98.
空が燃えている、と無邪気な子供の声がした。
世界の終焉だ、と全てを諦めきった老人の声がした。
いよいよ人々は恐れ慄き、しかしただその異常事態を甘受するほかなかった。
しかしその混乱のなか、神継ぎたちはみな完全に事態を把握していた。
虚構が崩れ去ったのだと、燃え盛る空を見上げて理解した。
そして、遥か遠く、虚構に入ってすらいなかった異形たちまでもが消し炭になって吹き飛んだのを見て、アクイラはそっと黄金の瞳を閉じた。ヘリオスが何の憂いもなく神になれることを祈って、スルトの胸中の痛みが一刻も早く癒えることを祈って。
そして、最後の異形たちを一網打尽にした、大輪の花と見紛うほどの炎を大空に咲かせることに加担したフィニクスが、静かにアクイラの元へと寄ってくるのを、アクイラは沈んだ面持ちで迎えた。
アマニは事態を把握した途端、弾かれたように駆け出していた。レーヴからの最期の頼みを、彼女は一瞬たりとも忘れてなどいなかった。ビーマがどこにいるかなんて正確なことは分からないけれど、それでもアマニは走り出さずにはいられなかった。
ユーフォニアはしばらくその凪いだ藤色の瞳で周囲を見渡し、やがて迷いのない足取りで、自らを待つ王の元へと進み始めた。
エヴレナは異形が殲滅されてすぐに姿を現したレイナードとともに、最後に皆でいた場所、つまりヘルのいた場所、いまはスルトがぽつりと佇んでいる場所に戻ろうと決めた。
ルディヴィーは最後の一体を屠ったヴァルグルの元へと肩で息をしながらゆっくり歩み寄り、一刻も早く皆と合流させてほしいと揺れる瞳で彼を見上げた。
そして、ノーシスがいま、件の二つ目の虚構を生み出した、レーヴのクローン体の元へとたどり着こうとしていた。




