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逃げ足道場 外伝 ~昔々、山奥の道場で~  作者: 真宵 駆
◆第一章◆ 仙人の眠る場所
2/634

◆1◆

「じいさん、着いたぞ。ここがランナウェイ村だ」


 長い山道を抜け、少し開けた集落に出た所で、運転手の男はトラックを停め、荷台の方を振り返って声を掛ける。


 そこには、積まれた木箱にもたれて、異国風の服を着た小柄な老人と細身の青年が座っていた。


 二人はそれぞれ自分の旅行鞄を掴み、そのまま、ひょい、と荷台から軽やかに飛び降りて、運転席の横に来る。


「ああ、ありがとよ。随分寄り道させてしまって、すまんかったな。これはお礼じゃ」


 そう言って老人が窓越しに差し出す十枚の高額紙幣を見て、運転手は困惑した表情で、


「こんなにいらねえよ。じいさん、旅は何かと入り用だろ。ガス代だけでいいから」


 老人は、渋る運転手の手に無理やり金を握らせて笑い、


「はっはっは、心配するな。こう見えてもワシは、百万人を超える弟子を持つ拳闘術の名門の出じゃ。路銀は十分ある」


 運転手は目の前に立つ小柄な老人を、頭のてっぺんから足の先まで見て、


「まあ、年取ると縮むって言うし。昔は強かったんだろうな。昔は。じゃ、その名門に敬意を表して、これはありがたくもらっとくけど、じいさん、見知らぬ奴に、自分が大金を持ってるなんて、うかつに言わない方がいいぜ。どんな悪い奴がいないとも限らないからさ」


「はっはっは。ここはそんなに治安が悪い村なのか」


「いや、村人は善良そのものだ。けど、気を付けるのに越した事はないってことだよ。ヴォーンの道場目当てに、よそから来てる様な、見るからに悪そうなのもいるし」


「ああ、道場までの道は、そいつらに聞くとしよう。ちょうどそれっぽいのが向こうにいる」


 見ると、体格が良いが、身なりのだらしない若者が、百メートル程先をぶらぶらと歩いている。


 老人と青年はトラックの運転手に重ねて礼を言うと、そちらの方へ軽い足取りで向かって行った。

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