AIの介入
三連休なので、もう一話だけ。
(*^-^*)
ヴァロローゾさんは女神様に宝石を贈っていた。どうやらヴァロローゾさんは女神様に懸想しているらしい。
僕は最近は探求者ギルドの部屋で寝泊まりしている。ちなみに今は夏休みだ。
帝国と同盟を結んでから、王国の動きが気になる。
静かすぎる。
魔王国が女神王国領に名前を改めてからの王国があまりにも静かすぎるのだ。
僕は女神王国領から帝国に向かった。
チェーザレから手紙が届いたからだ。中身は王国の勇者が生きているという内容だった。
帝国まで1時間で着いた。
手紙の封蝋を衛兵に見せると、すぐに城の中へ入れてくれた。
チェーザレの前に皇帝陛下と謁見する。グリーンの腰まで届く髪の碧眼の女性だった。
「お久しぶりですね」
「ええ、お久しぶりね」
本来声をかける時は目上の者からなのだが、女神王国領の方が立場が上であり、女神王国領の勇者となっている僕は帝国皇帝よりも身分が高い。
「早速ですが、チェーザレ王子に謁見したいのですが」
「チェーザレをここに」
「はッ!」
ディアマンテが王子を抱っこしてやって来る。
「久しぶりじゃな」
「はい、お久しぶりです」
「王国の勇者が生きているというのは本当でしょうか?」
「うむ、我の部下が確かに見たと言っておった」
「見間違えでは無いのですよね、殿下」
「うむ、見間違えようが無いほど似ていたと言っておった」
「双子説は?」
「ありえぬ」
「では、確認してきましょうか?」
「ならぬ。王国の勇者の狙いは間違いなく女神王国領の勇者じゃ。そなたが狙われるのはわかっておる」
「今暗部に任せておるゆえ、帝国にてしばし留まっておれ」
「はい」
「すまんな。今帝国で王国の勇者に勝てる者はおらんでな」
「予知能力者のビスタさんがいたはずですが?」
「そのビスタが今王国で勇者を見張っておる。女神王国領には、そなたをしばし借りると伝えておいた」
僕は、お城の部屋を借りて、しばらく帝都に留まることにした。
数日後、僕が帝都に留まっていると聞いて来客が来た。
チェーザレ殿下にお茶に誘われて行った先にはフォルマーレ王女殿下がいた。
フォルマーレが僕に抱きついて来る。
「久しぶりね。アルコバレーノ」
「お久しぶりです、フォルマーレ殿下」
マルツォが僕からフォルマーレを引き離しに来る。
「いけません陛下。赤目などに抱きついては周りに何を言われるか」
「元々運命の人なのよ。勇者を名乗るあの畜生に引き裂かれただけ」
「フォルマーレ殿下に赤目は相応しくありません」
「エリクサーがあれば魔核を取り出して人間として修復することが出来ます」
僕は殿下に膝をつく。
「すみません殿下。今の僕には婚約者がいる身なのです」
「それは……」
「それに……あなたは最後まで愛していると言ってくれませんでした」
「そうでした……わね。しかも帝国の北の要塞に送ったのも私ですし」
「フォルマーレ王女殿下、アルコバレーノ殿、仲直りをすることはできませんか?」
僕が殿下に膝をつけたままで答える。
「フォルマーレ王女殿下に対する憎しみは最初からありません。ただ、僕が送られた先で、僕のことを愛してると言ってくれた子がいただけです」
フォルマーレ王女が僕の肩に手を置いて涙を流す。
「それも全て、勇者のせいですわ……」
「そうですね。アンデッドの群れを彼らが作らなければ、もしも、フォルマーレ様と一緒にいたら。何か違っていたかもしれません」
「…ですが、僕はビアンカという最愛の人を見つけました。そして、僕は女神王国領にて勇者をしています。僕は女神王国領とビアンカに全てを捧げるつもりです。それに、ゲームというものには選択肢があるのでしょう?」
こくりと頷くフォルマーレ。
「姫様が他に幸せになれるルートがあるのなら、それでいいのだと思います。あるんでしょう、あなたが幸せになれるルートが」
