第2話記憶にない転校生
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四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
教室の中は一気にざわつき、昼休みを待ちわびていた生徒たちが机を動かし弁当を広げたり、廊下に出ていったりする。
陽翔はひとり、机の上に広げた教科書をぼんやりと眺めていた。
まだ頭の中の整理が追いついていない。
ここが十年以上前の世界だと理解しても、すぐに順応できるわけではない。
「おーい、陽翔食堂行こーぜ!」
声と同時に、誰かの影が机に落ちた。
顔を上げると、朝、校門前で声をかけてきた男子が立っている。
「お前、急に立ち上がって教室出て行くからクラスの空気がざわついてたんだぞ!まぁでも一番面白かったのは国語のサトセンの顔だったけどな!」
男子は声を上げて笑う。
どうやら授業中、急に教室を出ていった事がまずかったらしい。まぁ、急に誰かが授業中どっかに行ったらザワつくだろう。
「……ああ、そうだったんだ。」
陽翔が曖昧に笑って答えると、男子は一瞬眉をひそめた。
「なんだよその反応。いつもなら言い返すじゃん。どうした?」
――やっぱり少し違う。
陽翔は、その男子をまじまじと見つめた。
「あのさ……君の、名前ってなんだっけ?」
「は?」
男子の表情が固まる。
教室のざわめきが、少しだけ遠ざかったような気がした。
「なに言ってんだよお前。寝不足か?」
そう言いながらも、男子は少し心配そうに笑った。
「……市原。一虎、市原一虎」
その名前を聞いた瞬間、胸の奥に詰まっていた物が弾けた感覚がした。
押し込めていた記憶が、じわじわと浮かび上がる。
廊下でふざけ合って、放課後バカみたいに笑った日々、3年間一虎は一緒に時間を過ごした大事な友達だ。
なんで俺はこんな大事な友達の事を忘れてたんだ。
「……そう、だったな」
陽翔はふっと笑った。
一虎も、少し安心したように肩をすくめる。
「なんかお前、今日変だぞ。まあいいや、飯行こうぜ」
「あぁ......」
⸻
食堂のざわめきの中、二人はトレーを持って向かい合った。
揚げ物の匂いと人の熱気が、冬の冷たい空気を押しのけるように満ちている。
「で? さっきの質問、マジでどういう意味だったんだよ!急に名前なんか聞いて!」
一虎が箸を動かしながら言う。
陽翔は少し迷ったあと、口を開いた。
「……信じないかもしれないけど、俺、十年以上後の世界から来たんだ」
沈黙。
隣の席の笑い声だけが妙に響いた。
「は?」
一虎は目を瞬かせ、やがて吹き出した。
「お前、昼ドラ、アニメの見すぎだろ!滅亡した世界とか、100年以上先とかならまだしも、10年後じゃドラえもんもまだ、漫画の世界だぜ! でもまあ……そういう都市伝説系のネタ嫌いじゃないけどさ」
やっぱり信じてもらえなかった。
陽翔は苦笑して、それ以上は何も言わなかった。
⸻
下校のチャイムが鳴ると、生徒たちが一斉に鞄を持って立ち上がった。
一虎が陽翔に声をかける。
「なあ、帰りに昨日言ってたゲーセン寄らね? 新しい格ゲー入ったんだってさ」
「ごめん、今日はやめとく」
「……そっか。じゃ、また明日な」
一虎は手をひらひらと振って教室を出ていった。
陽翔はひとり、静かになった教室で深呼吸する。
(学校も、友達も、家族も……何も変わってない。
変わったのは──沙織との関わりだけ)
⸻
夕暮れの街を歩きながら、陽翔はスマホを何度も確認した。
連絡先、メッセージ、履歴……
沙織に繋がるはずのグループは、どこにもなかった。
焦りと不安が胸を締めつける。
そのとき――
「あの、すみません」
振り向くと、制服姿の少女が立っていた。
肩までの黒髪、寒さで赤くなった頬。
どこか、沙織を思わせる雰囲気がある。
「駅まで行きたいんですけど、この道で合ってますか?」
「あ、ああ……あそこをまっすぐ行って、二つ目の角を右。すぐ分かるよ」
少女はぱっと笑って頭を下げる。
「ありがとうございます!」
去っていく後ろ姿はとこが懐かしさを感じた。陽翔はしばらく見送った。
胸の鼓動が、少し早くなる。
⸻
翌日。
朝の教室に担任が入ってきて言った。
「今日は転校生を紹介するぞ。入って来なさい。」
扉が開く。
現れたのは――昨日の少女だった。
陽翔は息をのむ。
「北海道から来ました、佐藤紫帆です。よろしくお願いします」
クラスがざわめく中、陽翔は胸の奥がざわついた。
(えっ……俺の知ってる世界では転校生なんて居なかったはずなのにどうして......)
心臓が早鐘を打つ。
沙織との関わりが消えた世界で、何が始まろうとしているのか。
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