62「三郎さんだってやばくね?」②
「ありがとうございます。では、失礼しますね」
由良家を敷地内で、建物を除く結界を器用に三郎は張った。
強固な結界だ。
声はもちろん、空気さえ遮断しているのが銀子にわかる。
「えげつない結界っすね。これ、人の周囲に張って放置しておけば勝手に死んでくるじゃないっすか」
「僕は医者だからそんなことには使わないよ」
穏やかな笑みではあるが、このような強固な結界を張ることができる時点で規格外だ。
さすがルシファーというべきだろう。
「さて、僕が昔ドワーフに教わった魔剣製造を行います」
「……三郎、言っておくが、負けんだからな。頼むから普通の魔剣を造ってくれよ。銀子でも手に余るようなもんを作るなよ?」
「私的には受けて立つって感じっす!」
「――いいでしょう。全力で」
「だからそういうのはいいのぉ! あのね、新たな神々や「帝国」とか面倒くせーっていうのならほどほど、なんでもほどほどにしてれば奴らは寄ってこないから!」
「太一郎お父さん、しかし、実際問題としてすでに寄ってきているのですから受けて立つべきです。私は人間を愛し、癒したいのであって、新たな神々はどうでもいいのでむしろぶっ殺すの推奨ですので」
「新たな神々がお前に何をしたっていうんだよぉ」
「患者が殺されました」
「それは怒ってよし!」
「その神と仲間を全員殺しました。正当な復讐です」
「正当かなぁ」
温厚そうな三郎だが、一度「やる」と決めたらちゃんとルシファーだった。
銀子はちょっと安心した。
「今から私が、この二振りの魔剣を媒体にして一本の魔剣とします」
「つまり魔剣花子と魔剣太郎の子供ってことっすね!」
「真剣に性別があるかどうか知りませんが、まあ、いいでしょう」
「くっ、こんなことになるのなら魔剣太郎と魔剣健司にしておけばよかったっす!」
「……銀子ぉ。無理やりボーイとボーイを合体させなくていいからぁ!」
「よくわかりませんが、いいでしょう」
「三郎、お前もよくわからないならそのままにするな!」
「では魔剣製造を始めます」
「サタンさんのお話聞いて!?」
轟っ、と炎が生まれた。
手のひらほどの小さな炎だった。
しかし、熱い。とても暑い。
銀子は一瞬で汗まみれになった。
真夏でもこれほど暑くない。
魔剣創造と言ったが、本当に鍛冶場に入ったような感覚を覚えた。
この状況下で汗ひとつかいていないサタンと三郎はさすがというべきだろう。
「では、まずこちらの魔剣花子さんをぽいっと」
小さな炎の中に、折れた魔剣花子と破片を入れる。
「次に、魔剣太郎くんをぽいっと」
続いて、魔剣太郎を炎の中に入れた。
「――いきます」
三郎が炎の中に手を突っ込み、何かを握りしめた。
「難しいことは必要ありません。この魔剣たちはこの炎の中で自分が何をすればいいのかわかっています。僕はそれを少しお手伝いしただけです」
そう言った三郎がゆっくりと手を抜く。
「ふたりは混ざり合い、ひとつとなりました。魔剣花子と魔剣太郎を超えた新たな魔剣の登場です」
引き抜いた魔剣は、片刃の剣だった。
刀身は細く、繊細さを持つ美しい剣だった。
まっすぐな刀身の付け根には花の蔦のような模様が刻まれている。
「さあ、新しい魔剣が生まれたことを祝福しよう。魔剣花子と魔剣太郎から生まれた魔剣
――魔剣丸男!」
「いや、名前!」
「ちょ、命名は私にさせてほしいっす!」
三郎にはネーミグセンスはなかった。




