宝石のダンジョン
ガーゴイルを全部破壊したら、そこは宝石の階層だった。
「まあ、これは素晴らしいですわ」
セドツィオーネさんがボソッと呟いた。
「……ん。これは、持って帰ろう」
ビアンカもボソッと呟いた。
試しにダイヤモンドを取り出すとボンッ!と爆発した。
「うお、あぶねえ!」
ダンジョン内の宝石はどうやら爆発するらしい。ピッチョットは盗賊スキル危険探知でギリギリ手放して無事だった。
他の宝石を取り出しても爆発したので女性陣には採掘は我慢してもらった。
「爆発しない方法は無いのかねぇ」
「宝石はダンジョンのトラップなんじゃ?」
真顔で答える僕。
女子二人はそれでも諦めきれない様子。
とりあえず奥に進んで歩く。
ピッチョットが盗賊スキルでトラップを解除していく。
「ん? このブルーダイヤモンド、トラップじゃねえですぜ旦那」
「え? ほんとだ。爆発しない」
僕が慎重に掘り出してみたが、爆発はしなかった。
ビアンカに渡してみる。
「……ん。とても綺麗」
「嬢ちゃん私にも触らせておくれよ」
「……ん」
「これはブルーダイヤモンドじゃないか!かなり希少な宝石だよ」
「希少……返して」
「この先も出てくるだろうからいいだろう。おくれよ嬢ちゃん」
城の中は宝石が満ちていて、人の心を狂わせる。特に女性の心を。
「ピッチョットさん、他にトラップじゃない宝石はないかな?」
「このピンクのダイヤモンドはトラップじゃありやせんぜ」
「ビアンカ、おいで。このピンクダイヤモンドならいいと思うんだけど」
「……ん。アルコバレーノからのプレゼントなら満足」
にっこり微笑むビアンカ。僕はその笑顔に顔が熱くなった。
「旦那、あたしにもプレゼントしておくれよ」
「……ん。それは駄目」
「ちくしょう、なんでビアンカの嬢ちゃんばかり優遇するのさ」
宝石の通路を越えると宝石の間へとやって来た。玉座に座るのは宝石の王女。謁見の間にはたくさんの探求者が宝石にされていた。
「欲に目が眩んだ探求者の馬鹿どもがまたやって来たのかい。ここまでやって来るのに10年はかかっただろうに、ほんと人間の欲は果てしないねぇ」
僕は白雪姫の王女みたいな姿をした人間? に返事をした。
「10年はかかる? 一日で着いたけど」
「アハハ、嘘もいい加減にしな。城に入ってから迷宮で10年は探索にかかったはずだよ」
「じゃあ、ビアンカの『マップスクロール』が最短距離を選んだみたいだね」
「マップスクロール? 魔法かいそれは?」
「……ん。ダンジョンで下の階層に進むための魔法」
「なんだいその反則チートは」
ここのダンジョンは依頼が塩漬けにされてた。お前らなら大丈夫だろうと、学校の先生に推薦されてやって来たわけだが。
僕は両方の背中から大剣を取り出し構える。ダンジョンボスの王女が攻撃してくる。お腹を大きく膨らし、息を吹きかけた。僕は避けるか受け止めるか判断に困ったが、大丈夫だろうと油断してしまった。
両腕が宝石に変わる。さすがにオリハルコンの大剣は宝石にはならなかったが、両腕がそのまま大剣を握ったままだったので、女王に雷のような速さで迫り、女王を斬った。
女王が消滅していく。代わりに僕の腕や宝石にされた人の身体が元に戻って行った。
探求者や冒険者それぞれバラバラだったが、同じ赤い目をしていた為に、すぐに仲良くなったみたいだ。
女王が10年はかかると言っていたが、塩漬けされていた依頼を受けようとする人が少なかった為に、王女が誤解していたようだった。
僕は王女のリポップするのが一日と早かったので、探求者や冒険者と共に一ヶ月ほど王女を討伐し続けた。ダンジョンで宝石化していた人たちも懐が暖かくなったので、みんなと一緒に外へと出た。
近くに村があるらしく、補給する為に冒険者達は歩いて行ったが、僕らは走って王都へと戻った。
※※※
「よう、珍しく時間がかかったな」
そこにいたのは担任の先生だった。「明日からまた授業を受けますので」と答えるとビアンカが無い胸を張って「数学なら任せて」と答える。
道中と宝石の王女を倒している時間を使って僕が数学を教えていたことが、ビアンカの自信に繋がっていたのだろう。
僕らが授業を受け始めると、一週間で夏休みがやってきた。
ビアンカも追試が無かったのでアルコバレーノ村へと一緒に帰った。
※※※
「お父さん、ただいま」
「おお、おかえり。果樹園の方は順調だぞ」
「うん、いつもありがとう」
「ありがとうございます」
「今日はどうしたんだい」
