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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所

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◆40◆

 対策本部のヴァルゴの情報によれば、廃山荘内の反政府派の残党達は、十八人が六人ずつ三つのグループに分かれる形態での、交替制勤務となっていた。


「道路の見張りにいたのが三人、ここで倒したのが九人、つまり、残り六人はどこかの部屋で寝ている筈だ」


 ヴォーンとザントが一つ一つ調べて行くと、薄暗い中、二段ベッドが二つ、その間の床に寝袋が二つ、計六人が泥の様に眠っている部屋があった。


「ザント、銃を構えていてくれ」


 ヴォーンは部屋の照明を点けた。


「ん……何だよ。まだ交替まで時間があるだろ?」

 

 一人が抗議しながら嫌々起き上がり、自分達に銃口が向けられているのに気付いて、驚愕の表情を浮かべる。


「全員起きろ。この山荘は既に我々が制圧した。騒いだり抵抗したりすれば撃つ」


 ヴォーンは六人の男達を起こし、ザントと二人で後から銃を突きつけながら、廃山荘の外に連行し、裏手に回ってコンテナの扉を開けさせ、


「全員この中に入れ。約三十分後に迎えに来る」


 六人がコンテナに入ると再び扉を閉めてロックし、ヴォーンとザントは、人質が監禁されていた部屋に戻った。人質になっていた親子に、


「もう大丈夫です。この山荘内の敵は全て制圧しました。もう三十分もすれば警察が来ますから、ここで待っていて下さい」


 そう言うと、次にザントに向き直り、


「ザント、もう山荘の中に動ける敵はいないが、念の為、この人達と一緒にいてくれ。私は残りの見張りを片付けて来る」


「一人で大丈夫ですか」


 ザントが心配そうに言うと、


「一人の方がやり易い」


 そう答えて、置いてあった段ボール箱の中から、適当に袋詰めのパンを三つ取り出し、それを持って部屋から出て行った。


 途中、玄関ホールの隅にある電話の受話器を取り、発信音がするのを確認してから、対策本部に電話を掛ける。


「ヴォーンだ。アジトの制圧は終わった。人質四人は全て無事。健康状態も良好。

「敵は重傷を負った者が九人。頭部の怪我が五人、腹部の怪我が四人だ。救急車を頼む。

「無傷で捕らえた敵は九人。六人は山荘裏のコンテナに監禁してある。残り三人は山荘から少し離れた路上で確保して待っている。すぐに来てくれ」


 そこで通話を切って、今度は道場に掛け、


「クリスか? ヴォーンだ。全て終わった。ザントは無事だ。警察の手続きで遅くなるかも知れないが、出来るだけ早く戻れる様にすると、ヴェレさんに伝えてくれ」


 受話器を戻し、三つのパンを持って廃山荘の外に出ると、既に夜は明けていた。


 ヴォーンは乗って来た車に再び乗り込んで、元来た道を引き返す。最初に見張りに出会った場所まで来ると、そこで車を降り、


「おーい。パンの差し入れだー。皆出て来ーい」


 と辺りに呼び掛けた。


 それに応じて、道の脇の茂みから、三人の見張りがわらわらと出て来る。


「ああ、ありがてえ」

「腹がペコペコだ」

「ここにいると、時間が経つのが遅くてしょうがねえ」


 各々、持っていた銃を車に立てかけ、ヴォーンからパンの入った袋を受け取り、すぐに開封してかぶりついた。ヴォーンは三人に向かって、


「皆、そのまま食べながら聞いて欲しいんだが」


「何だ?」


「この銃なんだが」


「何か問題があるのか?」


 ヴォーンは立てかけられた銃の一つを取り上げて、全体を良く確かめてから、銃口を三人の方に向け、


「全員動くな。山荘にいるお前達の仲間は全て制圧した。もうすぐ警察がここに来る。それまでここで待て」


 驚きの余り、見張り達は皆、凍りついた様に動作が固まる。


 それを見てヴォーンは一言付け加えた。


「パンはそのまま食べていていい」


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