人に向かい合うようにソファに座った。
雅夫は一枚の紙を彼らに差し出した。
「これが送られてきた手紙で分かったのは私か弟が殺されるということだけでした」
『5年前の真実を明らかにしなければお前達に不幸が降り注ぐだろう』
正義はそれを見ると
「この5年前の真実と言うのは?」
と聞いた。
雅夫は息を吐き出し
「思い当たるのは医療ミスです」
と言い
「しかし、この件に関しては相手方と示談が済んでいます」
その確かに公にはしていませんが
「相手の方も納得していたので……」
と告げた。
真理は腕を組むと
「確かに示談に応じたのなら蒸し返す話でもないし」
まして5年も経ってからと言うのは納得いかないな
と告げた。
正義は考えながら
「だよね」
と言い
「その示談で実はかなり揉めて無理やりだったとか」
相手は実は納得してなかったとかは?
と聞いた。
有体な話である。
雅夫は聞かれるだろうとことを予測していたように
「確かに最初は揉めましたがご遺族と相手の方の墓で丁寧にお詫びしましたらご納得いただき慰謝料もかなりお支払いしました」
そちらの方ではありませんが
「5年も経って今更蒸し返されても」
と告げた。
隣で座っていた忠夫も頷いて
「確かにこちらのミスでしたが相手の方はご理解いただけたと思っています」
と答えた。
真理は「なるほど」と答え
「一応、こっちとしてはその記述があるから調べないわけにはいかないから」
住所と名前を
と告げた。
2人とも頷いた。
正義は二人を見ると
「後、命を狙われていることに違いが無いのでご注意ください」
と言い
「あと関係ないのですがこの5年前の医療ミスを知っている人と関わった人のリストをいただけますか?」
先ほどの話だと公にしていないということなので知っているからは限られていると思います
と付け足した。
雅夫は頷き
「わかりました」
と答え、用意していただろう被害者の名前と当時のカルテと示談書を彼らに渡した。
そして、正義の言った関係者に関しては
「少しお待ちください」
と言うと事務の女性を呼び幾人かの情報を印刷して持ってくるように指示を出した。
「今用意させています」
正義は頷いて
「ありがとうございます」
と答えた。
正義と真理はリストと被害者の情報を手に病院を後にした。
梓は二人に
「一応、二人には家までそれとなく警察官が付くようにしているので」
そこは安心してもらいたい
と告げた。
正義も真理も頷いた。
時刻は既に夕方の5時前である。
空は藍色を深めて闇の色へと変化していた。
真理は書類を手に
「これは俺が預かっておくから」
正義は帰って一途さんと心ちゃんに今日のテストを労ってもらわないとな
と笑みを見せた。
「俺も向日葵さんに労ってもらう」
明日から聞き込みに回るけど
「大丈夫か?」
正義は頷いて
「いいよ」
掃除と洗濯を早くに済ませておく
と答えた。
「夕食の下ごしらえもしておこう」
時短で行かないとな
うんうん、と一人頷きながら言う正義を横目に真理は
「主夫だな」
と心で突っ込んだ。
運転しながら梓も
「主夫だな」
と同じように突っ込んでいた。
正義はアパートの前で降り立ち、梓から小さなケーキの箱を受け取った。
彼は笑顔で
「どうせ真理くんに言われると思うので」
共通テストお疲れケーキだ
「三人で食べてくれ」
と告げた。
正義は合流する前に真理の言った言葉を思い出しながら
「すみません、ありがとうございます」
と頭を下げて受け取った。
真理は笑顔で
「さすが、梓」
と笑い
「じゃあ、明日迎えに来る」
と告げて立ち去った。
正義は手を振って見送り、アパートの中に入ると部屋の戸を開けた。
一途と心は通常は6時頃に帰って来る。
少し早い帰宅だったので正義はほっとするとケーキを冷蔵庫に入れて灯りとエアコンを入れた。
「部屋を暖めておいてあげないとね」
一途は久守晴馬にアパートの前まで送ってもらい父親が買ってくれていた夜食の出来合いを手に家へと戻った。
正義は玄関まで出迎えるとそれを受け取り
「お疲れさま」
と笑みを浮かべると
「お風呂にする?」
それともご飯にする?
