94「霊能学校に行く意味なくね?」②
夏樹がゴールデンウィークの霊能学校の見学を断ろうと考えていると、両手に冷やし中華が盛られた皿を持った小梅が台所から茶の間にやってきた。
「まーだ、霊能学校の話をしとるんかい。今日は冷やし中華じゃぞ!」
「僕が作ったよー! 星子ちゃんと菜々子ちゃんを呼んでー」
「はいよー」
夏樹が立ち上がり、階段から二階に向かって声を大にした。
「ご飯できたよー!」
ばちっ、と稲妻が走った。
次の瞬間、茶の間の丸テーブルの前で正座している星子と菜々子がいた。
「……そんな全力出さなくてもいいじゃん」
「私は食の喜びを覚えたのよ!」
「右に同じ!」
「そりゃ異世界で剣やってたら食べる機会はないんだろうけどさ」
背筋を伸ばして目の前にある冷やし中華に集中している星槍姉妹に夏樹はほっこりしながら笑った。
「僕的にはさー、冷やし中華ってなんでも乗せていいと思うんだよね。卵とチャーシューは定番として、きゅうりよりもレタスとか、酸味を求めてトマトとかさ。茹でたキャベツやもやしでもいいよねぇ。昔……夏が近づくとラーメン屋さんをめぐって冷やし中華食べていたよねぇ。味噌の冷やし中華も好きなんだよなぁ」
「昔っていつじゃ? 旧石器時代か!?」
「その時代に冷やし中華があるわけないだろ! 平成だよ!」
「……なんじゃろうな、平成って聞くと心に切ないものがあるんじゃが」
「昭和の方が心に来るでしょ」
「そんなことよりも、早く食べるわよ!」
「もう待てないー!」
星子と菜々子が限界に達しそうなので、まずは夕食にした。
手を合わせて、「いただきます」。
夏樹たちは一心不乱に冷やし中華を啜った。
食後の麦茶を飲んでいると、小梅が改めて霊能学校に関しての話を振ってきた。
「んで、結局どうするんじゃ、霊能学校の見学は?」
「いやー、断ろうかなって思うんだけど」
夏樹の返事に、くわっ、と小梅が目を見開いた。
「待つんじゃ。夏樹、おどれは今冷静じゃない」
「小梅ちゃん?」
何を言い出すんだ、とみんなの視線が小梅に向いた。
「なんじゃ、別に見学くらいええんじゃろう。月読にも普段、世話になっておるんだし。もう見学ありきで話は進んでいるじゃろう。それをやっぱりなしにとなったら月読も先方も困るじゃろうて」
「ちょっと、小梅さん怪しくないっすか? 天上天下唯我独尊みたいなキャラなのに急にどうしたっすか?」
「俺様は生まれてから一度もそんな仰々しいこと言ったことがないんじゃが!?」
銀子も小梅を訝しげに見る。
夏樹も小梅が焦っているように見えた。
星子、菜々子、リヴァ子はデザートのアイスに舌鼓を打っていた。
「小梅さん、悪いことしているのなら罪になる前にゲロっちまったほうがいいっすよ」
「悪いことなどしとらん!」
「じゃあ何を隠しているっすか? 学校見学に何か小梅さんにメリットでもあるんすか?」
「べ、別になんもないんじゃ! 夏樹を見学に連れて行ったら、俺様を中学校に入学させるとか約束していないんじゃが!」
「小梅ちゃん、言ってる、言ってるよ?」
「しまっ――」
「抜け駆けぇええええええええええええええええええ!」
「別にもう制服とか用意してないんじゃが」
「しゃぁあああああああああああああああああああ!」
「くけぇえええええええええええええええええええ!」
銀子と小梅が睨み合う。
夏樹は麦茶を飲み干し、察した。
きっと、ゴールデンウィークはみんなで学校見学だな、と。




