45「ルシファーな花子じゃね?」②
「あらあら、まあまあ」
割烹着を着た恰幅のよい中年女性は、ルシファー家に入るとテキパキとゴミを片付け出した。
広い一軒家に一人しか住んでいないせいもあり、家の中の空気は淀んでいた。
窓を開けて、空気の入れ替えをする。
あっという間に、一階を綺麗に片付けた女性は二階に足を進める。
異臭、とは言わないがゴミや酒の匂いが鼻につく。
廊下の窓を開けながら、目的の部屋に辿り着いた。
「こんにちは、花子ちゃん」
「…………あん? 誰?」
床で寝ていた部屋の主――ルシファー・花子は声をかけられて、うっすら目を開ける。
そして、すぐに意識を覚醒させた。
「って、ガブリエルおばちゃん!?」
「こんにちは、花子ちゃん」
「……あ、こんにちは。って、そうじゃなくて! なんでおばちゃんがウチにいるのよ!」
「人間界で働いている三郎ちゃんから連絡が来てね。家がゴミ屋敷になっているからなんとかしてくれって言われたから来てみたら、本当にゴミ屋敷になっているんだもん。びっくりしちゃったわよ」
三郎とは、ルシファー家次男のルシファー・三郎のことだった。
彼は、人間界で医者をしているため、天界に帰ってくることは稀だが、先日帰省した時に家の惨状を知り、信頼できるガブリエルに連絡したのだ。
「三郎……余計なことしやがって」
「その様子じゃ、婚活はうまくいっていないみたいね」
「が、ガブリエルおばちゃんにはお世話になっているけど、口出ししないで! 私に釣り合う男がいないだけよ!」
「あらまあ。そんなに上手くいかないのなら、うちのガブ太郎なんてどう?」
「ガブ太郎って誰!? そんな名前の子供いたっけ!?」
「次男よ。最近、日本っぽい名前に改名したの」
「……日本っぽいかしら、ガブ太郎? あれ? 太郎がつくから、日本っぽい?」
寝起きであることもあり、花子は深く考えなかった。
寝起きでなくとも、思考はちゃんと働かなかったかもしれない。
それもそのはず、妹小梅から中学生の男の子とのイチャついている写真を大量に送られてきたことを一件に、今まで以上に婚活に挑んだ。
妹がハンカチを噛みちぎるくらい高スペックの男を捕まえようと頑張った。
今までない以上に頑張ったのだが、結果は結婚相談所を出禁になった。
そして数日焼け酒をしていたのだ。
「この様子じゃあ、仕事のオファーのメールも見ていないようだねぇ」
「仕事のオファー? なにそれ? しばらく携帯さえ触っていないからしらない」
「日本の神々からぜひにと依頼だよ」
「日本の神々ぃ? 言っておくけど、この私に相応しい仕事じゃないと引き受ける気ないから。――って、なにこれ? は? 土地神?」
充電が切れかかっているスマホを操作すると、ゴッドからメールが来ていた。
日本の向島市という地方都市で、土地神をするようにということだ。
「……向島市って、小梅がいる土地じゃない! そんなところで土地神!? ていうか、オファーっていうと聞こえがいいけど、これ拒否権ないじゃん! なによ、良い加減に働けって!」
花子がゴッドからのメールに文句を言っている間に、ガブリエルはゴミの溢れ返った部屋を片付け、スーツケースに衣類を詰め込んでいた。
「はいよ、花子ちゃん! いってらっしゃい!」
「早っ! 準備早! せめてシャワーくらい浴びさせてよ! もう数日入っていないんだから!」
「もう花子ちゃんったら……小梅ちゃんだってもう少ししゃんとしているのに」
「あの子の話はやめて!」
「ちゃっちゃとお風呂入ってきなさい。その間に、おばちゃんご飯作っておくから」
「はいはい」
「はい、は一回」
「はーい」
「伸ばさないの」
「はい!」
ガブリエルに引っ張られて一階に移動すると、数日ぶりのシャワーを浴びた花子は、ふと思う。
「……いいわ、小梅と同じ土地で高給取りのイケメンをゲットしてやる! くけ、くけけけけけけけけけ!」
天使のくせに悪魔のように高笑いする花子が、水無月雲海にしばかれるまであと少し。
ルシファーさん家から長女花子さんがin向島市death!
ちなみに、次男三郎さんは、昔みた解体新書で「――きゅん」してから医者をしています。
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書籍版『異世界から帰還したら地球もかなりファンタジーでした。あと、負けヒロインどもこっち見んな。』2巻が2/7発売となります!
これも応援してくださった読者様のおかげでございます!
カバーイラストはやっぱり小梅さんがセンターを飾り、なんとついにマモン氏もイラストに! ていうか、カバーにいます!
他にもサタンさん、春子マッマ、アルフォンスさん、蓮くんも描き下ろしていただいておりますのでお楽しみに!
ご予約、何卒よろしくお願いいたします!




