53話 ラフィの心情
マイペースに更新していきます。
―――ラフィ視点―――
「一先ず全員無事で何よりです」
副団長の部屋にわたしたち騎士団見習いが集められた。
わたしが目を覚ましてから数日経っているので、久しぶりの勤務になる。
マリアンの魔法のおかげで、外傷自体はすぐに治った。
だが、怪我よりも魔法の暴走によって無理やり体を酷使したことの反動が酷く、急速に傷を癒した分と合わせて、体をまともに動かせるまでに時間がかかった。
目が覚めるまでシータ姉たちもわざわざ兵舎まで通ってミャリアと交代で看病してくれていたらしい。
リハビリまで手伝ってもらって本当に面倒と心配をかけてしまった。
「副団長もご無事でよかったです」
怪我から復帰したリオネルが副団長にそう返す。
「ええ。私も今回の襲撃では反省すべきことが多くありました。そして、襲撃の主犯格を捉えることができなかった以上、またいつ同じような襲撃が起こるか分かりません」
副団長の言うように、一部の海人達はとらえることができたが、ほとんどは逃げられ、主犯格も捕まえることができなかったらしい。
わたしは気を失っている間に主犯格の一人に連れ去られたことを聞かされた。
「襲撃時のあなたたちの行動は概ね把握しています。そのうえで、厳しく言わせてもらいます。心して聞きなさい」
『はっ!』
副団長の一言で雰囲気がピリッとする。
「まず、リオネルとレオノーラ。襲撃があった時、対応に躊躇いましたね? そして、本来守るべき民間人より遅く現場に到着し、守られた。あなたたちはいつまで守られる立場に甘んじるつもりですか? あなたたちはすでに見習いとはいえ騎士です。守る立場になったことを自覚しなさい」
「す、すみません」
「うっ、反省しますわ」
厳しい指摘に、リオネルとレオノーラも心当たりがあるようだ。
「あなたたちにはこれから戦闘部隊の騎士達から指導を受けてもらいます。そこで守るとは何か、守るための力を学び身につけなさい」
『はっ!』
「それでは先に訓練場へ行きなさい」
そのままリオネルとレオノーラは部屋から出て行く。
「さて、問題はラフィ、あなたです」
人がいなくなり、静かな空間に副団長と対面する。
「ルインスが周囲の人間には見えないように対応していたおかげで、あなたが光の柱の原因だと明確に証言できる人は少数です。その少数も身内なので、情報が外に漏れる可能性は極めて低いでしょう。軍も調査は行っているようですが、迷宮核の対応や被害の補填などで手一杯といった様子ですし、逃げられた主犯と思われる男も光を扱うようなので」
ルインスはそんなことまでしてたのかよ。
シータ姉たちから聞いた話だと、あの日は二回、アブドラハに光の柱が現れた。
一回目はわたしの暴走だ。
副団長の話から二回目は主犯格の男の仕業ということらしい。
二回目は一回目ほど大きい柱ではなかったが、二回目の時には大地が揺れ、訳が分からず、本当に怖かったと言っていた。
みんなで固まって震えながらやり過ごしたみたいだ。
「今回は騎士団でも知らないふりで通すつもりですが、次に同じようなことがあれば疑われるだけでなく、あなた自身の身に危険が及ぶ可能性も十分にあります。あなたの力はこの街を滅ぼしかねない。それだけ強大な力がいつ暴走するか分からない以上、力を封じようとするのは当然です」
「はい」
わたしがあのまま暴走していたら街がどうなっていたか……その危険性を、ぼんやりとした意識の中でも感じていた。思い出すだけで胸が苦しくなる。
「なので、あなたがその力を制御できるよう私が引き続き指導します。どうして力が暴走したのか思い出せますか?」
「あの時……カリューがあいつに手をかけようとしたのを見て、守らなきゃって強く思うのと同時に怒りが湧いたんだ。そしたら、炎が溢れてきて、意識まで飲み込んできて……」
「なるほど、感情が引き金という訳ですか。他に何か気になることはありませんでしたか?」
他に気になることはあるにはあるが、言うべきか。
「あるみたいですね。ラフィ、あなたの境遇は分かります。ですが、少しずつでいいから周りを頼りなさい。それが難しいなら、まず私に相談しなさい」
「……実は、気を習得し始めたあたりから、自分の内側から炎が漏れ出すような感覚があったんです。普段は何とか抑えていましたけど、カリューと戦っているとき、その炎が一気に暴れ出して、自分の手で押さえつけられない感じがして……」
暴れる炎を抑えるのに必死で、カリューとの戦いではまともに動くことができなかった。
「よく話しましたね。その調子で少しずつ本来の自分を見せられるようになるといいのですが」
「……うるせえ」
「そういうことなら、気のさらなる研鑽に加えて、感情のコントロールと精神力の強化に力を入れていきます。今のあなたは身の丈に合わない武器に振り回されている状態です。徐々にその火力をコントロールできるように、力をつけていきましょう」
*****
「おい、ルインス」
「あっ、ラフィちゃんじゃないっすか。良くなったようで何よりっす」
兵舎をうろちょろしていたルインスに声をかける。
こいつは何やってるんだ?
「こんなところで何やってんだ? ここは女子の」
「監視っす。言いつけを守らなかった部下がしっかり掃除をやってるか見届けてるんすよ」
「ネマ悪くないもーん! 隊長が『なるべく』って言ったもん!!」
洗面所の中からネマの声が聞こえる。
「反省してないみたいっすね。後で地獄のダッシュっすよ」
「ひどーい! 体罰反対!」
なんでこいつらはいつも騒がしいんだよ。
「それで、何か用があるんすよね? もしかして邪魔だったっすか?」
「ちげえよ。これ、洗ってあるから。助かった」
本来の目的だった騎士団のローブを返す。
「ああ、これっすか」
「……着せたの、お前か?」
「いや、自分じゃないっすよ。着せたのはお友達のクラウ君っす。自分は貸しただけで何も見てないっす」
「……」
「本当っすよ! 本人に聞けば分かるっすから」
こいつの反応を見るに本当みたいだ。
起きた時は別の服だったが、ミャリアが着替させてくれていた。
だが、着替える前はローブ一枚だけだったらしい。
そうなるとあいつはわたしの体を……
顔が熱くなるのを感じる。
目が覚めてから、あいつとはまだ会っていない。
気を失っている間に見舞いに来てくれていたらしいが、いろいろやってるみたいで忙しいだろうし、来ないようにシータ姉に伝えてもらった。
情けないところを見せるわけにもいかない。
近々、シータ姉経由で会う約束してあるので、その時に礼を言おうと思っていたが、
なんかちょっと……会いづらいな。
「まあ、お年頃なのは分かるんすけどね。気にしなくても、まだ子供のうちは大差ないっすかぐぅっ……!」
急所に一撃を受けたルインスはその場に崩れ落ちる。
「お前は一言余計なんだよ。礼は言ったからな」
「隊長ー掃除終わった! 何やってるの?」
「ネ、ネマ。マリアンを呼ぶっす」
これ以上関わるのも面倒なので、わたしはその場を立ち去った。
明日、明後日も更新予定です。




