92「GWのお誘いじゃね?」
「それじゃあ、そろそろ晩御飯なので帰りますね」
「……はい。気をつけて、お帰りください」
美脚の神たちと交流した夏樹は満面の笑みを浮かべて満足していた。
対して、不思議なことに月読は心底疲れた顔をしている。
「明日は学校ですから、遅刻をしないようにしてくださいね」
「はーい」
「――そういえば、もうすぐGWですが例の件は本気で考えてくれましたか?」
月読に問われ、夏樹は首を傾げた。
「すみません、最近イベントが多くて覚えていないです」
「では、改めて言いますね。霊能関係の学校の見学に行きませんか?」
「先生、俺は弱いものいじめはしない主義なんです。雑魚と戦っても、ちょっと」
「誰が戦えといいましたか? 学校の見学です!」
「なんで?」
「夏樹くんが水無月家、神無家、七森家に関わったことや、院で名が知られてしまったため、ぜひとも我が校へと誘いが多いのです。断っているのですが、しつこい学校も多くて」
「つまり、その学校を更地にすればいいんですね?」
「違います! というか、このやり取り前にもしたのですけどね!」
ふむ。と夏樹は腕を組んで考える。
正直、霊能力を学ぶつもりはない。
夏樹は魔力を使う。霊能力も理解はできるが、力を取り込んだ場合自然に魔力になってしまう。
まず前提として霊能力者になるつもりがない。学んでどうすればいいというかわからない。
将来、霊能力者になるつもりはない。将来の夢もふんわりしたものしかないが、それでも荒事を職業にしたいと思わなかった。
もう十分異世界でファンタジーもバトルもしてきたのだ。
霊能関係の学校に入学するなんて、三年間毎日がイベントのようなものだ。さすがに嫌だ。
「先生、俺みたいな一般ピーポーが霊能関係の学校に行ったら、いじめられます! よくわからない家の後継にこれでもかっていじめられたり、決闘申し込まれたりするんです!」
「あえて言いましょう。夏樹くんにとってそれのどこが問題ですか?」
「ひどい! か弱い中学生を捕まえてそんなこと言うなんて! 涙が出ちゃう!」
「誰がどう考えても夏樹に喧嘩売った奴の家が物理的に消える未来しか見えんのじゃがのう!」
「そんな! 小梅ちゃんまで! そりゃ、俺は喧嘩売られた瞬間首を刎ねるかもしれないけど! ちょっとでも気に入らないことがあったら院のトップであるすさすさにチクるけれど!」
「無敵じゃろう!」
「権力って素敵!」
夏樹は本当に言葉通りのことをするだろう。
素盞嗚尊は月読が止められるが、夏樹の瞬間的行動を逐一見張っていることはできない。
「真面目に聞くんじゃが、こ奴を本気で霊能関係の学校に入学させてええんか?」
「先方が連れてこいというのですから、責任はあちらです」
「月読パワーでなんとかせい」
「私は、人間として生活しているので無理です。本当に申し訳ないと思っているのですが、何かお礼をしますので見学だけでも」
「え? 月読先生、今、なんでもするって」
「言ってません。そんなこと口が裂けてもいいませんから」
「…………」
「その沈黙が怖いんですけど。何を企んでいるんですか?」
「うーん、わかりました! じゃあ、いつものみんなで行こう! きっと千手さんもお願いしたら学園生活をもう一回くらいやってくれるよ! 銀子さんならノリノリだよ!」
「夏樹くんだけで結構です。一登くんもお誘いがあったのですが、彼は本当に一般人ですからとさすがの私も怒りましたよ」
「じゃあ俺の時も怒ってくれません!? 俺も一般人なんですけど!?」
「え? 一般人? ……一般人の定義ってどうなんでしょうねえ」
夏樹は月読に一般人扱いしてもらえなかったことにちょっとだけ泣いた。




