54話 復興祭とラフィの変化
―――クラウ視点―――
にぎわってるな。
今日は復興祭ということもあり、町中が活気づいている。
海人の襲撃や魔物の群れの襲来で中断した祭りだが、そのまま中止になると思っていた。
だが、バルドさんから「復興祭を開くぞ」と声がかかり、マルハバ商会だけでなく、他の商人たちとも企画を練ることになった。
街の暗い雰囲気を変えるためにも、住民の気持ちを晴らすためにも、復興祭をやる意味は大きい。
あの日、俺が倒れた後に地震が起こったらしい。
幸い、うちの店は無事だったが、街全体では多くの建物が被害を受け、復興作業に追われており、店の経営どころではなかった。
シータたちやモリス、ティアとも話し合い、開店早々だが、一旦店を閉めた。
そんなわけで時間もあるし、俺も住民の一人として、復興祭の準備を率先して手伝うことにした。
作業は大変だったが、あれこれと企画を考える時間は楽しく、いろいろな商人たちと新たに知り合えたのも嬉しかった。
バルドさんが呼んだだけあって、みんないい人ばかりだったし、良い経験だった。
これから復興祭が始まって、どんな反響があるのかと思うとわくわくする。
「すみませーん」
俺が訪れたのは、ラフィの家だ。
あの襲撃の日以来、ラフィとは顔を合わせていなかった。
正確に言えば、サターシャとラフィが眠っているときに見舞いには行っていたのだが、直接会話を交わすのは久しぶりになる。
目が覚めたと聞いて、前に俺が入院した時も来てくれたので、俺も会いに行こうと思っていた。
だが、シータから「忙しいだろうから来るな」という伝言を受け、さらにシータにもお願いされたので、その時は行くのを控えたのだ。
気を使ってくれたのだろうか。
代わりに襲撃のせいでできなかったリオネルとレオノーラへ平民街の案内を復興祭の時にやろうと誘い、今にいたるわけだ。
リオネルたちは予定があるそうで、少し遅れて昼過ぎくらいから合流する予定だ。
「いらっしゃーい」
「まだだめだよ」
年下組のビンとサーラが扉を開け、飛び出してきた。
そして、すぐに扉を閉めると家の前に立ちふさがる。
「え? どうしたんだ?」
中に入れようとしない二人の行動に訳が分からず動揺する。
「メリア姉がまだ待ってだって」
「そうそう、今はラフィ姉のむぐっ」
「言っちゃだめ!」
何かを言いかけたサーラの口をビンが抑える。
二人も初めて会った時より言葉がはっきりして、成長を感じるな。
リトも最近は言葉を色々覚えて、はっきりしゃべれるようになってきたし、子供の成長は早いな。
そんなことを考えながら、待てと言われたのでビンとサーラと話しながら待つ。
「クラウ君、すみません。外で待たせてしまって」
中からシータも出てきた。
「いや、大丈夫だけど何かあったのか?」
「それは……楽しみにしててください」
シータまでそう言ってはぐらかす。
「そう言えば、シータたちは今日どうするの?」
「私たちはアミル君とファルク君を待って、みんなで見て回ろうと思ってます。カイが連れてきてくれると思うので」
最近、アミルは毎日のように畑へ通っているらしい。
俺もたまに畑の様子を見に行くとかなりの頻度で会う。
ガロンやファルクとも仲良くなっており、今はモリスもいるのでこれから植える野菜や香草について相談をしているようだ。
品種改良をやろうなんて話をしていたのは驚いた。
この世界には前世の記憶と似ている野菜もあるが、知らないものも多い。
モリスの豊富な知識と合わせて、料理を記憶の味に近づけているが、新たな料理が生まれる可能性もあるし、味が格段に良くなることだってある。
この畑には無限の可能性が秘められているわけだ。
これからどんな畑に育っていくのか、楽しみで仕方がない。
「色々面白いのが見れると思うから、期待していてよ」
