かて
俺は今、電車に揺られ窓を眺めている。
別にどこも目的地にしていない。
着いた先で、なにかしようという訳でもない。
バイトはしているものの、あまりシフトを入れないな ためもちろん暇は沢山ある、その暇を埋めるためのなんの意味もない行動。
昔から絵を描くことと花を見ることが好きだった。
将来的には絵で食えたらいいな、と思っていた。
だが現実はそう上手くいかない。
学生時代の絵のコンクールはいつも かてない。
同級生には自分の描いた絵を馬鹿にされる。
去年書いたとある花の絵は、これは全然良い絵ではないと批判される。
好きなことは金にならないまま時計の針だけが未来へ向かって回る。
作品なんてこの世にひとつも大きく出回っていない、つまり今年三十六となる俺自身に未だに生きた痕跡というものは残っていない。
この電車に乗ってどこかへ意味もなく出かける行為も、そんな現実からの逃避行の一部に過ぎないのかもしれない。
外れた天気予報、晴れだと思ったいたのに空からは重く冷たい雨が降っている。
通り過ぎる風景の中の木々たちだけは、色鮮やかな緑を纏っていた。
それでも俺は、この時期特有の暑苦しい青すぎる天井よりは、暗雲の下で雨に打たれる方がマシだと思った。
駅で降りた俺は、屋根付きの喫煙所でタバコに火をつけた。
紫の煙が空へ向かって泳いでいく。
数十分後、雨雲の隙間からは日光が差し込み、地上へ向かって光の線が引かれていた。
雨が降っていることもあり蒸し暑く、最悪なタイミングで外に出てしまったと後悔した。
ふと、水溜まりに反射する自分の顔を見た。
なぜ見たのか分からない、いつも通りの自分自身の顔。
だが、時に風に吹かれ水面が揺れたタイミングで化け物のように顔が歪む。
当たり前だが。
さっきも言った通り、俺が花が好きだ。
今はその季節ごとに咲く花を見る為だけに生きてると言っても過言では無い。
春は桜だとか、夏は向日葵だとか、秋は彼岸花だとか、冬はシクラメンだとか。
綺麗な花たちだけは、自分に生きる糧をくれているような気がした。
だから俺は思う。いつか死ぬ運命なら、なにかの花の糧になれたらいいな と。




