間話「お正月でまもんまもんじゃね」①
――時系列は気にしないでください。
――青森某所。
「さまたん、あけましておめでとうございまもんまもん!」
「……はい。あけましておめでとうございます」
さまたんの家の茶の間。
畳の上で、さまたんとマモンが正座して挨拶をしていた。
「今年は目指せ登録者百万人でまもんまもんですね!」
「無理だろ。普通に無理だろ」
「いけまもんまもん! 先日の、猪ワンパンで倒してみたがバズったではありまもんまもん!」
「バズったって言うか、大炎上だったけどな! あと運営に関わっている魔族や天使から、――あの、明らかに人外アピールするのやめてもらってもいいですか? みたいなこと言われて何度謝罪したと思ってんだ!」
「……しかし、ワンパンしたのはさまたんでまもんまもん」
「その瞬間を動画に撮ってアップしたのはお前だろ! ていうか、いつの間に撮ってたんだよ!」
油断も隙もない、とお怒りなさまたんに対し、マモンはドヤ顔をした。
「実は、常にアクションカメラを装備しているのでまもんまもん」
「――は?」
「いやー、数年前に悪事の合間にママチャリにつけて動画撮って遊んでいたことがありまもんまもんですが、最新のモデルを買ったら鼻水が出るほど高くてまもんまもんでしたねぇ。ぶっちゃけ、家電量販店を更地にしようとしてしまいまもんまもん」
「ツッコミどころが多すぎてうぜぇ! 正月からうぜぇ! なんで悪事の合間にママチャリ乗ってんだよ! ママチャリに乗っただけで動画撮る必要ねえだろ! あと、その動画をアップしないくらいの良心があったんだな! 最後に、いつのまにアクションカメラを買ったんだよ!」
ぜーはー、と肩で呼吸しながら、ツッコミをやり切った顔をするさまたん。
マモンもつい拍手をしてしまった。
「まもんまもんちゃんねるの収益で良いのを買ってしまいまもんまもん。俺のまもんまもん私産はサタンのまもん野郎に凍結されていまもんまもん」
「そういえば、そうだったな。でも、割とこっそり私産取りに行ってるよね?」
「隠しまもんまもんもあるのでまもんまもん。あと、サタンは人間界で春子さんにアプローチが忙しいので、他のことをしている時間がないでまもんまもん」
「太一郎くん……最近じゃ、由良さん家で専業主夫しているみたいだぜ」
「専業主夫と言えば聞こえがまもんまもんですが、居候じゃないでまもんまもん」
「それを言っちゃかわいそうだよ!」
「春子さん的にはあまり脈はないように思いまもんまもん」
「は? なんで、お前がわかるの?」
「ときどき春子さんとメッセージのやり取りしますけど、サタンの話題はありまもんまもん」
「なーんでお前が夏樹くんのママの連絡先を知ってるんだよ!」
「蓮のことを気にかけてくださっているでまもんまもん!」
「それなら、仕方がないか」
「まもんまもん」
「でも、一応サタンには言うなよ」
「それはお約束できまもんまもん」
にやり、と笑うマモン。
いつかサタンに伝えて精神的ダメージを与えるつもりだろう。
最近は、魔族らしくなかったが、久しぶりに魔族らしいところを見た気がする。
「さて、そろそろお餅を食べままもんまもん!」
「高橋のおじいちゃんがさっき持ってきてくれたんだよなあ! 楽しみだなぁ! 毎年楽しみにしているんだよ」
さまたんは毎年、今年はまもんも餅つきに呼ばれていたが、高橋のおじいちゃんのご家族も来ているので遠慮してしまった。
やはり自分たちは魔族だ。あまり人と接するべきではない、と考えてしまったところもある。
この辺りに住んでいる人たちは、なんとなく察しているようだが、帰省してきた人にとってさまたんとマモンは少し異質に映るのだ。
残念だが、仕方がない。
「――とりあえず、きな粉でいきまもんまもん」
「はぁ? まずは醤油と海苔だろ!」
「まもぉん?」
「ああん?」
睨み合うふたりだが、せっかくの正月なので喧嘩はせずそれぞれ好きなものを食べることにした。
「あ、さまたん様。お餅を喉にまもんまもんと詰まらせないくださいまもんまもん」
「私はお年寄りか!」
「……お年寄りだと思いまもんまもん」
「……お前もな」
「……まもん」
正月早々、ちょっと悲しくなったさまたんとまもんだった。
――正月の青森も平和だった。




