4「誤解されているんじゃね?」
祐介とソーニャは走りながら、ブレイバーズ王国の追手から逃げていた。
「くっ、諦めの悪い奴らだな! ……騎士団長がぶっ殺されて、王女の腕が斬り落とされたんだから責任を私たちに取らせたいのはわかるんだけど、なっ!」
祐介と手を繋ぎ、走り続けるソーニャが悪態と共にナイフを投げる。
ナイフは血走った目で追いかけてきた王国兵の喉に突き刺さる。
喉を抑えてもがき苦しむ仲間の姿に、他の兵が尻込みする。
その間に、ふたりは少しでも時間と距離を稼ごうと、走り続けた。
「待て! 貴様ら! ブレイバーズ王国を敵に回して無事に済むと思うなよ!」
兵士のセリフを聞きながら、ソーニャは中指を向けた。
「知るか!」
ソーニャの身体能力は、魔族としては一般の範疇だ。
ダークエルフの中でも、特別魔法に長けるわけではないソーニャは、ナイフと弓の使い手であるが、それだけしか秀でたものがない。
祐介を抱き抱えて、城下町の城壁を越えて街道に出るところまではよかったが、そこで限界が訪れた。
身体強化もできるが、それは短い時間限定という制約がある。
「ご、ごめん、僕のせいで。僕のことはいいから、メイドさんだけでも逃げて」
「馬鹿野郎! ここでお前を置いて逃げたら、私の行動の意味がなくなるだろう!」
祐介の魔力を封じていた枷によって、魔力を吸収されていた。
そのせいで、せっかく枷から解放されたのに、魔力不足で自らを回復することもできない。
枷によってできた手足の傷はひどく、血を流している。
鞭で繰り返し叩かれた背中も、目を背けたくなるほどの傷を負っている。
「せめて私が回復魔法を使えていれば……悪い」
「いいんだよ、メイドさんが謝る必要なんて。それに、みんなと合流できれば」
「みんなって、仲間がいるのか?」
祐介は、頷く。
「本来は、一緒にこっちの世界にくるはずだったんだけど。あんなことできるのは夏樹くんだけだし、何よりも離れていてもはっきりわかる強い魔力は間違い無いよ」
「待てよ、夏樹って誰だ? まさか、由良夏樹とか言わないよな?」
「え? 夏樹くんのこと知っているの? あ、そうか。あの王女のメイドさんだったんだから、顔見知りか」
「ま、待て、まさかとは思うけど、由良夏樹って異世界から召喚された勇者由良夏樹であっているのか!?」
「え、うん。その夏樹くんだよ」
「――ひゅっ」
ソーニャの言葉を祐介が肯定すると、彼女は喉の奥から変な声を出した。
そして、ガクガクと膝を震わせて、その場に崩れ落ちてしまう。
幸い、追手は見えないので問題はないが、祐介はソーニャの過剰反応に驚いてしまう。
「――魔王様よりも魔王みたいな勇者がこの世界に舞い戻ってきているとか……あ、終わった。この世界終わった。魔族滅んだ。絶対滅んだ」
「いやいや、そんな大袈裟な。夏樹くんはいい人だよ」
「馬鹿野郎! 由良夏樹の恐怖を知らないからそんなことを言えるんだ!」
「えー。でも、今回は魔族サイドで戦う予定だよ?」
「…………ま?」
「うん。マジマジ」
ソーニャが涙を流してガッツポーズをした。
「魔族の大勝利確定だぁあああああああああああああああああああ!」
「夏樹くんが最終兵器みたいな扱いになっている件。……気持ちはわかるけどさ!」
祐介くんとメイドさんの逃亡は続く!
なっちゃん「善良な思春期ボーイを捕まえてこの扱い! ひどくて泣きそう!」
小梅ちゃん「いや、間違っておらんじゃろう」
銀子さん「間違ってないっすねぇ」
なっちゃん「ひどい!」




