46「イベントの始まりじゃね?」①
「しょんぼりまもんまもん」
夏樹はひとり寂しく屋上でお弁当を食べていた。
教室があまりにも愉快で気づかなかったが、水無月都が休みだった。
休み時間にメッセージを送ってみると、
『――え? 夏樹くんが学校にいるんですか!?』
という、なんとも友情を感じる返信があって泣いた。
一登は、兄の一件があるため休みをとっているので、学校に来ていないことは知っていたが、寂しかったので相手をしてもらおうとメッセージを送ると、
『……朝、夏樹くんの家に遊びに行ったら登校したって聞いてびっくりして気絶していたよ』
涙が溢れる返事があった。
さすがの夏樹も悲しくなって昼休みに入ってすぐに千手に電話したのだが、携帯電話の向こう側から驚いた声が帰ってきた。
『由良、お前が学校に入れたんだな。てっきり、俺は……結界か何かに阻まれて学校に入れないのだとばかり』
どうやら千手は夏樹が学校にいけないことを、学校に入れないことを強がっていると認識していたらしい。
何度か学校の中での出来事を話したことがあっただけに、解せなかった。
そんな千手と一緒にいるのか虎童子が楽しそうにしている声が聞こえる。
夏樹は学校で大変なのに、いちゃつきやがって、とハンカチを噛んだ。
そして、お昼はぼっち飯だ。
「はぁ……なんだかんだと最近はみんなとわいわいがやがやしていたからひとりっていうのは寂しいね。まもんまもんちゃんねるでも見て元気になろ」
サタンお手製のお弁当を食べながら、携帯で動画を見る。
なんとなく寂しい時間を過ごしていると、
「――ん?」
向島市に、何かが『来た』感覚を覚えた。
「なんだ?」
動画を止めて立ち上がる。
フェンス越しに力を感じた方角を見ると、水無月家があった。
「なんだろ? 小梅ちゃんに近いけどなんか違う力を感じたけど、天使かな?」
夏樹の興味はそこで尽きた。
天使くらいくるだろう。
ミカエルさん家のアルフォンスさんは商店街で食堂を開いているし、父親のミカエルさんは夕食時には食堂にいるし、元天使で現魔族のルシフェルさんは頻繁に由良家に顔を出すし、元天使で現魔王のサタンさんは由良家で主夫をして、娘の小梅も居候中だ。
天使の気配がしたからといって、特に興味が掻き立てられるわけではない。
夏樹はビッグネームな神々や魔族と出会っている。
今更天使ではもう驚けない身体になってしまっているのだ。
「あ、小梅ちゃんと銀子さんからメッセージ来てるー。天照大神様とラーメン食ってるじゃん! いいないいなぁ!」
小梅と銀子、天照大神の三人は、すり鉢に入った山盛りのラーメンと格闘しているようだ。
サタンお手製のお弁当はとても美味しい。
しかし、中学生には、味が濃くて量の多いラーメンに食指が動いてしまう。
「……学校抜け出してちょっとアルフォンスさんのお店に行こうかな」
そんなことを企んでいると、屋上に人の気配を感じた。
「――よくも騙してくれたわね」
振り返ると、敵意剥き出しの少女が夏樹を睨んでいた。
「……え? 誰?」




