38「やべー勇者とやべー神様じゃね?」①
一登にイベントが起きている頃、佐渡祐介にもイベントが訪れていた。
祐介は、千手を囲んで呪いをやっていたものの、よくよく考えると呪いが成功してしまえば千手と虎童子がいちゃいちゃになってしまう。
それはあまりにも悲しく、もしイチャイチャする光景を目撃しようものなら心臓が止まってしまう可能性だってある。
祐介は泣きながら千手のマンションを後にした。
トボトボと河川敷を歩いていると、水遊びをしている河童さんたちと手を振り合い心が癒された。
「はぁ、お家に帰ってソーニャたんに慰めてもらうでちゅ」
「語尾が気色悪いな、佐渡祐介」
「――っ、何者!?」
背後から急に酷いことを言われ、祐介は反射的に身構えた。
声の主は、黒髪を丁寧に整えた青年だった。
年齢は、二十歳過ぎだろうか。スーツを身につけ、「できる」雰囲気を漂わせている。
人間離れした整った容姿に気圧されてしまうが、警戒心を高め、拳を握りしめた。
目の前の青年からは、凄まじい力を感じ取ることができる。
規格外である夏樹を超える力だ。夏樹の底が見えない祐介にとって、目の前の青年の力は深淵のようだった。
無意識にごくり、と唾を飲む。
額に汗がびっしりと浮かんでいることに気づく。
「そう身構えることはない」
どこか親しげな声に安心しそうになるが、つい先ほど「帝国」やら「新たな神々」と関わったばかりだ。
目の前の青年が「身構えるな」と言ったところで、できるはずがない。
しかし、不思議と恐ろしくはなかった。
夏樹を超える力を持つ青年は、きっと自分を簡単に殺すだろう。
彼がその気になれば、祐介は何が起きたのかわからぬまま絶命するはずだ。だが、彼がそんなことをするとは微塵も思えなかったのだ。
理性ある彼の瞳は真っ直ぐに祐介に向き、歳の離れた弟を見るような眼差しだった。
祐介は緊張しながら、問いかけた。
「――あなたはいったい?」
「私は、大地の神。佐渡祐介、お前に力を与えた者だ」
「――っ、そんな、あなたが? 僕を勇者に?」
「勇者……そうだな。私が加護と力を授けた存在を勇者と呼ぶのなら、勇者なのだろう」
「えっと、どういう意味ですか?」
「いや、瑣末なことだ。気にするな」
祐介に力を与えくれた大地の神が目の前にいることに、ただ驚くしかない。
勇者に関して少し曖昧なことを言ったが、彼はそのことについて話す気はないようだ。祐介も、あまりそのあたりは気にならなかった。
目の前の青年が大地の神であることは、言われ、すとん、と心の中に収まり理解した。
本能でわかったのだ。
彼こそが、佐渡祐介の力の根源であると理解したのだ。
「―――つまり、僕が人外っ子大好きボーイなのも、大地の神様の加護のおかげなのですね!」
祐介は膝をつき、感謝を込めて手を重ねて祈った。
大地の神のおかげで、人外っ子の素晴らしさを知り、ダークエルフのソーニャと婚約できたのだから、感謝しかない。
「いや、違う。全く違う。お前の性癖に私は全く関与していない! ええいっ、祈るな!」
「あれー?」




