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フェイタル・ゲート  作者: 神城 奏翔
第一章 決意の書
14/15

Chapter13 ―生ける屍―



「こ、ここは……」


 ワープした先は薄暗い雰囲気を纏った狭い道の途中。

 片方の道は閉ざされ、もう片方へ向かう道しか開かれていない特殊な道。


「おそらくボス部屋前だろうな」


 アスカに敵の気配が感じ取れるかどうかを探ってもらい、その間に武器のチェックなどを済ませることにしたレン。


「……別に敵はいないみたい。だけど、凶悪な者の気配はするわね」

「その気配についてだが、どんな感じがする。こう、なんていうか。悍ましいとか、嬉しくなるとか」


 嬉しくなるはねぇだろ、戦闘狂(バトルジャンキー)じゃあるまいし。とレインの台詞にツッコミを入れるサツキだが、当の本人は既に聞いていない。


「途轍もなくやばい気配よ。おそらく今までのボスの十倍は強い」

「……この人数で勝てそうか?」

「正直に言って勝目はないに等しいけど」

「出口がない以上、勝って抜けるしかないってことか」

「ええ、そういうことよ」


 アスカの言い分は簡単かつ単純だ。

 要するに勝って堂々とダンジョンから脱出するぞというもの。簡単に言っているが、正直に言って難しいものとなるだろう。


「レイン。お前の腕、今回も信用させてもらうぞ」

「ああ、任せとけ」


 かつて共闘し、たった二人だけでボスを倒すという快挙を成し遂げた友と話すレインとサツキ。

 その二人を見届けながら、武器の整頓をするアスカ。

 レンは武器のチェックを済ませていたため手持ち無沙汰のなっていた。


「……準備はいい?」

「ああ」

「いつでもどうぞ」

「それじゃ、行くよ!」


 アスカの質問に答えるサツキとレイン。レンは口には出さずに首を縦に振ることで答えた。

 今からボスということもあり、緊張しているのか何故に声に出さないのかは本人にしかわからない。

 勢いよく入ったボス部屋の中には一匹のモンスターがいた。……いや、モンスターと形容していいのかわからないが、得体の知れない化け物がいる。

 姿形はプレイヤーと同じなのに、既存のボスと同じように体力ゲージが表示され、その上にモンスター名――『Living corpse』と表示された。


「生ける……屍」

「……もしかして、これって」


 結論が解ってしまっている問いをみんなにしようとしたアスカだが、サツキの顔色があからさまに青くなったところを見るに自分の考えた仮説は真実なのだろうなと思ったアスカは口


を塞ぐ。

 しかし、真実を伝えることが勝敗に繋がると考えた一人の少女が言葉を紡ぐ。


「正真正銘、プレイヤーだよ」


 レンの小さな口より紡がれた言葉は彼らの胸を抉り、何かが胸に突き刺さったような感覚に襲われる。


「だけど、こうなってしまったらどうしようもない。このまま生かしておいても意味がないし、放置してたら被害者は増え続けてく」

「……わかってる」


 戦う気合を入れていたサツキ達プレイヤーの一員だったが、前の世界が人間であったがために人を殺すのには抵抗があった。

 一人の人間を犠牲に何人もの人間を救うか、一人の人間を助けるために何人もの人間を捨てるか。その問い掛けにまともに答えることも出来ない非力な人間だ。

 レンと一心同体の人間もそうだ。

 その気持ちは痛い程、レンに伝わるが彼女にはリンを護るという使命がある。そのため、ここで彼女を無闇に危険に晒す意味はないと剣を取る。


「戦えないのなら、下がっててもいいよ」

「いや、戦うさ。これ以上、犠牲者を増やさないために」


 サツキ達を気遣うレンだったが、彼らの強い返事を受け素直に引き下がる。

 今の彼らからは迷いがなくなり、今を生きているプレイヤーを助けよう、そのためなら一時的な非難も受けてやるという気迫ばかりが伝わる。


(強いな。お前らは……)


 設計者より教わった人間像とは離れた強さを持つ人間達と会うことが出来たレンは、密かに小さく笑みを浮かべた。


「さぁ、来るぞ」

「おう! サポートは任せるぞ。レイン、アスカ」


 決意を新たに、武器を持ちボスに向かって走り出すレンとサツキ。その二人を護るようにレインとアスカが上手く立ち回る。


(彼らのようなプレイヤーと会わせるために私をこの子に託したのかな。マスター……いえ、元マスター『タクヤ様』)


 彼女の思考回路を覗いていた一人の少女がいたことに気づかずに、レンはボスモンスターとの戦闘に集中する。

 いくらボスとはいえ、基盤がプレイヤーであるため長期戦に持ち込めば人数が多い方が勝つのは当然。


 約二時間後――。

 ボスモンスターは倒れ、広間の奥に移動結晶が出現した。


「……レン。あなたは何を知っているの? なんで、兄さんの名前を」

 レンの奥底で眠るように小さく縮こまっていたリンの呟きは、誰もいない空間でかき消された。




実は次で最終回です。


次回をお楽しみに……してくれると嬉しいです。はい

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