32「敵が減ることはいいことじゃね?」
「千手が寝てしまったんで代わりに俺様が話をしてやろう!」
「あのね、小梅。あの子は寝たんじゃなくて気絶」
「きっと虎童子との夜の運動会が激し過ぎて寝不足じゃったんじゃろう!」
「――っ、可能性はあるわね!」
残念ながら、「んなこたぁねーよ!」とツッコミをする千手本人は気絶中で、虎童子は頬を赤くしながらチャーハンをかきこんでいる。
千手の父康弘はチャーハンからピラフに調理を変更し、鍋を振るっていた。
常識人枠の一登は小梅と花子にツッコミを入れるだけの勇気はなかった。「僕は勇者なのに、勇気がない」と凹んでしまい、火輪の剣が一生懸命に慰めていた。
一番の問題児である祐介は、千手が気絶したことをいいことに、彼の部屋に入ってベッドの下を物色し「あれ? 鬼っ子のエロ本がない。――っ、つまりもうとらぴーとそういうことを!?」と奇行を繰り広げていた。
そんな一同を見て「この人たち普通にやべえ」と正門の神、裏門の神、校門の神が震えていた。
「そんで、どうする?」
「我々は月読命様にご迷惑をかけるつもりは……ただ、もう新たな神々に関わらずに静かに、できれば人の世の中で過ごしていたいのですが」
「まあ、殺伐とした戦いを好む輩ばかりじゃないからのう。そういえば、おどれらは行く場所はあるんか? あー、なんじゃ、住まいとか」
「いえ、ありません。今までは門の神の隠れ家にいたり、命令を聞くふりをして各地を転々としていました」
「ならばその隠れ家の場所を月読に教えてやればええ。その対価に住む場所くらい用意してくれるじゃろう。俺様からも頼んでやるんじゃ」
「ま、それこそ本当に行き場がなかったら水無月家にくればいいわ」
小梅も花子も姉妹だけあって、面倒見がいい。
ただ、最後の最後でそれぞれ丸投げしようとしているところもよく似ている。
「――っ、よろしいのですか?」
「おう」
「敵対しないのであれば、助け合ってもいいのではない?」
「ありがとうございます。では、門の神の隠れ家、それに、他の神々の活動場所や、隠れ家も知っている限りのことは全て月読様にお伝えさせていただきます!」
「ありがとうございます!
「ありがとう、ございまっ!」
正門の神に続き、裏門の神も校門の神も感謝の言葉を述べた。
彼らの表情は安堵が浮かんでいた。
敵対だけはしたくないのだろう。
「夏樹にちょっかい出してくる奴らが減ることはいいことじゃ。ただし――」
小梅が目を鋭くさせると、部屋の温度が下がった。
「もし、俺様たちの善意を無碍にするようにしたら殺す。おどれらの仲間も全て殺す。よう覚えておけ」
「……はい。決して、そんな愚かなことはしません」
小梅の圧に気圧されたのか、震える正門の神たち。
その様子を見て、小梅はいつもの快活な笑顔に戻る。
「わかっとるならええんじゃ! ええんじゃ!」
「……相変わらず、怖い子ねぇ」
姉の花子が呆れたように嘆息した。




