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銀世界の執行者  作者: 亀丸
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秘密を抱える男

 


  朝だ。雹華に起こされた竜武は顔を洗うために、洗面所に向かった。


  最近寝覚めが悪く、起きると変な虚脱感に襲われる。そんな嫌な気分を取り払うために冷水で顔を洗った。


  濡れた顔をタオルで拭き、鏡を見た竜武は自分の額にに浮かぶ模様を見つけて溜め息を吐いた。


  「はぁ...、またか。この頃多いな…。」


  最近の寝覚めの悪さはこれが原因だろうと、薄々気づいている。


  鏡を見つめた彼の額の左上には、蒼く光る氷の結晶のような紋様が浮かび上がっていた。



「お前たちに非公式の部隊として活動して欲しい。」



 朝食を食べながら、竜武は昨日晃たちに言われたことを思い出していた。



 〜晃の、この突然の発言に竜武たちは驚きを隠せなかった。


「急にどうしたんだよ?親父らしくないぜ?」


 竜武は、晃の発言の意図を確かめようと思い問いかけた。


「今日のお前らの手合わせを見て、そろそろ話してもいいかと思ってな。」


「はぁ?」


「最近、この区域でも面倒な連中が増えてきてる関係で、大人しくさせるために動かなきゃ行けなくなってよ。」


「でも、私たち忙しいじゃない?留守の間に騒動が起きるのは困るから、それを防ぐために動けるメンツを揃えようって事になったの。」


 晃や霧音が言っていることは分かった。だが、竜武にはひとつ引っ掛ることがあった。


「それだったら、香苗ちゃんとかに頼めばいいじゃねえか。」


 香苗ちゃんとは、竜武たちのクラスの担任であり、優秀な魔闘士である。混住区域であるため、学校内に数人の魔闘士や霊術士を置くことが定められている。


 竜武たちの担任もその内の一人なのだ。


「いや、無理だな。俺らは確かに同じ国家魔闘士だ。俺たちは基本、個人の意思か依頼で動く。俺らが違うのは管轄してる任務内容さ。俺らの任務は主に犯罪組織そのものの殲滅やテロ対策だが、向こうは魔導犯罪者の取り締まりとかなんだよ。要は警察みたいなもんだ。」


 管轄が違うため頼み込むのが面倒らしい。


「てことは、俺らに組織の監視でもさせようってのか?」


「まあ、そういう事ね。可能なら潰して欲しいんだけど。」


「今すぐじゃなくてもいいんだけど、考えておいて貰えるとありがたいよ。」〜




  決定は保留になったため、昨日はそのまま解散になった。


 だが、竜武には晃の話よりも気掛かりなものがあった。


  それは話を聞き終えて嘉弥斗たちが帰るのを見送るため玄関に行ったときに、霧音が何気なく発した呟きだった。


 《全員じゃないけど、まだ何か隠してる子がいる…これは先が楽しみになるわね。》



  霧音の呟きは、ほとんど聞こえない大きさだったのだが、真横にいた竜武だけは聞き取ることが出来た。


  霧音は竜武に起きた異変とその能力に気がついているのだろうか。というか、自分から言いたくないので気づいて欲しい。


  瞑目してそんなことを考えていたが、いくら考えても埒が明かないため、竜武は閉じていた目を開けた。


  すると、心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる雹華の顔が視界に飛び込んできた。


「...どうした?人の顔を覗き込んで...。」


「さっきから食事がなんにも進んでないし、具合でも悪いのかと思って。」


「いや、別に何ともない。ちょっと考え事してただけだ。」


「あっそ。ならいいけど...早く食べてね。そろそろ出ないと遅れるから。」


 何も心配することはないと分かると、雹華は自分のカバンを取りに部屋へと戻っていった。ついでにまだ寝ている大人二人を起こしに行ったようだ。



 自分の支度を終え、いつものように玄関で待っていた、雹華と一緒に家を出た。


「行ってきます。」


「行ってらっしゃ〜い。気をつけてね〜。」


 寝起きで眠そうな顔をした霧音が階段を降りてきていた。



「なあ。昨日のやつどう思う?」


 昼になり教室中がそれぞれ自由に行動し始めた頃、竜武の席に集まっていた5人は昨日の件について話し合っていた。


「そうだね...一応の部隊で基本は単独行動でも良いってことだったから、私は受けるのもありだと思うんだけど。」


「ローブ受け取っちゃったしな。...まあ、押し付けられたって感じが強いけど。」

 

 霧音は、帰り際に全員にローブを持たせていた。もちろん竜武の部屋にもあり、今はたんすの中に押し込まれている。


「私も受けていいと思う。」


「じゃあ、受けるってことでいいのか?」


 全員から了承を得たことで、部隊を組むことが決まった。


「あのー、お話し中申し訳ないんだけど、真涼ちゃん借りてもいいかな?部活の話が...」


  声を掛けてきたのは、クラスメートの1人の女子だった。真涼はそれについていったため、流れで解散になった。


「おい、冬宮竜武。」


「ああ、香苗ちゃんか...ふべっ!?」


「何度言ったらわかるんだ。いくら付き合いが長いとはいえ、目上への最低限の敬意を忘れるなと伝えているはずだが?」


「俺が悪かったけどよ!?魔力付与したファイルで人の顔を叩くなよ!」


 顔面を鉄板で殴られたような痛みに、竜武は顔を顰め赤くなった鼻をさすっていた。


「まあいい。...放課後に私の教員室に来い。」


 竜武の訴えを聞き流した香苗は、自分の伝えたかったことだけ伝えて去っていった。




「ったく...、扱いがひでぇ。」


 去っていった担任の自分に対する扱いを思い返し、竜武は嘆いた。


「相変わらずだね…。それで、香苗せんせはなんの話するつもりなんだろ?」


「ああー…。それは多分...」


「あっ、やば!お昼まだだったから講堂行ってくるね。」


「.....そうか。」


「ん?どうしたの?」


「いや、なんでもない...。」


「あそ。じゃ、また後で。」


 香苗が話すつもりの内容は多分部隊のこと。あとは竜武自身の異変についてだと伝えようとしたが、そのタイミングを逃した竜武は、そのまま講堂へとかけていく雹華の後ろ姿を見送った。


 ...若干の寂しさと憂いを帯びた目で。





「失礼します。冬宮です。」


「入れ。ついでに隣にいる女も一緒にな。」


(〜っ。気配消してたのに、なんで!?)


(諦めろ。そういう人だろ。)


(ぅぅぅぅ。納得いかない〜!)


「コソコソ喋ってないで中に入れ。」


「...はいはい。」


 掛けられる声が若干イラつきを含み始めたところで、竜武たちは大人しく教官室に入った。


「話ってのはあれだ。部隊のこととお前の体の異変についてだ。」


「分かってたよ。」


「え?竜武は体がおかしくなってるんですか?」


「ああ。端的に言えば後天性の突然変異だな。」


「.......。やっぱりか。」



「なっ.....!そんな...馬鹿な.....!?」


 こうして、伝えられていなかった事実が雹華に知られることになった。






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