38:一瞬見せた口元の笑み
アクラシエルと二人、学校につくと、クラスメイトはみんな驚いている。
髪を切ったアクラシエルを見て。
同級生からすれば、アクラシエルは、十分に美少年として通用している。
授業が始まる直前まで、アクラシエルは女子の天使達に囲まれていた。
チャイムが鳴り、上級天使の教師が入ってくると、思いがけない発表がなされた。
「これは大天使ウリエル様のご厚意により、実現することになりました。『大天使の宮殿への宮仕え』の『役割』の実習が、できることになりました。実習は二日間に分け、行うことになります。明日、実習に行くのは、名前順の前半十五名、週明けに後半十五名となります。どんな『役割』を担うかは、当日発表されます。
どの『役割』をふられても、対応できるよう、今日は帰宅した後、復習をよくしてくださいね。もちろん当日は、ウリエル様の宮殿で『役割』についている上級天使の皆さんが、サポートしてくださいます。ですので無理はせず、分からないところは先輩に聞く。でも先輩には甘え過ぎない。この心がけを忘れずに、頑張るようにしましょう」
生徒たちは一斉に「はーい」と返事をする。
でも私は……。
あの日のことを思い出していた。
そう、古の悪魔の魔力を清め、気絶し、天界救急本部に運ばれた日のことを。
ウリエルから「神官」になることを勧められたが、それを断り、代わりに私はこうアピールした。
――「私はもみほぐしが得意で、香油についても今、勉強しているところです。大天使の皆さんの希望に合わせた香油をブレンドし、入浴後、その香油を使って、疲れた体をもみほぐすこともできます。ですから私の希望は、入浴の手伝いの『役割』です」
私の言葉を聞いたウリエルは、口元に一瞬フッと笑みを漏らしていた。
でも、すぐに「なるほど。入浴の手伝いか。せっかくの癒しの力を活用しないのは勿体ないことだ」と言って、部屋を出て行ってしまった。
だから。
せっかくのアドバイスを無視する私とアクラシエルに、興味を無くしたと思っていたのだが……。
あの一瞬見せた口元の笑み。
もしやあの時、この実習を思いついたのでは……?
でも、いや、まさか。
それは考え過ぎだろう。
第一そこまでする必要なんてないはずだ。
もし私をからかうにしても、手が込み過ぎている。
私はこのゲームの世界において、悪役令嬢という立ち位置に過ぎない。ヒロインはソフィア。ソフィアのためにならこんなイベントも存在するだろうが、悪役令嬢という立場のアリエルに、こんな大掛かりなイベントが用意されるはずがない。
そうだとしても。
そしてもはや大天使の宮殿で入浴の手伝いの『役割』を担いたい、という気持ちが失われつつあったとしても、あんなアピールをしてしまったのだ。もしこの実習で、入浴の手伝いの『役割』を実習で担うなら、完璧にこなさなければならない……。
私は授業が終わると、街へ向かうことにした。
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次回更新タイトルは「親友だろう、僕達!」です。
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