「クラウ君も運営を手伝っていたんですよね。楽しみにしておきます」
「準備できたよー。ほら、行っておいで」
雑談をしていると、メリアが現れた。
そのすぐ後ろから、ラフィも姿を見せる。
「後は二人で楽しんでねー」
メリアはそう言い残し、シータ達と一緒に家の中へ戻っていった。
そして、目の前に立つラフィは髪をきちんと留め、女の子らしい装いで登場した。
なるほど、中に入れてもらえなかったのはおしゃれをしていたから、ということか。
「……久しぶり。元気だったか?」
思わぬ形での対面となり、何を言ったらいいか分からなかったが、一旦声をかけてみる。
「……ああ」
「と、とりあえず、街の方へ行こうか」
うーん、どうしたものか。
ラフィは珍しく渋い顔をしていて、口数が少ない。
どういう感情なのかも、何を話したらいいのかも分からない。
「……言っとくけど、これはメリア姉が無理やりやっただけだからな」
お互い無言で歩き続けていると、ラフィがぽつりと口を開いた。
「そうなんだ! すごいおしゃれになってて驚いたよ。それに、その髪留めつけてくれたんだな」
ラフィの髪は一年前に俺があげた髪留めで飾られていた。
「まあ、な」
「普段のラフィも良いけど、こっちの方も雰囲気が変わってて良いと思うよ」
「っ、もういいから……やめて」
ラフィはそう言って顔を背けてしまった。
何か間違えたか? というか、いつもと少し様子が違う?
服装がいつもとは違って雰囲気が変わっているからだろうか、ラフィの態度に微妙な違和感を覚える。
そんな感じで少しぎくしゃくしながらも、人がたくさん集まる場所までやってきた。
通りにはいろいろな屋台が出ていて、肉の焼ける良い匂いが立ち込めている。
「まずは広場の方に行ってみようぜ」
「うん」
俺の提案にラフィが乗る。
やっぱり違和感は拭えないが、いろいろ見てれば慣れるだろ。
広場の方では様々な企画が行われている。
最初に目に入ったのは、魔物の素材を使ったアイテム展示・販売のコーナーだ。
襲撃があった日は数百体以上の魔物がこの街を攻めていたらしく、その魔物たちの素材を使って職人たちが装飾品や実用品をこの日のために作った。
特に目を引くのは、希少な魔物の素材を使用したアイテムで、宝石のように輝く魔物の爪や、獰猛な姿を模した革製品など、どれもその素材が持つ独特の魅力を存分に引き出している。
「でかっ! 単眼魔鬼の目玉だって!? ええっと、これが魔道具の素材とか薬にもなるのか。この砂暴風竜の鱗と革で作った鞄もかっこいい!! 値段は……金貨5枚!? 買える人いるのかよ」
「おい、あんまりはしゃぐなよ」
「そうはいっても……あっ、あの牙のペンダントとかラフィに似合いそうだぞ」
「わた……オレのことはいいから」
まだ加工されていない魔物の素材も説明文とともに展示されていた。
魔物は高魔素地帯に生息しているので、狩人たちが運搬している時くらいしか素材で見る機会はない。
それに弱い魔物の製品はよく見かけるが、こんなに珍しい魔物の製品がこれほどたくさん出回るなんて、普段ならあり得ない。
短期間で装飾品を作るために職人たちを呼び寄せた商人たちの手腕もさすがだ。
時間があれば、もっと手の込んだものも作れたんだろうけど、そうなると金貨数十枚とかしそうだな。
「ラフィ、見てみろ。これ竜の素材を使った短剣だって」
「すげえ、かっこいい! こういうの、いつか手に入れたいな。あっこの防具、竜の鱗でできてるんだって!」
そんな感じで俺たちは滅多にお目にかかれない魔物の素材を使ったアイテムを見て回った。
「面白かったな!」
「うん!」
あれだけ俺を止めていたラフィも途中からは目を輝かせて楽しんでいるようだった。
最初のぎくしゃくしていた雰囲気はなくなったと言っていいだろう。
さてと……聞くなら今か。
「ラフィ、何かあったのか?」




