18「夢の中じゃね?」①
「あ、あれ、ここは?」
急な眠気に襲われた夏樹が目を閉じ、目を開けると、喫茶店ではない別の世界にいた。
「って、なんだここ!?」
「ガープも一緒にいるし、なんで?」
「ガープさんって言えよ。……まあ、今はいい。ここは、夢の中だ。ばっくんは俺も巻き込みやがったな」
「……夢って誰の?」
「さっきの話の流れなら、綾川杏のでしょう!? いきなり魔王サタンの夢の中とか入りたくねえだろ!」
不思議な感覚だ。
夢の中だと言うのに、意識も思考もはっきりしている。
たまに意識がある夢を見ることがあるが、それとはまるで違う。
もっと鮮明だった。
「ていうか、ここって……俺の家じゃん。あれ? でも、雰囲気が違う?」
「夢の世界っていうのは、自分が一番心地よく感じた場所や、心に残る場所、景色、光景が反映される。たまに、心象が本人の覚えがない全く違う形式になることもあるようだが」
「ふーん」
とりあえず、壁を力を込めて殴ってみた。
手応えがあったが、壁が破壊されることはない。
手の痛みはあるが、力に対して弱い。
「なにしてるの!? 情緒不安定!?」
「……壊せるかなーって」
「杏の心の中を壊したらダメでしょう!? 魔族でもわかるよ、そういうことしちゃダメって!」
「……お行儀のいい魔族だなぁ」
「お前がお行儀悪すぎるんだよっ!」
感覚はあるが、夢はあくまでも夢のようだ。
その証拠に、雷が出せない。
「まさかとは思うけど、俺とあんただけで杏をどうこうするってことはないよね?」
「さすがにそれはないだろ。ていうか、一番心を砕いている一登がいないのはありえないだろ」
「――あんたが一登の何を知ってるんだよ!?」
「へへーん! 俺はお前がアマイモン様と戦っている間に、杏を神剣の支配から解放するために一登と一緒に戦ってたんですぅー! もう友達だもん!」
「きぃぃぃぃっ! 一登くんの人外タラシ!」
共闘したことは知っていたが、まさかガープが一登を友達認定するとは思わなかった。
相変わらずな一登に少し安心した。
「一番の友達は俺だから! 親友枠ですから! なんなら兄弟ですから!」
「めっちゃ張り合うじゃん」
夏樹が、あくまでも自分が一登の一番の友人だと主張していると、
「あ、いたいた! 夏樹くん! ガープさん!」
「おおっ、一登! 俺の幼馴染みにしてズッ友であり、大親友で、兄弟のような関係の三原一登くん!」
「う、うん。どうしたの急に?」
「なんでもないよ。で、一応これで全員集合でオーケー?」
「そうみたい、だね」
一登だけではなく、小梅と銀子、千手と虎童子、そして漠のマレーさんも夢の中に来ていた。
さすがにゴッドは来ていないらしい。
「ところで……ここって」
「由良さん家のお宅じゃのう!」
「杏さんの心の中が、このお家って少し意外だったっす」
小梅と銀子も気づく。
ここが由良家であると。
玄関の外に集まる一同は、家の中に杏がいるとわかった。
「……変だと思ったら、これって今のウチじゃないなぁ。ほら、向こうのマイケルさん家がまだ引っ越してきてないから、以前の松川さんの家のままだし」
「――マイケル!? 町内にマイケルおったんか?」
「いるよ! 気さくなご家族だよ! 前も、バーベキューに呼んでもらったもん!」
「あ、相変わらずコミュ力が勇者すぎるっす」
「マイケルのことはいいんだよ! なんでお前たちは話が脱線して斜めどころか空の彼方に吹っ飛んでいくんだよ! おかしいだろ! 早く杏を助けてやろうって気にならないのか!」
夏樹たちのいつもと変わらないトークに、ガープが怒り出す。
一登が「――ガープさん」と感動した顔をしている。
「俺は別に綾川さん家の杏さんがどうなろうとしったこっちゃねえ」
「……俺は問いたい。――こいつのどこが勇者だ!」




