↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/634

◆64◆

 ギィ青年の構えが変わった。


 何かを押し止めるとも掴むともとれる様な形で、両手を軽く前に出し、膝を軽く曲げ、両足を少し前後に開いて立っている。


 リコルドが軽く跳ねながらギィの回りを動く度に、ギィは機械仕掛けの人形の様に、上体を崩さず相手の方に向きを変えていく。


 リコルドが相手の顔面めがけて放つ右の拳を、ギィはしゃがんでかわすと同時に、相手の左足首を内側から蹴った。


 派手に引っくり返るリコルド。ギィは深追いせず、立ち上がって、少し離れた所で構え直す。


 リコルドはすぐに起き上がり、拳を構えてギィに近付いて行く。ギィは構えたまま微動だにしない。


 再び右の拳を放つ、と見せかけて、右の回し蹴りを放つリコルド。ギィは素早く前に踏み込んで、その蹴り足の膝から先を両手で受け止めて外側へ捻り、リコルドを床に勢い良く転がした。


 ここでもギィは深追いせず、リコルドが忌々しそうに立ちあがるのを、少し離れた所から黙って眺めている。


「トドメを刺すまでもないってか。あぁ?」


 リコルドがそう言って拳を構えると、


「それを言うなら、さっきの打ち合いの時、リコルドさんだってトドメを刺しに来なかったでしょう」


 ギィが反論する。


「ああ、アレか。面白い趣向だったんで、つい遊んじまったからな。だが、最初に言ったろう。遠慮はいらねえ、と」


「では」


 そう言った次の瞬間、ギィが真っ向から飛び込んで来る。その顔面を狙って右の拳を放つリコルド。ギィはそれを左手で払い落とすと同時に、右の掌で相手のあごを強打する。

  

 よろめいて数歩後退したリコルドの上体に、さらに勢い良く肩からぶつかって行くギィ。


 仰向けに引っくり返るリコルドの上に跨って、右の拳を相手の顔面に素早く繰り出し、当てる直前でピタリと止めた。


「これでトドメです」

 

 ギィが淡々と言う。


「……参った」


 リコルドが無念さをこらえつつそう言うと、ギィはリコルドから離れ、敢えて手を貸そうとはせず、相手が自分で立ち上がるのを待った。


 再び、稽古場の真ん中に戻り、お互い一礼した後、


「七年間、俺達をよくも騙しやがったな。いつだったか、『元より皆さんの相手が出来るような腕ではないですから』、とか抜かしやがったろ?」


 リコルドがギィに不機嫌そうに言う。


「よく覚えてますね」


「その実、腹ん中じゃ、俺達の事を見下して笑ってたって訳か」


 ギィは少し困った顔になり、


「ああ言ったのは言葉の綾です。あの時、本当に思っていたのは、『皆さんの相手が出来るかどうか、それは実際にやってみないと分からない』、です。今の試合にしたって同じです」


 その返答に、リコルドは思わず吹き出した。


「この優等生が」


 二人が歩み寄って握手をすると、他の門下生達が拍手を贈った。


 と、その時、センガ老人がギィに声を掛ける。


「おーい、ギィ。試合の直後で悪いが、この熊、じゃなくてレットが、お前とどうしても勝負したいそうじゃ。連続で悪いが、相手をしてやってくれんかの?」


 センガの横で、場の空気を読まない熊が目を輝かせて待機していた。


 僕も戦いたいクマ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。