「果物を飲み物にしようと思いまして」
「果物を飲み物に?」
「『シルフおいで』風の魔法で果物を切ってくれるかい」
「次は、皮を剥いておくれ」
魔法で氷を出す。
「最後は氷と桃がとろとろになるまで一緒に刻んでおくれ」
「うん、綺麗に出来た。ちょっと飲んでごらん」
シルフは美味し過ぎて空をグルグル飛んで回った。
お父さんも美味し過ぎてグルグル走り回っている。
「今は暑いからこっちの方が良いかもと思って」
「イケる。イケるよ。こんなに美味い物初めて飲んだ」
ポチ出ておいで。
二メートルある狂暴ウサギが大人しく飲んでいる。気に入ったらしい。
ビアンカにも飲ませる。
「美味しい!こんなに美味しいの飲んだことない!」
ビアンカにしてはリアクションが大きかった。とても気に入ったようだ。
次の一杯を求めて、ビアンカは今ポチと真剣にじゃれ合っている。
「アルコバレーノくん、他のも試してみよう」
「いいですね。やりましょう」
僕とお父さんは協力して美味しいジュースを開拓していった。
「ふむ、次はお酒の開発をしてみようか?」
「いいですね。やりましょう。何か足りないと思っていたところです」
「今日はもうお腹一杯だからご飯は要らないよね」
「……ん。私は要らない」
「私も要らないよ」
『ご飯寄越せー肉寄越せー』
「あらあら、私のご飯が食べられないって言うのかしら」
ビアンカのお母さんの一言でビアンカとお父さん「「食べるー」」と翻す。
「アルコバレーノくんは食べる? せっかく用意したんだけど」
「頂きます」僕らは美味しい食事を堪能した。お腹が破t裂しそうだけど。
僕はギルドに報告する為一旦帰る。ビアンカもついてきた。
ビアンカ曰く「アルコバレーノを一人にしてられないから」ついて来るらしい。
僕はビアンカに信用されてない?
「ビアンカ? ビアンカは僕を信用してないの?」
「アルコバレーノは信用はしてる。でも、他の探求者女子どもが信頼できない」
幻惑の魔法とか、魅了の薬とか、男なら流されて関係を持つことも珍しくない。
「まあ、僕としてもビアンカが側にいた方が安心だけど」
「私は幻惑の魔法にも魅了の薬にも惑わされることはない」
「ビアンカは女の子だから、無理矢理ってこともあるだろ」
「この世で一番強いのはアルコバレーノ。その次に強いのが私。普通の男達にわたしが負けることはない」
「お酒に睡眠薬入れられたり、色々あるだろ」
「むう。確かに否定は出来ないけど、なにがあってもアルコバレーノへの気持ちが変わることはない」
「僕も一緒だよ。この先何があっても、ビアンカへの気持ちが変わることはないよ」
右手と左手を重ね合わせ、二人はギルドへと戻った。
ギルドへ着くと、三十階の勇者パーティーを呼びに行く。勇者パーティー達は出来上がっていた。分け前の宝石が白金貨1000枚を超えたからだ。
「おう、兄貴も飲んでかねえか?」
「旦那も一杯どうだい?」
「アルコバレーノくんも飲むかい?」
「その様子だともう依頼達成の報告は済ませたみたいですね」
「おうよ、白金貨1000枚だぜ。もう働かなくてもいいんだ」
「まあ、でもこの国の勇者の一人としては研鑽は積み続けようと思ってるけどね」
「それじゃあ、僕らも報告に行ってきます」
アルコバレーノとビアンカはギルド八十階の受付までやって来る。八十階では受付嬢メンバーがずっと待っていた。
「この宝石で依頼達成報告をお願いします」
「ブルーダイヤモンドにピンクダイヤモンド…ゴクリッ」
今から鑑定しますので、しばらくお待ちください。
紅茶が出てくる。
鑑定が終わりました。アルコバレーノ様とビアンカ様は貴賓室でお待ちください。
よく鍛えられたシルバーの髪をした男が出てくる。
「白金貨2500枚だが、どれか現物をこのうちの中から選んで貰えないか。今日は
白金貨がもうなくてな…」
「それなら、ピンクダイヤモンドでお願いします」
「もう一つどうだ?」
「では、ブルーダイヤモンドで。お母さんにプレゼントしたいので」
「それは助かる。これが今ある白金貨最後の1000枚だ」
「では、今日はこれまでだ。おかげでギルドがもう2棟は作れそうな額が入ってきそうだ」
貴賓室から出る僕とビアンカ。
「お母さんはうちのお母さんのこと?」
「そうだよ。うちのお母さんはもう亡くなってるし、家からは追い出されてるからね。2つのダイヤモンドは、加工してもらってからプレゼントするから待ってて」
「うん」こくりと頷くビアンカだった。




