62「大地の勇者の全力じゃね?」②
寒波の神は祐介を射殺さんばかりに睨みつける。
「――お前も邪魔をするのか」
「何を邪魔をしているのか意味がわからないよ。君たちが千手さんを襲わなければ、僕たちは何もしないさ」
「七森千手襲撃は、そこで鬼に好き放題にされている柏原保の提案だ。なんでも魔眼を奪いたいらしい」
「――羨ましいね」
「――は?」
「そんなことのために千手さんを襲ったと言うのか!」
「いや、今」
「僕は許さない! 大事な家族に危害を加える奴は、絶対に、許さない!」
「だから、あの」
祐介は腰を引くして構えた。
「――人外娘さんの守護聖人、佐渡祐介、参る」
「この変態が!」
轟音が響いた。
祐介が一歩踏み出した音だった。
「…………なん、だと」
寒波の神が、その一歩に驚きを隠せていない間に、祐介は彼の間合いに入り込んだ。
「おのれ」
拳が襲いかかるが、しゃがんで避ける。
速く、重い、寒波の神の拳だが、今の祐介には脅威に思えない。
夏樹の拳の方がよほど恐ろしい。
寒波の神の拳は、せいぜい痛くて骨が折れる程度だ。この程度では気持ちがいいくらいだ。
「貴様っ」
しゃがんでいる祐介に蹴りが迫るが、避けることはしなかった。
鈍い音が響き、倒れたのは寒波の神だった。
「僕を蹴り飛ばしたいのなら、神力を限界まで込めるといい。僕は、とても硬いよ」
「祐介くんが下ネタ言ってる! 誰か、捕まえて!」
寝っ転がりながら戦いを見ていた夏樹が、急に卑猥なことを言い出した祐介に非難の声を浴びせる。しかし、祐介は頑なに己の発言の意図を認めようとはしなかった。
「シャラップ! 身体が硬いって言っているの! 身体の一部の話じゃないの!」
「俺、一部とか言ってないし! やっぱり下ネタじゃん!」
「貴様たちはっ、真面目に戦えないのか!」
立ち上がった寒波の神が怒りの形相で拳を放つ。
だが、祐介は軽々と手のひらで受け止めた。
「――な」
「真面目にやれって言いたいのはこっちの方だよ」
ぐしゃり、と祐介は受け止めた拳を握りつぶした。
「もう、うんざりだ! あなたたちの勝手な理由で、僕の家族を襲い、傷つけるな!」
「私には貴様たちを殺さなければならない理由がある!」
「なんだって言うんだ! 千手さんよりも大事なことか! 兄を慕う少年を操ってでも成し遂げることなのか!」
「当たり前だ! 柏原保と一緒にするな! 私は私の信念に従い戦っている!」
「――なら僕も信念に従い戦おう」
祐介はベルトを外し始めた。
この行動に目を丸くしたのは戦っている寒波の神だけではない。
夏樹と千手。
戦っている一登とぱおんも。
柏原保を殺さんとする虎童子も、驚きに硬直してしまった。
――そして、祐介はふんどし一枚となった。
「――大地の神に選ばれし、大地の勇者の本気をお見せしよう」




