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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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魔法の才能

「平民の女を身ごもらせたとはどういうことですの!?」


「す、すまん。つい出来心で……」


ダモン・タッカー公爵は、妻のマリアンヌに頭を下げた。

公爵ともなれば側室を持つのも自由なはずだが、その妻は王家の公女である。

身分が高いうえに嫉妬深いマリアンヌに、ダモン公爵は頭が上がらなかった。


「離れに住まわせるくらいなら許しましょう。身ごもらせておいて放り出したとあれば外聞が悪い。ですが、家族とは認めません」


「う、うむ。それで十分だ。私もそのつもりだった」


「そのつもりとはどういうことですか!?王家の公女たる私というものがありながら他の女に手を出すとは!あなたは王家を蔑ろにしたのですよ!」


「そ、そんなつもりはないんだ、すまなかった、もうしない」


「当たり前です!今度やったらお父様に言いつけますからね!」


このようにして公爵が身ごもらせた女、エリーは公爵家の離れに住むことになった。

そしてひっそりと女の子を産み、ミラと名付けた。


公爵家の者が離れを訪れることはなかったが、暮らしていくのに十分な金額は支給された。

公爵家の召使が時折顔を出し、要望などを聞いてくれる。


だがエリーは多くを望まなかった。

ミラと二人で暮らしていければそれでよかった。


母は娘を愛し、娘は母を慕う。

ミラの誕生日には、ささやかなお菓子を作った。

ミラは、母との暮らしを幸せに感じていた。


しかし、ミラが5歳の時に悲劇が訪れる。

エリーが病に臥せった。病状はどんどん悪くなっていく。


「ママ!死んじゃやだ!ママってば!一人にしないでぇ!」


平民のエリーに十分な医療が施されたとは言い難い。だが、十分な医療を施していれば助かったとも言い切れない。

5歳のミラは、ただ悲しむことしかできなかった。そして、エリーは天に召された。


***


「あの平民の子をどうするつもりですの?」


マリアンヌが公爵に尋ねる。


「5歳の子を離れに1人で置いておくわけにもいかんだろう。それに私の血を引いていることは確かなんだ。いつまでもいない者として扱うわけにもいかん」


「あんな下賤な者を社交界にでも出すおつもりですの?家族とは認めないと言ったはずです」


「まあ、何かの役に立つかもしれないから」


このようにして、ミラは屋敷で暮らすことになった。

ダモン公爵には、10歳になる男の子のリカルドと8歳の女の子のローズという2人の子供がいた。


まだ母の死の悲しみを乗り越えられていないミラだったが、一生懸命笑顔を作って挨拶をした。


「ミラと申します。よろしくお願いいたします。お兄さま……」


そう言った時、それを遮るように鋭い言葉が向けられた。


「兄なんて呼ぶな、庶民のくせに!」

「そうよ!あんたなんか妹とは認めないわ!」


リカルドとローズは、ミラを見下しながら言った。

そして、二人はミラを置いて出て行ってしまった。


今まで向けられたことのない初めての悪意に、ミラは呆然とした。

そこにダモン公爵とマリアンヌが現れる。


「お父様……」


「あなたは家族ではありません!」


ぴしゃりとマリアンヌが言う。


「平民の娘が、私たちをそのように呼ぶことは許しません。屋敷に住まわせてあげるだけでありがたく思いなさい」


ミラが呆然と父親を見上げるが、目を背けて知らん顔をしている。

そばに控えていた召使が、ミラを部屋まで連れて行った。

顔合わせはこれで終わったのだ。


ミラは、離れとは比べ物にならないほど大きく豪華な部屋に案内された。

だが、そこには離れにあった温かさが欠片もなかった。

冷たい部屋で、ミラは一人泣いた。


次の日の朝、ミラは食事に呼ばれた。

並べられたナイフやフォークやスプーン、そして冷たい陶器の皿。


ミラの母エリーは、割って怪我をしないようにと木製の食器を使っていた。

温かみのある母との食事とは、何もかもが違っていた。


ミラは見様見真似で食べる前のお祈りをし、食事に手を付ける。

だが、何も知らない5歳の子供がうまく食器を扱えるはずもない。


音を立てると「うるさい!」と怒鳴られ、食べ物をこぼすと「みっともない!」と罵られる。

マリアンヌは、ミラの粗相を見つける度に怒声を上げた。

そして、リカルドとローズはそれを見てニヤニヤしている。

ダモン公爵は、知らん顔だ。


ミラは、母の優しさを思い出して涙をこぼす。

すると、マリアンヌが近づいてきてミラの頬をひっぱたいた。


「辛気臭い顔を見せるんじゃないよ!」


ミラにとって地獄のような食事の時間が過ぎていった。


その地獄は、食事の度に繰り返された。

いじめを楽しんでいるかのように、食事には必ず同席させられた。

優しい言葉をかけることも、食べ方を教えることも一切ない。


そんなミラを可愛そうに思う召使もいたが、ミラに優しくするとマリアンヌの不興を買ってしまうので何もできなかった。

ミラは笑うこともなくなり、身体は痩せていった。


***


ミラが6歳になったある日、タッカー公爵家にアルベルトという名の年老いた魔法使いが訪れた。

現在、ダモン・タッカー公爵が仕えているラディアート王国は、隣国のロベリア王国と戦っている。

その戦いにおいて、魔法を使える者は大きな戦力となるのだ。


だから、時々老練な魔法使いがその才能を持った者がいないかを見て回っている。

ただ、魔法を使える者は1000人に1人いるかどうかという割合でしか出てこない。

その分魔法使いは大きな功績を上げやすいため、それを輩出した家は重用されやすかった。


そのため、リカルドやローズと一緒にミラもアルベルトの前に立たされた。

大人になってから才能が開花したり、修練によって会得したりすることもあるため、ダモン公爵も魔法使いに見てもらう。

だが、公爵もリカルドもローズも魔法の素養が見られなかった。


けれど、ミラの前に来てアルベルトは目を見張った。


「この子には、魔法の才能がある」



新作を開始しました。4話目から幸せになっていきますのでご期待ください。

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