世界は静かに動き出す(2)
「星………が………………」
「……」
ベッドに寝かされたまま、もはや動かぬ身体。息をするのもやっとの老体が、まるで今わの際のように言葉を紡ぐ。
中央に老体用のベッドがあるだけの、殺風景な部屋。後はロウソクの火が揺れているだけの、寂しい部屋に、頼りない音がした。
黒い星が、近づいておる………
常人ならやっとのこと聞き取れるかどうかという、か細い掠れた声での、そんな台詞。
老体の発するかすれた声は、呼吸音と聞き間違えそうなほどか細いもの。
しかし、これを聞き取る者もまた、老体との付き合いが長かった。聞き間違いなどはない。
「おい、オヤジ。最期に何か言うことはあるか」
老体に寄り添うは、中年の男性だ。全身傷だらけ、見る者を威圧するような表情が常であるような風貌で、筋骨隆々の男。
見た目にも歴戦の猛者であるのが疑いようのない彼は、しかし今はどこか沈んだように、殺風景な部屋の中央にあるベッドに背中を丸めて寄り添っていた。
ムジークよ………我が息子よ………
「………」
ムジークと呼ばれた男―――今では百人を超える大規模傭兵団のカシラとも言われる大の男が、今だけは神妙な表情を浮かべていた。
「何だよ、オヤジよ」
ムジークが問う。
ここを………………去れ
「……!」
それは、星が大きく動き始めたことを示していた。




