81「戦いの終わりじゃね?」①
「――さようなら、茨木童子。異世界から帰還してから最低の戦いだったよ」
夏樹の腕から剣が落ちる。
地面に触れる前に、大量の水となって広がっていく。
裏京都すべてが浸水した状態に戻ったが、これ以上の海水は出て来ず止まっていた。
夏樹の足元には、両断されて血を流している茨木童子の亡骸がある。
水が赤く染まり、茨木童子は目を見開いたままだ。
「最後の最後まで自分のことしか考えてなかったな。せめて、俺と円ちゃんを襲わずにただの鬼として出会ってれば、……今頃カップル系動画配信者として有名だった未来もあっただろうに」
「いや、そんな未来はないじゃろう!」
「あ、小梅ちゃん」
夏樹の隣に小梅が立つ。
「よう頑張ったのう。今回は破壊らしい破壊もせんかったんで上出来じゃ」
「あざーっす」
「それにしても……海の勇者の力を初めてみたが、えぐいのう。海を召喚するとか、びっくりじゃわ。なんで早く使わんかったんか?」
「……聖剣さんが海の勇者の力を使うと不機嫌になって力を貸してくれなくなるから」
「……あの小娘も面倒臭い奴じゃのう」
そんな聖剣さんは海の勇者としての力を使用するにあたり、肉体的にも魔力的にも未熟な夏樹の代わりに補助をしてくれていたことが原因で、しばしの休止状態に入っている。
また元気な姿を見せてもらいたいと思う。
「……ごめん、ちょっと眩暈が」
「しっかりせんかい!」
よろめく夏樹を小梅が支える。
聖剣さんのフォローがあったとはいえ、限界を超えた力を使い続けてしまい、限界が近かった。
「……だ、大丈夫。聖剣さんが制御してくれたおかげで、力を暴走させずに済んだし、消耗も魔力と体力だけですんだよ。しばらく戦いたくないかなぁ」
気を抜けば気絶してしまいそうだ。
小梅に肩を借りた夏樹の前に、千手、祐介、東雲が来てくれた。
「――夏樹くん、ありがとう」
「どういたしまして」
「円の呪いも解けとる。ほんま、ありがとう!」
茨木童子の亡骸を一瞥した東雲は、円を抱えたまま深々と頭を下げた。
「さすがに茨木童子が強すぎて笑えなかったぜ」
「それは俺もびっくり。俺の血を飲んだからってこんな強くなるかなぁ」
「そんなことよりも!」
千手が夏樹に肩をすくめると、祐介が叫んだ。
一同が視線を向ける。
「千手さんが鬼っ子ハーレムを築いたんですけど! 僕から鬼っ子を寝とったんですけど! どこに訴えればいいんですか!?」
「別に寝とってねえし」
「そもそもおどれの女じゃないじゃろうて」
「がつがつしたらあかんよ」
「そんなことしりましぇーん!」
千手、小梅、東雲、そして夏樹がいつもの調子を取り戻して笑う。
「さて、千手さんのハーレムになったのかどうかはさておき、お前らはこれからどうする?」
ひとしきり笑った後、こちらを見つめながら動けずにいる星熊童子、虎童子、熊童子に夏樹は声をかけた。
祐介くん(黒)「僕のお嫁さんになるなら悪いようにはしないよぉ」にちゃぁ
小梅さん「あ、悪党がおるんじゃが! 仲間にクッソ悪党がおるんじゃが!」




