91「打ち上げは楽しいんじゃね?」①
「えー、それでは僭越ながら、おっちゃんこと酒呑童子が乾杯の音頭をとらせていただきます。――向島市からやってきた勇者御一行の歓迎とお別れ、そして安倍家潰れてよかったね、酒呑童子は殺せなかったけど茨木童子だけで勘弁してね、円くん呪いが解けてよかったね、を祝して乾杯!」
「かんぱーい!」
「乾杯じゃぁあああああああああああああああ!」
とある京都の料亭の座敷を貸切、由良夏樹と愉快な仲間たちは、京都妖怪と安倍兄妹と宴会をしていた。
酒呑童子と玉藻前の名が通じるお店だったようで、予約もしていないのにお店にすんなり入ることができた。
中学生の夏樹にもわかる。
この店は高い、と。
「ふー、ふー、はい、なっちゃん、あーん」
「……あ、あの、円ちゃん? ひとりで食べられますけど?」
「…………せっかくちゃんと再会できた幼馴染みと交友を深めたいだけなんやけど、迷惑なら」
「あーん! おいちい!」
「ふふっ、ならよかったわぁ」
左隣に座る円が夏樹に豆腐を「あーん」する。
少し驚いたが、昔はたこ焼きを「あーん」をした仲だ。
あまり気にしないことにした。
「ほう……やるではないか、安倍円。ほれ、夏樹。俺様もあーんしてやるんじゃ!」
右隣に座る小梅が、ビールを飲み干したグラスを置くと、円に対抗するようにスプーンで豆腐を掬い夏樹に「あーん」した。
「あ、あーん……熱っ、ちょ、熱っ、ふーふーして! ふーふー!」
「おお、すまんすまん」
想像以上に熱かった豆腐を口に入れられて夏樹は慌てるも、異世界の勇者は我慢できた。
ちゃんと小梅にも「ふーふー」した後に「あーん」して貰えてご満悦だ。
(――五万までなら払うね!)
ちょっといけないことをしている気分だった。
夕食は湯豆腐だけではない。食膳にならぶのは、冷奴、胡麻豆腐、油揚げ、煮物、漬物が色鮮やかだ。
少し後に、お肉や炊き込みご飯も出てくるようなので、わくわくしている。
「……ぐぬぬ、円が元気なってくれたのは嬉しいけど、プリンスの隣にちゃっかり座って」
「そのプリンスってやめろよ、聞いていて恥ずかしい」
「プリンスにプリンスって言って何が悪いの!?」
「きっと河童王国のプリンスなんだろうなぁ」
夏樹と楽しそうにしている円を、きららと音叉が眺めながら会話する。
そんなふたりの隣で、東雲と熊崎も笑みを浮かべていた。
「……この数年間、大変やったけど、円の顔を見て報われたわ」
「東雲さん、お疲れ様でした。ささ、一献」
「ありがとうね」
熊崎に注いでもらった酒を東雲が美味そうに飲む。
彼の様子を見て、酒呑童子が近づいていく。
「よう、いい飲みっぷりだな。俺とも飲もうぜ」
「酒呑童子はんと酒を飲めるなんて、自分は幸せもんやわ」
「ははは、言うぜ」
お互いに酒を注ぎ合い、杯を掲げる。
「娘が申し訳なかった。俺は今後、お前たち兄妹とその仲間の力になると約束する」
「……酒呑童子はん……おおきに」
ふたりは揃って酒を飲み干した。
「やべぇ、俺ってかなり重要な光景を目撃した気がする」
熊崎は安倍家の人間と酒呑童子が酒を酌み交わす瞬間に、驚きと感動を禁じ得ないようだ。
「ところで……」
「おう」
「あちらでものすっごく期待する目で酒呑童子はんを見とる子はどうするんかな?」
「……どうしようかなぁ」
三人がそっと視線を向けると、大地の勇者佐渡祐介が血走った目を酒呑童子に向けながら、湯豆腐を食べていた。
祐介くん「玉藻前様が巫女服から艶やかな着物姿に……しかも幼女……たまんねえなぁ」
千手さん「飯くらい静かに食えねえのか」
祐介くん「……自然にとらぴーにお酌してもらってる千手さんには僕の気持ちはわからんとです!」
千手さん「……お前、飲んで、はいないようだな。いや、素面でそれが逆に怖い」
ちゃっかり千手さんの隣に座ってお酌する虎童子さんでした。
星熊童子さんと熊童子さん(人化)もいるよ!




