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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆92◆

 翌朝、寮の食堂に集まった門下生達は、改めてセンガ老人の存在の大きさを思い知らされていた。


「あのじいさんがいないと、何か調子狂うぜ」

「もう、寮の一部と化してたからなあ」

「例えて言うなら、そうだな。今、この寮は、犬のいなくなった犬小屋みたいな感じだ」


 ワシャ犬か。しかも外飼いとは、お前らも薄情じゃのう。


 そんな風にやり返してくれる陽気な老人はもういない。


「今までだって何日か留守にして、寮にいなかった事はあったが、何か違うな」

「分かる。もう、遺体を見ちまったからだろう」

「生きてる内は、散々死をネタにしてからかってたんだがなあ、いざ死なれると、何も言えねえや」


 それ以前に、死をネタにするんじゃない。不謹慎じゃぞ、この罰当たりどもが。


 そんな風にやり返してくれる気丈な老人はもういない。


 センガを門下生達が取り巻いて、賑やかに始まる朝の光景は、もう二度と見られない。


 朝がこの有様なら、晩はもっと食堂の雰囲気は一変している事だろう。


 晩酌をしつつ陽気に管を巻く老人は、もういないのだから。


 そんな事を考えながら、門下生達は浮かない顔のまま朝食を済ませた。

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