と呼びかけた。
一途は心を正義に預けながら
「お風呂を先にするわ」
と言い
「その、正義君の方こそお疲れ様」
と告げた。
正義は笑むと
「真理にもらったアドバイスのお陰で一昨年ほど崩壊はしてなかった」
と告げた。
「前期試験も同じように頑張るよ」
一途は正義が結構元気だったので安心し
「そう、頑張ってね」
と言うと浴室へと向かった。
その日、豪華な料理に正義は驚きつつ、一途も美味しいことで有名なケーキに笑みを浮かべた。
心もケーキを食べると
「ちー」
と笑顔で言い、ほっぺたに沢山のクリームをつけながら喜んだのである。
翌日、正義は朝から洗濯機を回し、二人を送り出してから大急ぎでトンボを同時に走らせた。
その間に夕食の準備をしてフリーザーパックに味付けをした状態で入れると冷蔵庫へと仕舞った。
「これで鳥に味も染み込むし帰ったら上げたら良いだけだから一石二鳥だよね」
時短テクニック!
満足げに言ってちょうど携帯の着信の知らせに目を向けた。
白露真理からである。
正義が出ると真理は既に車に乗っているらしく
「実は昨夜西塔雅夫氏が車に跳ねられて足を怪我したと連絡があったんだ」
と告げた。
「ちょうど警察の見回りがその場に居合わせて引き返して引かれそうになったところを助けて足の怪我だけで済んだんだけど」
病室で警備が付いている状態なんだ
「それで梓が渡井さんの指示で5年前の被害者の鈴本久弥の妻である珠美に事情聴取へ向かうところなんだ」
正義は驚いて
「そうなんだ」
と答え
「じゃあ、俺も聞きに行く」
と告げた。
「掃除も洗濯も下ごしらえも終わってるから大丈夫」
真理は頷いて
「悪いな、急かせて」
と携帯を切って運転をしている梓を見た。
「正義のところへ寄ってくれる?」
梓は頷いて
「了解」
と答え
「向日葵さんの守り人の一人に抜擢か」
と呟いた。
真理は頷いて
「まあね」
向日葵さん好きだし
「あの人にも頼まれているからな」
と告げた。
「残念ながら俺が探偵したとしても並みだからなぁ」
梓は苦笑しつつ
「真理くんは並じゃないさ」
と言い
「けど掛け合わせることで乗になる関係はある」
彼はそう言う意味では真理くんと合っているのかもしれないな
と告げた。
正義は5分程で到着した二人と合流すると鈴本珠美に会いに向かった。
その車中で
「あのさ、昨日貰ったリストも見せてもらえる?」
と聞いた。
真理は頷いて鞄から出した。
「犯人が彼女でなかった場合はこのリストの中にいると?」
正義は頷いて
「まあ、示談しているし……今さら特別な何かが無い限りは復讐とかしないだろうし」
と言い
「あの脅迫状も気になるし」
と告げた。
真理はそれに
「何で?」
と聞き返した。
正義は唸りながら
「なーんかチグハグな気がして」
と告げた。
真理も考えながら
「確かに示談して5年も経ちながら行き成りその話を公表しないと復讐するって内容だからなぁ」
と告げた。
「だったら5年前に公表しろって言っとけばいいって話だよな」
正義は頷いて
「そうなんだよね」
それに何かが引っ掛かっているんだよね
と呟いた。
真理は「何が?」と聞いた。
「別に他に変なところはない気がするけど」
2人が示談もしなくて本当に全てを覆い隠して被害者の人を病死とかにしていたらああいう文でもおかしくはないよな
「その時はきっと疾しくて二人とも口を噤んでいたかもしれないから鈴本さんって割り出すのも大変だったかもしれないけどな」
正義はハッとすると
「それだ!」
と告げた。
「そうなんだよね」
あの脅迫状ってもう自分が犯人ですって言っているようなものだよね?
