42「お別れの時間じゃね?」②
「お別れって、何を言うとるんじゃ?」
「そうっすよ! まだこの街に戻ってきたばかりじゃないっすか!」
突然、「お別れ」と言われ、さすがに小梅と銀子は慌てた。
天照大神からふざけた様子はない。
本当に「お別れ」をするために会いにきたのだとわかってしまった。
「異世界のお話は聞きました。向こうで、アポローン殿と会ったみたいですね」
「……夏樹が会ったって言っておったのう」
「私たちはお会いしていないっすけどね」
「アポローン殿は、新たな神々のトップである太陽の神の封印役となりました」
「夏樹くんもそんなこと言っていたっすけど、そもそもなんなんすか、その太陽の神って!?」
「新たな神々」を知っている銀子だが、「太陽の神」という存在までは知らなかった。
しかも、神々が封じているということも、だ。
「本当におったんじゃなぁ、太陽の神は」
「はい。存在しています。名前も、行動理由も、何もかも不明ですが、圧倒的な力を持つ新たな神々にとっての太陽です」
「小梅さんは知っていたっすか?」
まるで聞いたことがない銀子に対し、小梅は聞いたことだけはあるらしい。
小梅が頷く。
「俺様も詳細は知らんのじゃが、そういう神がいるというのは知っておるんじゃ。ただ、いつ生まれたのか、名前、何も知らん。まさか、封じとるお前らが知らんとは思わんかったが」
天照大神は困った顔をした。
「神や魔族が新たに生まれることは珍しいことではありません。人々の文化が発展すれば、それだけ変化は起き、自分たちにも影響があります。それは、自分であっても、小梅さんであっても逃れられないでしょう」
「そうじゃな」
「太陽の神がいつ生まれたのか、自分たちも知りません。ですが、太陽の神はいました。新たな神々を名乗る神を率いて……いえ、率いていたのかさえ不明ですが、とにかく自分たちと戦ったのです。この戦いで、多くの神が力を失いました。自分もそうです」
「……ちょっと待ってほしいっす。照子ちゃんみたいな神々が戦って力を失っているのに、太陽の神って生きているっすか?」
「――はい。自分たちには殺せませんでした。封じることが精一杯でした。自分をはじめ、力がある太陽神が協力して太陽の神を封じました。封印の中で時間をかけて緩やかに殺せることがわかったので長期戦としたんです。時間だけならありますからね」
だが、想定外のことがいくつか起きたらしい。
「統一されていなかった新たな神々が、我々を古き神と呼び新たな神話を作ると言い出しました。それくらいなら、さほど問題はないのですが、太陽の神が抵抗を始めました」
「不味くないっすか!?」
「はい。まずいです。ですが、大きな問題ではないのです。当初の予定通り、自分たちは封印に徹します。本来ならば、アポローン殿も本格的に封印に関わるのは遠い未来でしたが、他の太陽神や連なる神が一瞬だけ封印から逃れようとした太陽の神を抑えるのに力を使い果たしてしまったのです」
「まさか、照子ちゃんも?」
「――――はい」
天照大神は説明を続けた。
「太陽の神を封じる術式の核は、自分です。本来ならば、封印と同時に長い眠りについていたはずですが、他の太陽神の協力もあり、現在の自分を形づくり人の世で生きることができていました」
その中で、銀子と共に学生時代を送り、ネットゲームに嵌り、水無月家で友好を深めた。
「新たな神々の動きがいまいち読めないので、問題はないといいましたが、封印を許可した上で、緩やかにではなくできるだけ早く太陽の神を殺すことに決めました」
「それで、お別れっすか?」
「はい。すでにアポローン殿が、封印に加わりました。自分もこれから封印に加わります」
――そのために、別れを伝えにきたのだ。
友人として親しくしていた銀子と小梅に。