こくりこくりと頷くフォルマーレ。眉をㇵの字にして、大粒の涙を流している。
「でも、あなたには幸せなルートが一つしかありません」
「大丈夫です。そのゲームとやらを僕は乗り越えて見せますから」
「ルートがなければ、新しく作ればいいんです」
僕が言葉を発すると、空一面にガタンッと歯車のような魔法陣が回って何かが動き出した。
フォルマーレ殿下が呟いた。
「AIが、動き出した」
アルコバレーノとフォルマーレが幸せに生きられるルートが次々と生まれていく。
「これはもう、本当の選択肢が分からない」
フォルマーレ王女殿下が呟いた。
「これはもう、ゲームじゃないのう。あはは」
チェーザレ王子殿下が笑った。
僕はチェーザレに聞くと、どうやら選択肢が無限に広がったらしい。ということだけはわかった。
フォルマーレ王女殿下が叫んだ。
「あははは、これで私は自由だわ!」
「アルコバレーノ様! 私はやっぱりあなたを諦めませんわ。ビアンカさんと結婚するまで、あなたに付き纏いますので覚悟をしておいてください」
何が変わったところで僕の気持ちが変わるわけではないのだが、フォルマーレ王女殿下は燃えている。
僕らは勇者のことは結局分からず仕舞いでそれぞれ国に帰っていった。
※※※
フォルマーレ王女殿下は、筋書きを変えることに集中していた。なんなら、物語をリセット出来ないものか考えていた。
選択肢は増えたけど、答えが見つからない。そこに、王国の勇者がやって来た。
「おい、フォルマーレ。外の警備が厳重になってやがるぜ。どういうことだ」
「あなたも生前に聞いたことあるでしょう。AIがこのゲームに介入してきたわ」
「AIが介入? それがどうしたって言うんだ?」
「あなたにも前世の記憶くらいあるでしょう。AIが介入してきたってことは、一からでもやり直しのチャンスがあるってことよ」
「なんでそうなるんだよ」
「ゲームに介入してきたことで、エンディングルートが無限に広がりましたわ。これはこのゲームが現実世界に追いついたことを意味しますわ。あなたの悪評も私の過ちも挽回できるチャンスですわ」
「あ~ん? 俺に悪評がついてんのか?」
「ええ、下手に要塞を滅ぼして、帝国を無能なオークから才ある皇女に代替わりさせて、魔王国領と帝国を同盟関係にして、王国内の評価は最悪よ」
自分の頭をわしゃわしゃ撫でる王国の勇者。
「いつの間に俺はそんなに評判悪くなったんだ?」
「名前を名乗っていないことも今では失敗になったわね。胡散臭いのよ」
「うッ!それは、影で割のいい仕事をやっていたのが影響していてだな」
「それよ。王国の記者の間で評判よ。なんでも孤児を奴隷商人に売ってるとか、お酒の席では女性を連れ帰ってるとか」
「それはだな! 路上で腹空かせてるガキどもに少しでもマシな奴隷商を紹介してだな、美味しいもんを食わせてやろうと思ったんだ」
「あなたが子どもを売った奴隷商はどこも闇奴隷商よ。ろくにご飯も与えない、女とあれば、女児でも売る。ろくでもない人達みたいよ。もう私が介入して孤児院に入れたけれどね。同じ転生者なら私達が標的にならないように気をつけて頂戴」
頭を抱える王国勇者。
「だからこの世のリセットを探すのよ。リセットさえ出来れば今度はいくらでも好きなルートに辿り着けるわ。私も幸せになりたいの」
「なあ、選択肢が無限に広がったってことはよ。俺たちが勇者や王女に生まれてくる可能性も分からなくなったってことじゃないのか?」
「あ」
「簡単にリセット出来ないじゃない、そんなの。じゃあ、今生で幸せになるしかないじゃないの」
驚愕する王国王女と勇者。
「とりあえず、真っ当に生きてくしかないわね。あなたはもう手遅れかもしれないけど」
フォルマーレ王女が最後に呟いた。