「例えば真理の言った状態だったとしても二人が今みたいに車で襲われて命の危険を本当に感じたら言うと思うんだ」
そうするともう彼女かその関連の人だって思って捜査するよね
「つまり犯人は自分ですって言っているようなものだと思うんだ」
真理は腕を組み
「確かにそうだよな」
一番に疑われるよな
と答えた。
正義は彼を見ると
「もし復讐なら態々あんな内容の脅迫状を送らないで復讐すると思うんだ」
それに公にしてほしかったら5年前に二人とも認めていたんだから
「公にするように言えばよかったんだ」
と告げた。
真理は頷いて
「確かに」
と告げた。
正義は前を見つめ
「犯人の目的は全く違うところにあるんじゃないかな?」
それに5年前の事件を利用したのは
「示談が済んでいると思わなかったかも」
と呟いた。
梓はふっと笑みを浮かべ
「なるほどな」
と心で呟きながら、車を止めると
「ここが鈴本珠美の今住んでいるアパートだ」
と告げた。
正義と真理は降り立ちちょうど子供を連れて出てきた彼女を見た。
子供は10歳くらいの少女であった。
真理は一歩前に進むと階段を降りてきた鈴本珠美に
「あの鈴本珠美さんですか?」
と聞いた。
彼女は戸惑いながら
「ええ、貴方は?」
と聞いた。
真理は名刺を出すと
「実は西塔病院の院長と副院長から依頼を受けた探偵なんですが昨夜院長が車に跳ねられて」
と告げた。
彼女は驚いて
「え! ? 西塔さんがですか?」
と聞いて
「お怪我とかされたのですか?」
と問いかけた。
正義は頷いて
「足を怪我されて」
それで
「昨夜どうされていました?」
と聞いた。
珠美は「は?」と驚き
「娘と家に」
と返した。
「パートで近くの弁当屋で働いているので8時までは弁当屋にいましたけど」
それ以降は家で
真理は「なるほど」と
「その弁当屋はどちらに」
と聞いた。
彼女は指をさして
「あの角を曲がったところポカポカという弁当屋です」
と言い
「そのどうして……行き成り私のところへ?」
と聞いた。
正義は「実は」と言うと
「事故の前に脅迫状が届いていて」
その内容が5年前の貴方の旦那さんの医療ミスを公表しろと言う内容だったんです
と告げた。
珠美は驚いて
「ま、さか」
私はそんなこと知りませんし
「私はもう西塔さんを許しています」
と告げた。
「確かに当初は許せませんでしたがお二人とも手術ミスをした医師と看護婦の方と共に謝罪し慰謝料も払っていただきました」
手術を担当した医師の方は辞めたとお聞きしましたし
「それ以上を望んではいません」
娘にもそんな気持ちで生きて行って欲しくないですし
正義は頷くと
「わかりました」
ご気分を害させてすみません
「そう言う手紙が来た以上は一応お話を思ったので」
と答えた。
珠美は首を振り
「いえ、あの……これから娘の学校へ行くので」
と告げた。
正義は微笑んで
「いってらっしゃい」
足を止めてすみません
と謝った。
真理も子供に手を振り
「じゃあねぇ~」
と声をかけた。
そして、二人は歩いて弁当屋ポカポカへ行くと彼女のアリバイを確認した。
何時もは6時までだがその日は団体注文が入ったので8時まで残業をしていたということであった。
正義と真理はそれを聞いて車に戻り病院へと向かった。
真理は腕を組むと
「車に引かれたのが7時だって話だから彼女は白だな」
と告げた。
正義は頷いて
「ということはセオリーに戻って考えた方が良いよね」
と告げた。
真理は正義を見ると
「セオリー?」
と聞いた。
正義は頷いて
「5年前のことを知っていて……二人が死ぬと得をする人。もしくは二人にいなくなって欲しい人」
と答えた。
2人はリストを見た。
6人ほどである。
手術を担当した医師は東京を離れて仙台で仕事をしているということが警察の方での調べで分かっている。
残り5人のうちその手術で助手をした看護婦2人と医療費や慰謝料で関わった事務の女性と経理の男性であった。
真理はフムッと声を零した。
正義も同じように顔をしかめた。
「彼らはみんな示談が済んだと知っているよね」
特に事務の女性と経理の男性はその手続きをしているんだし
「看護婦も謝りに行ったし」
しかもお得になる人がいない
梓は運転をしながら
「だが、その5人には事情聴取をするつもりだ」
と答えた。
「それこそセオリーだ」
正義は頷いて
「ですね」
と言い
「あそこって家族経営ですよね」
と聞いた。
真理は頷いて
