92「打ち上げは楽しいんじゃね?」②
「――祐介くんが鬼娘を紹介してほしそうに酒呑童子を見ているぅ」
「自分で言うなよ、佐渡。あと瞬きしろよ、怖えよ」
祐介はじぃっと瞬きもせず酒呑童子を見つめていた。
その瞳は、血走っている。
となりで熱燗を虎童子にお酌してもらいながらちびちび飲んでいる千手は引き気味だ。
「……千手さんはいいよね。とらぴーとちゅーして、フラグ建てちゃったし。安倍音叉さんもちらちら千手さんのほう見てるし……気づいた時には千手ハーレムできているんですね、わかります」
「わかんねえから」
「つーか、あたいをとらぴーって呼ぶのやめろ! きめえんだよ!」
「ほらぁ! 僕ばっかりひどい扱い!」
虎童子の苦情に、祐介はシクシク泣き出した。
「……いや、お前が熊童子と虎童子を舐めたりするからだろうが」
「そうだそうだ!」
「くまくま!」
「妹たちに破廉恥なことしやがって!」
「うわーん!」
千手の真っ当な返答に、虎童子、熊童子、星熊童子が頷く。
祐介は顔を覆って泣いた。
そこへ、東雲と酒を酌み交わしていた酒呑童子がやってくる。
「おっちゃん、ちょっとだけ祐介が可哀想になってきたんだが。星熊、お前がちょっと付き合ってあげろよ」
「嫌だ! ふざけんな! 俺はこんな戦いの最中に肉球や足を舐めるような奴なんてごめんだね!」
「……うん、まあ、そうだよねぇ。おっちゃん的にもそれはどうかなって思うかなぁ」
星熊童子の意見に、酒呑童子がつい同意してしまった。
祐介は泣き真似をやめて、期待するようにちらちら酒呑童子を伺っている。
「鬼も人間の伴侶がほしいって奴は多いんだよ。この間も、ほら、おっちゃんは直接しらねえけど、人間と結婚した鬼がいただろ。時代だよなぁ」
「だからって、俺はこいつは嫌だ!」
「くまくまくまっ!」
「あたいも旦那様を見つけたんだから、こんなやつはごめんだ!」
千手は虎童子が自分を旦那様と呼ぶことに、気づかないふりをして酒を飲み続ける。
祐介の相手は面倒臭いが、虎童子の相手もどうしていいのかわからず悩む。
助けを求めるように視線を漂わせていると、円と一緒に夏樹とラブコメしている小梅と目が合った。
千手が手を合わせて「なんとかしてくれ」と願うと、察したように彼女が親指を立ててくれる。
「くぉら、祐介! ――おどれには向島でビッグネームの魔族女が待っとるぞ!」
小梅の言葉に、祐介は立ち上がった。
「――それは本当かい?」
「お、おう。祐介のことを気に入ったようでのう。ワンチャンありかもしれんぞ」
「――とぅくん」
「いや、まだとぅくんは早いじゃろう」
まるで恋する乙女のようにときめく祐介に、千手は呆れ、他の面々は「現金なやつだなぁ」と笑う。
そわそわしだした祐介にちょっと気色悪さを感じながら、千手は首を傾げた。
「あの、小梅の姉御。佐渡と向島の魔族に接点なんてあるのか? なぜか向島には神も魔族もこっそり暮らしているから会っていてもおかしくねえけどさ」
「ちゃんとあっとるぞ」
「そうなのか?」
「うむ。なんなら、今朝会っとる」
「……佐渡、心当たりは?」
千手の問いかけに、祐介が「わからない」と真顔で悩む。
「僕が会ったといえば、サキュバスさんを紹介してくれるというリリスさんしか……」
「おいおい、まさか」
祐介の口から飛び出したビッグネームの名前に、千手の顔色が青くなった。
小梅はにんまり笑うと肯定した。
「そのまさかじゃ! 俺様のママ、リリスが祐介を気に入っとるぞ!」
「なにそれこわい!」
千手さん「……誤解されたくないんだが、一応な。割とついていない佐渡が魔族のリリスに気に入られたってラッキーなのか? アンラッキーなのか?」
なっちゃん「……どっちだろう? でも、祐介くん的にはラッキーじゃね? かっこいい系な美人さんだよ」
小梅ちゃん「娘から言わせてもらうと――アンラッキーじゃな!」
千手さん「マジかよ!?」
なっちゃん「マジで!?」




