68「ラブコメの終わりじゃね?」①
「――か、は」
「あね、き」
「く、ま」
同格のはずの星熊童子、虎童子、熊童子が呼吸できず、喉を抑えて倒れる。
ラブコメっていた千手も、浴びたことのない霊力の圧迫に意識を飛ばしかけ、泡を吹いていた。
「……なんて力だクソッタレ。ラブコメしてたのに、最悪な空気にしやがって」
「酒呑童子もびっくりな力じゃわ」
「……こんなん力……僕でも知らんかったわ」
夏樹も余裕はなく、小梅も脂汗をかいている。
東雲だけが、圧を受けていないので平気なようだが、それでも驚愕は拭えずにいた。
「少し表に行っている間にこれはどういうことかしら? 屋敷は壊れているし、しののんは来ているし……説明なさい」
冷たい声を出すのは、――茨木童子。
酒呑童子の娘であり、かつて夏樹と円を襲った鬼でもある。
現在は酒呑童子に変わり、裏京都の鬼を統べる絶対的存在だ。
――その力は、夏樹の血で全盛期を取り戻した酒呑童子よりもはるかに上だった。
「待ちいや!」
「……あら、どうしたの、しののん。まさかしののんが私の屋敷を知っているなんて思わなかったわ。不出来な妹たちでごめんなさいね。お茶のひとつも出せないなんて」
東雲にだけ笑顔を浮かべた茨木童子は、近くに倒れる姉妹の腹をなんの躊躇いなく蹴り飛ばした。
妹たちが血を吐こうと、眉ひとつ動かさない。
「――仮にも妹たちになにしとるん! それに、お前の手に引きずっとんのは誰の弟だと思ってるんや!」
東雲の叫びに、茨木童子が左腕で掴んでいるのが安倍円の足であることを夏樹たちは理解した。
あろうことか茨木童子は、意識のない円の足を掴んで引きずって現れたようだ。
星熊童子たちは人間味があったが、茨木童子はまるでない。
まさに鬼だった。
「しののんの弟でしょう? 名前だってちゃんと覚えているわ、安倍円よね」
「……自分の弟になにしてくれとるんや! 離さんかい!」
「それは、だーめ」
「なんやと?」
茨木童子が片腕だけで円を釣り上げる。
「しののんが私と結婚してくれるって言うまで、この子は痛めつけるわ」
「……ありえへん」
「しののんとの付き合いは楽しかったわ。手を出してくれないのは不満だったけど、結婚前に関係が進みすぎるのはよくないものね」
「……なんで円を連れてきたん?」
「しののんが私と結婚する気がないかもって不意に思っちゃったの。せっかくしののんと一緒に暮らす家を建てるために土地を買って、来週は地鎮祭もお願いしてあるから、しののんに一歩を踏み出してほしくて……お願いをしようと思ったの」
「……それはお願いやない。脅しや」
呆れを通り越して恐怖を抱いたように東雲が震えると、茨木童子は口が裂けたように笑った。
「気持ち悪いんだよ! このクソストーカーメンヘラ女!」
次の瞬間、茨木童子の背後に移動した夏樹が聖剣で一閃した。
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