「ああ、元々は二人の父親が作った病院で今は兄が院長で弟が副院長をしている」
まさに家族経営だな
「だが病院の評判はそれほど悪くないし院内でももめ事はないみたいだぜ」
と告げた。
正義は少し考えて
「そうなんだ……でも今回事故にあったのはお兄さんの雅夫さんだった」
と言い
「弟さんの忠夫さんとは仲が良い感じはするけど……お兄さんが事故死してたら弟さんが院長で病院を一気に掌握できるよね」
と呟いた。
真理は腕を組むと
「けど、弟こそ示談しているって知っているから何れ彼女じゃないって分かることが見えているしその時に一番に疑われるの分かっているだろ?」
と告げた。
梓は病院の駐車場に車を入れると
「昨日のアリバイも聞くか」
今病院にいるのだからな
と告げた。
2人は頷いて降り立つと梓について病院の中へと入った。
既に武が聞き込みを始めており三人を見ると
「鈴本珠美の方はどうだった?」
と聞いた。
それに梓は頷いて
「彼女のアリバイはありました」
昨日は団体の注文が入って残業していたらしく職場に8時まで居たと同僚から聴取が済んでいます
と答えた。
それに武は息を吐き出し
「そうか」
こっちもリストの5人に話を聞いたが全員が同僚から勤務をしていたと証言が取れている
「後、医師の方も仙台警察署からアリバイが取れたと報告を受けた」
と肩を軽く動かした。
正義はそれに
「あの弟さんの方は?」
と聞いた。
武はそれに
「ああ、弟の方は病院の帰りに食事を済ませないといけなかったらしく行きつけのレストランの従業員からアリバイの証言を取れている」
白だった
「まあ、病院関係者は一応全員当たったが怪しい人間はいなかったな」
と告げた。
真理は腕を組むと
「全員白か」
と告げた。
武は頷いた。
「奥さんの方は事故の連絡を受けて飛んできて……夫婦仲は悪くないみたいだな」
昨夜の料理を弁当にして持ってきてずっと看病している
正義は目を見開くと
「あの、弟さんはいつも外食なんですか?」
と聞いた。
武は「いや、そこまでは聞いていないが」と言い
「話では昨日は奥さんに外食をしてきて欲しいと言われたそうだ」
と告げた。
真理はハッとすると正義の顔を見た。
「まさか」
正義は頷いて
「うん、奥さんのアリバイも確認した方が良いかなぁって」
と告げた。
武と梓は「5年前の件には関係していないと思うし病院には勤めていないが」と告げた。
正義はそれに
「でも奥さんなので5年前の話は恐らく聞いていると思います」
それに今回院長の命が狙われました
「本来ならレストランに寄り道をしている副院長の方が狙いやすいのに」
だから……もしも
「もともと院長の命を狙っていたとしたら」
得をするのは副院長とその奥さんですよね?
と告げた。
「アリバイを調べても損はないと思います」
武と梓は顔を見合わせた。
弟の忠夫の妻の小百合にはアリバイが無く周辺を調べると彼女が夫に黙ってやっていた株で大損をして金が要りようだったことが分かったのである。
そして、彼女が乗っている車がその夜に修理に出されたことを調べ車で襲ったことが判明したのである。
彼女は常から夫が副院長であることに不満を持っており、兄がいなくなると病院を手に入れられ借金を返せると思ったと自供し全てを認めたのである。
正義はそれを真理から聞き
「そうなんだ」
弟さんとお兄さんは仲が良かったみたいだけど
「きっと株の失敗が彼女を余計駆り立てたのかもしれないね」
と告げた。
真理は息を吐き出し
「けど、自業自得だけどな」
と告げた。
正義は頷き
「そうだね」
彼女もどこかで踏みとどまれたら良かったのに
と呟いた。
真理は微笑み
「正義は優しいな」
と告げた。
正義はそれに
「どちらが優しいのか分からないよ」
と答えた。
真理は厳しい。
けれど、甘く優しい言葉だけではダメなのだと正義は彼を見て感じることがある。
正義は笑むと
「真理、ありがとう」
と言い、携帯を切った。
「俺だけじゃダメなんだよね」
真理と出会えてよかった
真理もまた同じことを考えていた。
「俺だけじゃ……きっと相手を追い詰めたり、より悪い方に追い立ててしまうことになるかもしれない」
きっと正義のああいうところが必要なんだろうな
……一緒に進んでいくからな……
その一つの山……大学の二次試験が一か月後に迫っていたのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




