14「異世界三度じゃね?」①
投稿ミスしていました。申し訳ございません。
由良夏樹は、異世界から帰還した聖剣に選ばれた勇者である。
異世界も、魔法もなにも知らなかった一般人だが、異世界に召喚されたことでファンタジーという沼に足を踏み込むことになってしまった。
――そして、まったく嬉しくない三度目の異世界召喚。
「おおっ、成功したぞ! 勇者だ! 勇者が現れた! これで、我が国が世界を支配できる!」
黒いローブを被った魔法使いらしい者たちが、夏樹を見て大きな声で喜んでいた。
彼らの言葉から、夏樹と聖剣さんは「あ、ハズレじゃね?」と思う。
そんな夏樹たちに気づかず、ローブを被った面々が夏樹を取り囲む。
「さあ、勇者殿! 王がお待ちです!」
「王様ぁ? なんでぇ?」
あえて聖剣さんは顕現しないようにしている。
ここで彼女を見せたら、彼らがなにを思うのか不明だからだ。
「まだ事態が飲みこめていないのですね……ちっ」
「今、舌打ちしなかった?」
「そんな失礼なことはしたりしませんとも。失礼、まずは自己紹介を」
明らかに舌打ちをした男がローブを取る。
白い髭を蓄えた、初老の男性だった。
「私はトマスと申します。宮廷魔法使い筆頭という立場です」
「魔法使い?」
「ええ、そうです。そうですとも! あなたは、大陸一の魔法国家ゼンリッツ魔法王国に勇者として召喚されたのです!」
「お、俺がですか!? そんな、勇者なんて!」
「そう驚かれるな。見たところ、勇者様は素晴らしい魔力をお持ちのようだ。私ほどではないが」
「うん?」
「いえいえ、素晴らしい魔力をお持ちですね。さすが勇者というべきでしょう。さあ、詳細は王が直々にお話ししますので、こちらへどうぞ!」
「は、はい」
「はははは、そんなに緊張せずとも良いのですよ。王は気さくな方です。勇者であるあなたを無下にすることはまずありえませんので、ご安心ください」
全力で作り笑いをしている夏樹は、小刻みに身体を震わせていた。
その震えを緊張、不安とトマスはとったようだが、とんだ勘違いだ。
今にも剣を抜いて首を斬り飛ばしたい衝動を必死に我慢しているのだ。
勝手に召喚しながら、謝罪もなく、名も訪ねず、上から目線。
助けて欲しいのではなく、利用する気満々だ。
「さあ、こちらに」
「はーい」
背を向けるトマスの後ろを軽快なステップでついていく。
王の元まで向かう廊下は煌びやかで、これでもかと贅が尽くされている。
勇者召喚をするほど切羽詰まった感じはない。
(――夏樹、落ち着くのよ。まだ早いわ)
(わかっているよ、聖剣さん。殺るなら王がいるところでね)
(そうよ。わざわざ手間をかける必要はないからサクッとやってしまいましょう)
(にちゃぁ)
(にんまぁ)
夏樹と聖剣さんは、トマスひとりを殺しても何も解決しないことを理解している。
なので国のトップである王からサクッと殺そうと決めて、にこやかに微笑んだ。




