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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆43◆

 誘拐事件以来、憑き物が落ちた様に武芸修行に身が入らなくなったザントは、その代わりに、二週間に一度会いに来る息子リーガに、自分の稽古の時間を割き、手を取って熱心に武芸を教える様になる。


 殺伐とした道場の片隅で、親子が基礎的な型の練習に励んでいる様子は、見る者の心を和ませる癒しの光景となった。


「ミニチュアサイズの武芸者か」

「ちょこちょこ動いて、可愛いもんだ」

「ああいう小さい内から、武芸を仕込むのも面白そうだな」


 若い親子連れを見るにつけ、己の年齢と独り身の境遇を振り返ってナーバスになる門下生達も、武芸と言う自分達の領域にやって来た者に対しては、むしろ先輩として、かつて来た道を新参者が辿って来るのを、微笑ましく見守るだけの余裕があった。


 良く学ぶ者は良く教えたがる者になる。


 やがて、自分の稽古を放り出して、リーガにちょっかいを出す門下生が増えて来た。


「違う、そこはもっと腰を入れろ」

「引き手を利かせるんだ、こう」

「拳を飛ばすつもりでいけ」


 多人数から懇切丁寧過ぎる指導を受け、リーガの動作が少しずつ様になって来る。


 この小さな弟子が上達して行くにつれ、教えた甲斐があったと、我が事の様に嬉しく思い始める門下生達だった。


 その結果、ますます指導に身が入り、それに応える様にリーガも上達するという、好循環が生まれる。


「私は駄目でしたが、リーガは、将来名立たる武芸者になれるかも知れません。素質と才能があります」


 目を輝かせて力説するザントに対し、


「この親バカめ」


 センガ老人は、そう一喝して大笑いした。

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