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ヴォーン・スルーとクリス・セイヤーズの結婚式の前夜、センガ老人とギィ青年、それに選ばれた五人の門下生達は、その会場となるホテルに宿泊していた。
そこで、センガのスピーチの際の余興の試割りについて、最後の打ち合わせが行われている。
五人の門下生の内、試割りを行う役はレット。
「良いか、失敗しても慌てるな。一度目で割れなくとも、二度目、三度目で割れれば上出来じゃ。それでも割れない時は、ワシがフォローする。じゃから、思い切って行け」
残りの四人は、セッティングと後片付け役。
「結婚式はスムーズな進行がキモじゃ。式全体の流れの妨げにならぬ様に、素早く、じゃが落ち着いてやれ」
ギィ青年は、雑用兼連絡係。
「進行状況に気を付けて、会場にいるワシと、控室に待機しているこいつらとの連携を、うまく取り持ってくれ」
試割りの段取りは、以下の通りである。
センガのスピーチが始まったら、まず試割りを行うスペースにビニールシートを敷き、その上にブロックで土台を作り、レンガを間に挟みながら氷柱を積んで行く。
全部積み終わったら、割る役のレットがその前で待機し、センガ老人の合図と共に、一気に叩き割る。
割ったらすぐに氷柱とレンガとブロックを片付けて、今度はそこに小さなテーブルを置き、会場内からまだ開栓していないビール瓶を適当に選び、その上に立てる。
センガの合図でレットが瓶切りを行い、その中身を予め用意してある空の大ジョッキに注ぐ。
センガはそれを一気に飲み干し、「お二人の未来に幸あらん事を!」と祝いの言葉を述べて、スピーチを終了する。
使った物を手際良く片付け、周囲に瓶の破片が残ってないか、良くチェックしてから退場。
「ワシらはこの日の為に、ニ週間近く練習したんじゃ。大丈夫、段取りは完璧じゃ」
センガはそう言って、自信に満ちた笑顔を見せた。
そして、翌日。
センガ老人は、結婚式が始まって三十分もしない内に、ベロンベロンに酔っ払っていた。
段取りどころか、スピーチそのものを無事に出来るかどうかすら怪しい状態である。
それでも式は淀みなく進行し、もうすぐセンガのスピーチの順番が回って来る。
ギィ青年は、とりあえず控室にいる門下生達を呼び、会場の外で待機させた。
「じいさん、かなり酔ってるが大丈夫か? あれでちゃんとスピーチ出来るのか?」
会場内の様子を覗きながら、門下生の一人がギィに聞く。
「すみません、私が何とか段取りはフォローします。皆さんは予定通り、試割りを行って下さい。あの酔っ払い老人は、後できつく叱っておきますから」
五人の門下生は、悲愴な表情のギィに同情を禁じ得なかった。




