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悪魔と天使の記憶

この作品は、執筆中の映画の脚本を小説にしたものです。

尚、少々、過激な描写がありますので、ご注意ください。

ご感想等を頂ければ幸いです。

魔法の鏡の中のケイと私。

「これどうしたの?」

ケイが私の背中を見て言った。

背中には何本ものみみずばれしたムチの跡があった。

「ムチの跡」

「ムチって?」

ケイにとってはこれは異世界のこと。知らなくていいこと。

「これは?」

「やけどの跡」

「やけど? どうしたの?」

「ローソク 垂らされた」

「どうして?」

ケイは不思議そうな顔をして鏡の中の私を見つめた。

「痛い?」

「うううん」

悪魔の仕事は、神にそむいた罪。

それを天使に言うことは出来なかった。

「これも やけど?」

ケイは私の首筋を見て言った。

そこには、1円玉ほどの丸いやけどの跡があった。

中学1年の時、空腹に我慢できなくなった私は近所のスーパーで菓子パンを万引きして初めて警察に捕まった。

これは、その時、母親から受けた罰の跡。彼女が怒り狂って私の首筋に火がついたタバコを押し付けた火傷の跡だった。


「ケイも これどうしたの?」

ケイの右の肩にも細い傷跡があった。

ケイは、うつむいた。

「ゴメン」

「うううん いいの」 

「ゴメン」

「これ カッターで切った跡」

「自分で?」

ケイは、また、うつむいた。

「ゴメン」

よく見たら、ケイの身体も傷だらけだった。

腕、肩、胸、背中、尻、足に、無数の小さな傷跡があった。

「痛い?」

「うううん」

鏡の中には傷だらけの悪魔と天使の裸体が映っていた。


天井の大きな魔法の鏡の中に、赤い丸い大きなベットの上で仲良く並んで仰向けに寝ている私とケイの裸体が映っていた。

「いくつ?」

長い黒髪、薄いメイク。幼い胸の膨らみ。小さなお尻。私はケイは年下だと思っていた。

「いくつって?」

「年」

「22」

確か、私も22のはず。

魔女の姿をした悪魔は年齢不詳がミステリアス。

時には年齢よりも若く、また、時には年上に、変幻自在の変身が魔女の仕事。

本当の自分の年なんか、もう忘れていた。

「えっ! じゃあ 多分 同い年だ」

「えっ!? そうなの?」

「私達 双子かな?」

「そうかもね」

私達は、母親が違う双子。

「ごめんね」

「えっ?」

「お葬式」

「全然」

気にしてくれたたんだ。嬉しかった。

「実は お通夜も お葬式も 私 一人だけだったんだ」

「えっ?」

「あの人 一匹オオカミだったから 人気なかったみたい」

今まで、私は、どんなに環境を変えても一匹オオカミだった。

どうやら、これは遺伝のようだった。

「別に来てもらってもよかったんだけど 恥ずかしくって」

「そうなんだ」

「あの お別れの会はね 本当は エルを呼ぶ為だったんだ」

「えっ!?」

「エルに 会いたかったから きっと 来てくれると信じていた」

鏡の中で私を見つめるケイの瞳の奥は寂しそうだった。

思わず、私はケイの上に重なった。

ケイは無抵抗だった。

ケイの柔らかい小さな胸の膨らみと生温かい吐息を感じながら、ゆっくりと顔を近づいて行った。

ケイの濡れたピンクの唇。

「口 似てるかな」

それは、まるでこの汚れた世界の言葉を知らないのない赤ちゃんのような唇だった。

「キス しようか?」

ケイは、優しく私を見つめ返していた。

「まさか キスしたこと ないの?」

ケイは、ゆっくりと瞳を閉じた。

その瞬間、どこからかセミが鳴いた。


突然、私の頭の中にある記憶が蘇った。

セミの声。

夏の強い陽の光の緑の木漏れ日が、窓一杯に広がった部屋。

かすかに響くピアノの音。

「セミ 夏 森 ピアノ」

「うん その記憶 私もある」

「なんだろう?」

「うん」

私達は、暗い湖底に沈み込んだ記憶に手を伸ばそうとしていた。









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